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未知数の敵


低い唸りを上げて、上半身が唸る。


なんという生命力だろう。


真っ二つにすれば、大抵は息絶えるのが普通なのだが。


奇異な目で敵を見ていると、巨体に変化があった。



まばゆい発光を四散させ、あたりを白く染め上げていく。


失明してもおかしくないぐらい、光は強く、目を開けていられない。


やがて光が次第に消えていくのを雄揮は見た。



「………………」



先程までは敵の姿は巨体だった。


それも真っ二つに切った、暴れる巨体だったのだ。



しかし、光が収まった瞬間、雄揮は言葉を失ってしまう。


ただ解るのは、こちらが本体なのだという事だ。



「ちょっとばかり、強そうだな……」



雄揮は動悸を抑え、なんとか敵を睨む。


身体も大分、小さくなったがまがまがしい気配は先程とは比べものにならない。



巨大な羽、耳まで裂けた真っ赤な口に生える牙。


爪は、鉄すら簡単に、バターを裂くような程に鋭く、おぞましい型だ。


ギラリと光る、白い爪は脅威としか思えない。



人間以上の背丈なのに、おぞましい爪先は整い、地面に突き刺さっていた。



あの魔法使いと戦った時も背筋に寒気を感じたが、これはある意味、危険だ。



だが逃げた所で敵は追ってくる可能性を思うと、引き下がる訳にはいかない。



「やるしかないか……!」


観佳は震える身体を覆うように、雄揮にすがった。



観佳は怯えている。



確かにこんな相手がいたら、怯えて当然だろう。


やらなければやられる。



雄揮は剣を持ち直し、切っ先を敵に向ける。



相手の動きを予測し、回避策を組み立てた。



しかしどうしても完璧にはできない。



右腕が迫れば、観佳をかばいつつ、下がればいい。


しかし突進されたら──?


いや、空を飛ばれてもマズイ。


対空技でもあればいいが、そんな高等技術を雄揮は持ち合わせていないのだ。



ピンと張り詰める空気が息苦しさを駆り立てる。


額に浮かぶ汗は、とめどなく流れ落ち、力を抜けば、剣を落としかねない。



雄揮は息を呑み、観佳に小声で話す。



「観佳、俺が三数えたら、俺から離れろ」


「どうして……?」


説明している暇はない。


これは一か八かの賭けだ。

成功すれば、一気に攻めれるが、失敗すれば致命傷は免れない。


我ながら大胆な発想だが、敵が動いていない今、実行に移すしかないのだ。



「いくぞ!」


観佳は「えっ?」と戸惑う声を上げるが、雄揮はカウントを開始した。



「一、二……今だ!」



雄揮は観佳の背中を突飛ばし、更にその反動を利用して敵に奇襲をしかけた。



建物の影に飛ばされた観佳は雄揮の動きを追えない。


不安と動揺が交互に押し寄せてきた。


やがて甲高く響く金属音に慌てて立ち上がった。


建物からそっと覗き、見えたのは恋人が敵に切りかかる姿。


しかし彼の剣は地面を貫く、巨大な長い爪に斬撃を塞がれていた。


そして次の瞬間、時間が止まる。


雄揮に迫る、反対側の爪。


雄揮は全く気付いていない。


──雄揮!!


観佳は叫んだ。


だが彼女も気付いていない。


自分が叫んだつもりでも、声が恐怖心から出せていないことに。




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