上空からの滑空
上空に弾き飛ばされた雄揮はきりもみ回転をしたまま、手を伸ばす。
そこにあるのは剣の持ち手。
雄揮はきりもみ回転しながらも、がっしり剣を握った。
しかし彼は動きを止めなかった。
今度は剣を軸に逆回転すると、剣を元のサイズに戻したのだ。
自殺行為に等しいが、これには訳がある。
この真下、いや大体の位置だが、巨大な影が見えるのだ。
さっきは遅れをとったが、今回はそうはいかない。
支えを失った雄揮は大気圏突入を敢行するスペースシャトルのように、降下を開始した。
襲い掛かる死の強烈な匂い。
顔面に当たる強風は半端ではなかった。
「雄揮―――!」
相変わらず訳の解らない黒い物体に乗った観佳は、高度を下げて、空中を浮遊する。
そんな便利なものがあるなら、始めから欲しかった……。
耳から抜けて行く風は引きちぎらんばかりだ。
痛くて仕方ないのに、観佳は髪を抑えるだけ。
なんとも不公平だ。
そんな不満を抱いていると、奴が見えた。
「下がってろ観佳!」
「え……う、うん」
戸惑うように観佳が離れ、雄揮は再び回り始める。
剣を水平に保ち、巨大な大車輪と化した。
「必殺!」
回転が徐々に早くなり、強烈な吐き気が襲う。
さすがに無理があったようだ。
しかし、この回転は残念ながら止まらない欠点がある。
そうとなれば、やる事は一つだ。
このまま特攻すればいい。
「うおおおおぉぉぉっ!」
雄揮は剣を飛ばされないように握りしめ、巨大な背中に飛び込んだ。
「必殺!大車輪切り!」
高速回転した雄揮はいとも簡単に敵を真っ二つに切り裂いた。
そのまま怪物の頭に乗り、見事に巨体と共に大地に着地した。
地響きをさせる巨体がアスファルトに地割れを生じ、改めて自分が切り裂いた獲物に自画自賛してしまう程だ。
「ん?こいつ……まだ?」
怪物は動きを止めるどころか、再び動き出した。
遅れて、観佳が雄揮の隣に並ぶ。
「雄揮!」
「観佳!油断するなよ!まだコイツは生きてやがる!」
観佳は息を呑み、矢を取り出すといつでも打てる構えをとった。