BATTLE second 雄揮のファインプレー
観佳が放った矢はこれまでのどれよりも速い。
瞬速の矢と化していた。
「やべ―……」
思わず雄揮も呟いてしまう。
自分の予想より遥かに速い。
魔法使いに当たるのは間違いないが、これでは自分にも当たってしまう。
かといって、ここから動けば、魔法使いの拘束は解けてしまい、矢は無駄になる。
雄揮は飛んでくる矢を避けるしかなかった。
「フフフ……」
魔法使いは笑っている。
雄揮は背後を睨んだ。
「誤算だったようだな。私には勝てても、貴様も巻き添え喰らうのだからな」
「………………」
雄揮は睨むしか方法がなかった。
そう。
自分のミスだ。
観佳の矢がここまで速いなど、予想外だった。
矢は徐々に雄揮に迫る。
出来るだけ引き付け、避けよう。
それがどんなに難しいか、雄揮は思い知っていた。
「私の勝ちだ。残念だったようだな」
「黙れ!まだ諦めてねぇんだよ!」
雄揮は頭をフルに働かせ、解決法を導く。
矢は避けなくてはならない。
だけど、避ける方法がないのだ。
雄揮は剣を見る。
握ったままにしなければ、拘束を解く事に繋がってしまう。
「なんだ?この紐?」
雄揮は剣に繋がる紐を引っ張ってみる。
なかなか頑丈だ。
雄揮は決断した。
「フハハハ。私に勝てるはずがないのだ愚かな人間め」
「……それは」
雄揮が天井を見上げ、ニヤリとする。
天井には運のいいことにフックが付いていた。
恐らく、電灯がついていただろう。
戦闘の影響で外れてしまっていた。
あの場所にこの紐を掛けたら、避けられる。
「フフ……さすがに気が動転したか?」
雄揮は「いや違うな」と不敵に言い、紐を天井に投げた。
「あばよ」
ヒュン!
「何っ!? うおおおおッッッ!!?」
雄揮が真上に上がった瞬間、観佳が放った矢は魔法使いを貫いた。