BATTLE second お前だけでは
雄揮が観佳の元へ急ぐ中、観佳と魔法使いの戦いは熾烈を極める。
互いに威力といい、動作などはほぼ互角。
息も絶え絶えになる頃には、2人の動きは停止していた。
「な、なかなかやるな。人間にしては」
「じ、自分でも驚いてるわよ」
自分でもここまでやれるなんて思わなかった。
新しくした矢は魔法使いに引けをとらない。
「いくら抑えているとはいえ、我の30%に食らい付くとは」
「……え?全力じゃなかったの?」
「我が人間相手に本気になるものか」
随分と人間を毛嫌いしているようだ。
でも30%なんてバケモノとしか思えない。
少なくとも、自分は全力だった。
それを越えられては、自分に勝ち目は皆無。
観佳が絶望していると、魔法使いが動く。
息切れしている場合ではない。
観佳も再び矢を構える。
勝てなくても立ち向かわなければ。
もはや意地でしかなかった。
「<緑の地より現れ、さざ波のごとき緩やかさを持ちし風よ。立ちはだかりし者を裂け!
『疾風』
ソル・ウィンド」
「キャア!」
魔法使いが唱えた『疾風』は恐ろしく速かった。
矢を構え、すぐに射てる体勢だったのに、捉えることすら叶わなかったのだ。
「これで終わりだと思うな。喰らえ!」
魔法使いの猛攻は留まることを知らない。
『疾風』は次々に生まれ、観佳を刻む。
圧倒的な力に観佳はボロボロだった。
「とどめだ」
魔法使いが右手を伸ばし、膨大な渦が生まれてゆく。
観佳はもう、どうすることも出来ない。
自分では勝てないんだ。
観佳は肌で実感していた。
でもせめて、雄揮に……。
雄揮に挨拶したかった……。
魔法使いの右手、渦が大きくなり、観佳は腰から落ちた時、
「バカ野郎。お前だけ逝かせるかよ」
続き様に魔法使いに何かが飛ぶ。
魔法使いが躱した後、ソレは地面に突き刺さった。
「これは折れた剣!?」
「待たせたな」
雄揮はいつの間にか戻ってきていた。
そのまま観佳を抱え、一度離れる。
「き、消えただと?くそ!そんなハズは……!」