BATTLE second 観佳の怒り
魔法使いは今まで着ていたローブを取り、正体を現した。
漆黒。
全体が黒く覆われ、顔すら見えない。
「解るかな?この力が」
「く……っ!」
色々な敵を相手にしてきたが、こんな凄まじいプレッシャーは初めてだ。
勝てるわけがない。
今の自分では全然。
雄揮は剣を地面から引き抜くと、胸元に構えた。
だがどうしても恐怖を拭えない。
嫌な冷たく冷えた汗が背中に張り付く。
威圧感が、空気が、徐々に雄揮を締め付ける。
体が重く、剣まで重圧で握りたくないぐらい。
「<一条の風よ、集え。数多なる刃となり、切り刻まん!>
『風の風牙』
【ウィンド・シュラサード】」
魔法使いが呪文を唱えると、周りのガラスが一斉に弾き割れ、無数の刃が雄揮を襲いかかる。
一陣は辛うじて躱すが、髪を斬られ、足も傷を受けた。
「まだまだ!」
魔法使いが正面に合わせた両手を頭上に掲げ、右手を降り下ろす。
すると、刃が全て真上にあがり、半数が降り注いだ。
「ぐぅぅぅっ!!」
剣で受けても限界はある。
相手の魔法は重いときたら、受け流すにしても剣の強度は知れたもの。
雄揮も薄々感じていた。
「あっ……」
パキィィィン……!
刀芯が真っ二つに割れ、雄揮は頭上を見上げる。
終わった……。
雄揮にもう、なすすべはない。
雄揮は力なく立ち尽くしていた。
「雄揮―――――!!」
観佳が叫び、光が刃を撃ち抜いた。
「観佳……?」
見ると観佳が弓を構え放つ姿だった。
観佳は涙を浮かべ、矢を放つ。
「やぁぁぁぁぁっ!」
観佳は風の刃を射ち落とし、数を減らしていく。
これにはさすがの雄揮もたじろんでしまった。
「やるな……人間が呪文に歯向かうとは」
魔法使いはニヤリと含み笑いをしている。
「雄揮はやらせない!絶対に!!」