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出会い 前編

 ギルドから出ると既に日が昇り始めていた。


 門番にはガルムが話を通しており、すんなりと通る事ができた。


 門を出て、ガルムは向かって左側、アテナ達は向かって右側から探索する事にする。


「それじゃ、何か見つけたらすぐに呼んでくれよ。」


「もちろんです。では。」




 〜ガルム〜


「あぁ、この森も久しぶりだな。俺も登録してすぐは、よく来てた。

 …死んでないと良いんだがな。」


 この森に生息するシャドウウルフという黒い狼のモンスターは単体では速いだけだが、群れに襲われると優れた連携プレーでとても厄介なモンスターだ。


 それから数分、歩いて探索しているとホーンラビットの頭が転がっているのを見つけた。

 傍には、まだ乾ききっていない血の跡とバラバラに食い荒らされた、ホーンラビットだったモノもある。


「シャドウウルフにでも食われたか?」


 とは言いつつも、頭から角を切り取る。


 シャドウウルフは、始めにホーンラビットの首をもぎ取り、体だけを食べるため、残骸の近くに頭が転がっている事が多い。


 ホーンラビットの角は丈夫で、表面を削るとペンキでも塗ったかのように真っ白になる。


 街の女性達の間では装飾品として人気が高い。


 しかし、そこから少し歩いた場所にも同じように角と残骸を見つけた。

 その角も拾うと、さらに少し歩いた場所にまた角と残骸を見つける。


 ホーンラビットは外敵から身を守るため、夜間は土の中に作った巣に隠れる習性がある。


 流石におかしいと思ったガルムは、上空に気弾を飛ばした。


 同時に遠くで閃光弾が弾けたのが見えた。




 〜アテナ、アルリス〜


「アテナ様、異世界からの召喚者らしき者は生きているでしょうか…」


「分かりません。ただ召喚された方々は、我々の持ち得ない特別なスキルを授かると聞きます。

 まだ確定はしていませんが、生きている可能性は高いかと。

 それに、黒髪黒目は歴代の召喚された方々には多かったといいます。

 この世界ではかなり珍しい色です。」


「なるほど。では早速探しましょう。」


「えぇ。」


 少し歩くと、かなり濃い血の臭いが漂ってきた。


「!アテナ様、この臭いは…」


「えぇ、急ぎましょう。」


 臭いのした方に向かうと、シャドウウルフが大量に死んでいるのを発見した。


 服の切れ端が所々に落ちているあたり、この群れとの戦闘が起きたのは確かなようだ。


 アルリスが閃光弾を思いっきり上に投げた。


 同時に遠くでエネルギー弾が空に昇って行くのが見えた。









 アテナ達がどうしようか悩んでいると、森の奥からガルムが走ってきた。


「こりゃひでぇな…」


「ガルムさん。そちらは何がありましたか?」


「ん?あぁ、この惨状に比べると些細なもんだが、コイツの残骸があちこちに転がっててな。」


 ガルムがポケットからホーンラビットの角を取り出す。


「それは、ホーンラビットの角ですか?」


「あぁ、人気の高い素材だからな。シャドウウルフに食い荒らされてたみたいだから、角だけ頂いてきた。」


「確か、ホーンラビットは夜の間土に潜っているはずですよね?」


「その通り。

 つまり、昼の間に誰かが殺して放置したか、別の異常が発生したかだな。」


「そちらも気になりますが、このシャドウウルフの死骸はなんなのでしょう?」


「やっぱり、黒髪黒目の新人が探し人かもな。」


「私もその可能性は高いと思います。

 ただ、服の切れ端が落ちていたのでもしかしたら…。」


「…とりあえず、近くを探索してみるぞ。俺は向こうを探すから、何か見つけたら呼んでくれ。」


「はい、では私達はあっちの方を探しましょう。」


「分かりました。」




 数分後、ガルム達はすぐ近くの1本の木の前で鉢合わせした。


 その木は人が1人分入れるぐらいの洞がある。

その洞は、約180cmあるガルムよりも少し高い位置にある。


「休めそうなのは、この中だけだな。

 そっちは?」


「こちらも特に。

 入口が少し高いので、この中なら確かに安全でしょうね。

 ガルムさん見て貰えますか?」


「分かった。」


 この中で1番背の高いガルムが少し背伸びして洞の中を覗き込むと、黒髪黒目の男の子がすやすやと眠っていた。


「……」


「ガルムさん、どうですか?」


 ガルムが呆気にとられていると、アテナから声をかけられた。


「ん?あぁ、多分当たりだ。」


「!そうですか。…良かった…」


「今は疲れて寝ちまってるみたいだし、起きるまで待つか?」


「起こすのも忍びないですし、そうしましょう。」


 3人は、彼が自然に起きるまで雑談して待つ事にした。



 十数分後、洞の中からガサゴソと音が聞こえてきた。


「ん?起きたか?」


「見てみましょう。」


 ガルムが洞の中をうろのなか覗き込もうとすると、中から手が出てきて、淵を掴んだ。

洞から頭が出てきて男の子と目が合った。


「うわっ?!」

 びっくりした男の子が手を滑らせて洞の中に落ちようとしたので、咄嗟に手を掴む。


「坊主、大丈夫か?」


「あ、あぁ、大丈夫です。ありがとうございます。」


「俺はエルダス神国のギルドマスター、ガルムだ。

 とりあえず出てきな。」


「え、ギルドマスターなんですか?!」


 彼は驚きつつも洞から出てくる。


「昨日、冒険者登録した15歳の男。

 お前で合ってるか?」


「え、15歳……あ!はい、合ってます。」


「?まぁいい。それで、あの惨状を作ったのもお前で合ってるんだな?」


 ガルムが、ここからでも見えるシャドウウルフ達の死骸の山を指差しながら言うと、少年が息を飲むのが分かった。

主人公視点に戻ります

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