神託
「未開の奥地より、黒き厄災が訪れる。
異世界より召喚されし者、これを討ち祓う。」
「これが今回の神託です。」
これを聞いたアルリスは、もしやと思いガルムに確認してみた。
「なるほど……。ガルム殿、これは、」
ガルムもピンと来ているようだった
「あぁ、アイツの事だろうな」
そのやり取りを見て、聖女のアテナが言った。
「アルリス、ガルム、何か知っているのですか?」
「はい。
実は先程調査に行き、我々が遭遇したモンスターなのですが、まだ攻略されていない迷宮の奥から地上を目指しているようでした。
そのモンスターは今までのどのモンスターよりも強いモンスターを召喚し、新層探索を任せていたA級の冒険者パーティが全滅させられました。」
アルリスの返事を聞き、エドワード王が話を整理する。
「ふむ、お主らは未開の奥地が、迷宮の最深層と言うわけだな。
では、黒き厄災に何か心当たりはあるか?」
エドワードの問いに、今度はガルムが答える。
「はい。先程、副団長殿が言ったモンスターですが、全身が真っ黒でした。また、召喚されるモンスター達も皆同様に真っ黒でした。
これは、間違いないかと。」
「分かりました。
最後に異世界より召喚されし者ですが、召喚の儀をもって私が召喚する事になります。」
アテナの言を引き継ぎ、エドワードが説明する。
「過去の文献には、自分達で召喚しなければならない事を知らずに、1度壊滅的な被害を受けたとあった。
その後、召喚の儀を行う為に召喚の間が作られたのだ。
そして、召喚の儀は聖女ほどの魔力量でなければ耐え切れず、衰弱死してしまうという。
さらに、聖女も準備を怠った結果、召喚後に身体が動かなくなった事もあるらしい。」
「な?!それは、大丈夫なのですか?」
「アルリス、心配はいりません。
私は過去の聖女の中でもかなりの魔力量を持っています。
しっかり準備すれば、問題は無いでしょう。」
「…どうかご無事で。」
「えぇ、ありがとうアルリス。
では、召喚の儀は2日後に執り行います。」
「うむ、解散するとしよう。
各々、準備を怠らぬように。」
〜2日後〜
「これより召喚の儀を執り行います。」
アテナの宣言で召喚の儀が始まった。
召喚の間には現在、王 エドワード、王妃 アリル、聖騎士団団長 マルク、副団長 アルリス、ギルドマスター ガルムが集まっており、
外も騎士達が厳重に警備している。
アテナが両手を組んで屈み、何やら祈り始める。
数秒後、召喚の間の床に描かれている魔法陣が緑色に光り始める。
それから10分程祈り続け、魔法陣の光が収まった。
全員が困惑している。
「召喚の儀は終わりました。本来ならこれで召喚されるはずなのですが……」
アテナがエドワードを見る。
「うむ…手順は間違ってはいなかったはずだが…?」
そう言うエドワードに対し、アテナは
「お父様、召喚の魔法は確かに発動しました。
これは、何らかの妨害があって別の場所に召喚されたのかもしれません。」
「妨害か…。ならば、1度魔法陣を調べてみるとしよう。
それからアルリスとアテナは休息後、共に城下街へ行き、それらしき者を探すように。」
「はっ。」「分かりました、お父様。」
「じゃあ、俺はギルドの情報をまとめてくるとします。」
「はい。お願いします。」
〜翌日〜
「アテナ様、支度はよろしいですか?」
今はまだ日が昇る前の時間。
アルリスは準備が終わってアテナを迎えに来ていた。
「えぇ、もうすぐ終わります。」
「おまたせしました」
「では、行きましょう」
「まずはギルドでガルムさんに会いましょうか」
「そうですね」
ギルドに着くと、既にガルムが外に出ていた
「おはようございます、ガルムさん」
「あぁ、来たか。とりあえず俺の部屋まで来てくれ」
「分かりました」
「まず、昨日新しく冒険者登録した奴が1人いたからそいつの情報を集めてみた。
そいつは15になったばっかりで、黒髪黒目の男だそうだ。
で、昨日ガンドっていう行商人と一緒に入国してる。
他に変わった奴は見当たらなかった」
「その方は今どこに?」
「それがな…昨日、薬草採集の依頼で森に向かったらしいんだが、門番に聞いても帰って来てないって言われてな。
ついでに夜も遅いし、登録したばっかりだから流石に生きてはいないだろうとも言われた。」
「……アテナ様どうしますか?」
「召喚される方は女神様から特別なスキルを授かると文献には書いてありました。
もしかしたら生きているかも知れませんし、1度森へ行ってみましょう。」
「へぇ、特別なスキルか……。
まぁ、行くだろうと思って、こっちも準備してきたぜ。人数は多い方がいいだろ?」
「えぇ、助かります。」
「俺は別行動で探すから、見つけたら何か合図をくれ。」
「分かりました。では、この閃光弾を上空に投げます。」
「そうか、なら俺は気弾を上に飛ばす。」
「迷宮で使ったエネルギー弾の事ですか?」
「あぁ、それだ。さて合図も決まったしさっさと行くか。」
ちょっとだけ視点が行ったり来たりしますm(_ _)m