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S級の所以

 アルリスはB級冒険者を連れてイジスの元に急いで戻った。


 その途中、冒険者の2人が何やら話していた


「見た事もないモンスターねぇ…」


「見た事ないっつってもイジスっていう奴1人で止めてるんだろ?だったら問題ねぇよ。」


「そんなもんかねぇ…」


「そうだよ。ったく心配性だなお前は。」


「ほっとけ。お前はいつか痛い目見るぞ?」


「ハイハイ、気をつけますよー」


 そんな事を言い合いながら、呑気にアルリスの後を追っていた。


 1時間程でイジスや他の騎士達と合流した。

 それから10分程遅れてギルドマスターのガルムも到着した。


 その格好は、両手に岩でも貼り付けたのかと言うほど、異常にゴツゴツしたガントレット、防具は軽鎧に革のブーツだけという不思議な格好だった。


「…ガルム殿。それがいつも使っていた装備ですか?」


「ん?あぁ、初めて見る奴にはだいたい聞かれるが、俺の装備はこれだ。分厚い防具や盾なんかはあまり好きじゃない。」


「そうですか。では、そろそろ作戦を開始します。」


「あぁ」


「まず、障壁を解いて遠距離攻撃をします。

 次に、そこから漏れたモンスター達をガルム殿や私、近距離アタッカーの皆さんで攻撃、各個撃破します。

 シンプルな作戦ですが、一体ずつでもかなり強そうなので、油断しないよう注意してください。」


「はーい」「はいよ〜」「分かりました」


 冒険者達が口々に返事をする。


 そこでガルムは言った


「副団長殿、遠距離攻撃には俺も参加させてもらう。」


「え、しかし…」


「あぁ、できるようには見えない、だろ?」


 どう見ても、遠距離攻撃ができるようには見えない。

 冒険者達も首を傾げている。


「…はい」


「気にするな。よく言われる事だ。むしろ普段は隠しているからな。」


「そうなんですか。」


「そこでなんだが、他の奴は少し待ってくれないか?

1人でやった方がやりやすいんだ。

 それと、障壁の上だけ開けられるか?」


「はぁ…?それはどういう…?」


「まぁ、見てれば分かる」


 そう言うガルムの顔は少しニヤついていた。

 それを見たアルリスは、ガルムは戦闘狂なのかもしれないと思った。


「で、ではイジス。障壁を上だけ開けられるか?」


「はい、問題ありません。」


「そうか、なら開ける時に合図をくれ。」


「分かりました。では約10秒後に開けます。」


「ガルム殿もそれで良いですか?」


「あぁ、問題ねぇ。少し離れててくれ。」


「……このぐらいで良いですか?」


 ガルムから10m程距離をとる


「あぁ、大丈夫だ。」


「では、イジス。カウントダウンを」


「はい。」


 イジスがカウントダウンを始めたと同時に、ガルムは腰を深く落とし、両手を腰溜めに構えて集中しているようだった。


 すると、ガルムの両手がボワァっと光り始め、エネルギーが拳に集まってきた。


「4…3…2…1…開けます!」


 イジスの合図と同時に、ガルムは突然、膨大なエネルギーを纏う拳で、地面を超高速で連打し始めた。


 アルリスは一瞬、何をしているんだ?と怪訝な顔をしたが、次の瞬間その顔は驚愕に変わる。


地面を殴っているのに、まったく衝撃が来ない。

 そして、上だけ開いた障壁の穴に向かって、ガルムの両手が纏うエネルギーと同じエネルギーの弾が上空から豪雨のように降り注いだ。


 対するモンスター達は、打ち消そうとエネルギー弾を攻撃するが、関係ないとばかりに次々と爆発し、光の粒子へと変化した。


 そして、ガルムが両手を組んで思いっきり振り下ろすと、拳が纏っていたエネルギーの光がスッと消えた。


「でかいのが入ったら障壁を閉じてくれ!」


 イジスは、目の前の光景に唖然としていたが、ガルムに言われた通り、二回り程大きなエネルギー弾が降ってきて、中に入ったのを確認し、障壁を閉じた。


 大きなエネルギー弾がモンスターに触れた瞬間、雷でも落ちたかのような爆音が響き渡ると同時に、障壁の中が真っ白に光り、何も見えなくなる。


 数十秒経ってようやく光が収まり、障壁の中を見てみると、大量の光の粒子と鏡や盾のモンスターに覆われた黒い人型のモンスターがいた。

 障壁は、2枚程割れてしまっているようだった。


「す、凄い威力だな…。これでも倒せないのか…。」


「俺たちの出る幕ねぇじゃん…。」


「そりゃS級にもなるよなぁ…。」


 アルリスや冒険者達がそう言っていると光の粒子が動き出し、黒い人型のモンスターに集まっていった。


「嫌な予感がするな。障壁を張り直してくれ。」


 ガルムがそう言うと同時に黒い人型のモンスターは、光の粒子を1つにまとめて呑み込んだ。


 そして、また棒立ちして両手を前に突き出した。


「なっ!?また召喚するのか!?」


 アルリスの言葉を聞き、ガルムは騎士達の様子を見ると、皆一様に顔を青くしていた。


 それを見たガルムは、両手にエネルギーを溜め始めた。


 しかし、先程よりも多く、より強いモンスターが召喚されているようで、徐々に障壁にヒビが入ってきている。どうやら障壁が内側から破壊されているようだった。


「副団長殿、撤退だ。

 俺が撃ち込んで抑えるから一斉に撤退してくれ。」


「くっ、仕方ないか…。任せてもよろしいですか?」


「あぁ、逃げ遅れるなよ。」


「はい。イジス!撤退だ!!」


「分かりました!」


 ガルムを置いて全員が撤退する。

 冒険者達は不満そうだったが、ガルムの様子を見て、荷が重いのだと判断し、渋々撤退した。


 ほどなくして障壁が完全に破壊され、モンスター達が一斉に雪崩れ込んできた。


 ガルムは自分の3倍はあるモンスター達の大群に、真正面からエネルギー弾を連続で飛ばした。

 が、隅の方から小さなモンスター達が通り抜けてきている。


 ガルムが、小さなモンスター達にもエネルギー弾を飛ばそうとした時、後ろから直径2mはある大きな火の玉や水の玉、大量の矢が飛んできた。


 チラッと後ろを見ると、遠距離攻撃ができる冒険者達が援護射撃してくれていた。

 騎士達や遠距離攻撃ができない冒険者達は既に撤退しているようだった。


「よし、少なくなってきたな。

 お前ら!撤退するぞ!!」


「了解!」「おっけー」「分かりました!」


 冒険者達の攻撃が止んだのを確認し、ガルムは拳にエネルギーを纏ったまま、後ろを向いて全速力で走り出した。


 上の層へ上がる階段に差し掛かると、後ろに向かって振り向きざまに両手を振り抜いた。


 すると、幅5mはある通路を埋め尽くす程大きなレーザービームが発射された。


 そのビームにモンスター達が焼かれている間にガルムも冒険者達の後を追い、無事に全員脱出した。


 残されたモンスター達は光の粒子になり、黒い人型のモンスターに吸い込まれていった。


 そして、黒い人型のモンスターはその場に立ち尽くしていた。











「まったく、なんだったんだアイツは?」


「さあな〜、でも見た感じモンスター使いっぽかったけどな」


「あー、確かに。でも色が真っ黒だったぞ?」


「そんなん俺にもわかんねーよ」


「だよなぁ」


 冒険者達が話しているのを聞き、アルリスはモンスター使いの事を思い出していた。


「確かに、見た目はモンスター使いだった…。なら、なぜ真っ黒なんだ?あの見た事もないモンスター達はなんなんだ…?」


「副団長殿、そんな事を今考えても分からんだろう。とりあえず上に報告をしてくるといい。」


「そうですね。分かりました。

 また、協力を仰ぐことになりそうですね。」


「あぁ、そん時はまた俺も出る。」


「助かります。」


「副団長ー!!」


 そんな時、アルリスの元に馬に乗った騎士が1人走ってきた。


「あぁ、ガルム殿もおられましたか。丁度よかった。

 聖女様が女神エルダス様より神託を授かりました。

どうやら異常事態が発生しているようです。

 至急、王城へお集まりください。

 他の騎士達は元の業務に戻るようお願いします。」


「…!そうか。報告感謝する。

 ガルム殿、このまま行くことになりますが、都合はよろしいですか?」


「いや、流石に王城にこの格好じゃダメだろうから、少しギルドに戻る。先に行っててくれ。」


「分かりました。では。」


「お前ら、そういう事だからここで解散だ。」


「はーい、報酬はしっかりね〜」

「分かりました」「またね〜ギルマス〜」







 王城に着くと、教会に案内された。そこには、聖女のアテナに現王エドワード、王妃マリナなど錚々たる顔ぶれが揃っていた。


 遅れてガルムも到着し、神託の発表が始まった。

もう少し続きます(召喚者サイド)

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