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厄災の出現

召喚者側の話になります

 時は戻り、悠が召喚される前の事。


 エルダス神国から少し離れた迷宮で、異変が起きていた。





「さて、そろそろ休憩は終わりだ」


 そう言うのは、今1番深く、未だ最深層が見えない迷宮の新層更新をギルドから依頼されている、A級の冒険者の男だ。


「はいよ〜」


 と、気の抜けた返事をするのは同じA級の冒険者の女だ。


 他に5人程の冒険者がいる、計7人のパーティ。

 全員レベルは950を超えている。

 このパーティ、獅子の牙は新層の手前で1度休憩していた。


 3時間程、仮眠や食事を摂り、体調を整えた7人は、リーダーの言葉で片付けを始めた。


「リーダー、ここどんだけ深いの〜?」


 先程返事をした女がそう言うと


「俺に聞かれてもな。そんな事より早く準備をしろ。」


 と、リーダーの男は無愛想に答えた。


「はーい」


 女は、そう返事をして準備を終わらせた。


 そして、全員の準備が整い、7人は新層に降りた。







 新層にはモンスターが1匹もいなかった。


 どれだけ歩いても、どこを探しても1匹もみつからない。


「何か変だな」


「何〜、またリーダーの勘?」


「あぁ、何か今まで以上に嫌な予感がする」


「!…なら、気を付けないとね」


 リーダーと女の会話でパーティに緊張が走る。


 するとそこに黒い人型の、モンスターが現れた。


 そのモンスターは、両の手の平を前に突き出し、棒立ちしている。


「なんだコイツ?様子がおかしいぞ?」


 モンスターの周りに大量の魔法陣が現れる。


 そして、その魔法陣から大量の見た事も無いモンスター達が溢れ出した。


「なっ?!」


「嘘でしょ?!」


「「「「「っっ?!!」」」」」


 パーティ全員が驚きつつも、戦闘を開始するが、リーダー以外は、見た事も無い、他より桁違いに強い、大量のモンスター達に瞬殺された。


「冗談じゃねぇ…」


 そして、リーダーの男も数秒後、モンスターの波に押し潰された。




 〜2日後〜




 迷宮の門の警備をしている騎士は、欠伸をしていた。


「ふわぁ…あー、ねむ。」


「おーい、交代の時間だぞ〜」


「ん?おぉ、もうそんな時間か。」


「A級の冒険者から連絡あったか?」


「いや、ねぇな。警備隊長にも報告してくるわ。」


「はいよ〜」







「隊長、昨日の冒険者の件なんですが」


「あぁ、連絡が無かったのか?」


「はい、リーダーは直前の連絡までしっかりしていたので、やっぱり新層で何かあったんですかね?」


「かもな、わかった。副団長に報告しておく。ご苦労さん。しっかり休め」


「はい、失礼します。」







 エルダス聖騎士団の副団長、アルリスは部屋で書類と戦っていた。


 コン、コン、コン


「ん?誰だ?」


「警備隊長です。ご報告があります。」


「そうか。入れ。」


「失礼します。

 副団長、どうも新層に向かったA級冒険者からの連絡が2日前から途絶えているようです。」


「ふむ…あのパーティのリーダーはしっかり者だったからな。何かあったのかもしれん。

 ……明日、私主導で迷宮へ調査に行く。中隊長達に通達しておいてくれ。メンバーは追って伝える」


「はっ。失礼します」





「ではこれより、迷宮へ潜る。

 今回は、新層という事もあり、見たことの無いモンスターがいるかもしれん。さらに、A級冒険者7人のパーティが全滅した可能性もある為、くれぐれも油断しないよう注意しろ」


「「「「はい!」」」」


「では行くぞ!」





 〜数時間後〜



「どういう事だこれは…。まだ新層に着いてないぞ…。

 だが、原因は明らかだな」


 新層より2階層上の層で、調査隊は黒い人型のモンスターと遭遇し、モンスターを召喚されていた。


「一時撤退!!

 私と中隊長で食い止める!そのうちに撤退しろ!

 1人でも多く情報を持ち帰るのだ!!」


「「「「はい!!」」」」


 その時、モンスター達との間に巨大な障壁が5つ重なって現れた。


 そして、皆が命令に従おうとする中、1人異を唱える人物がいた。


「お待ちください、副団長」


「む?イジス殿、どうした?」


 それは、齢60近い中隊長の男、イジスだった。


「ここは、私1人で受け持ちましょう。」


 イジスは、5年前まで迷宮に籠り、15歳の時に授かったスキル〈障壁魔法+2〉の修練を兼ねてレベル上げをしていた。

 その結果、レベルは999、最大まで上がり、スキルも〈障壁魔法+2〉から〈障壁魔法+20〉まで強化されていた。


「いや、しかし…」


「ご心配には及びません。15の頃に授かったこの障壁魔法、この歳まで修練を重ねて参りました。

 今では、このように…はぁっ!」


 そう言うとイジスは、モンスター達に向き直り、両手を合わせてぐっと握り込んだ。


 すると、モンスター側の障壁が4枚動き、モンスター達を圧縮し始めた。


 しかし、モンスター達は動きは止まったものの、潰れることなく、抵抗しようと力を込めているようだった。


「なっ?!1匹も潰れないとは…。副団長、この技は、修練の過程で、他の迷宮の最深層までのほとんどのモンスターを圧殺してきました。できなかったのは、今世界で1番硬いといわれる、ソリッドタートルだけです。これは、想像以上にまずい状況かも知れません。」


「…本当に大丈夫か?」


「えぇ、動きはかなり制限できています。今のうちに報告と増援をお願いします。」


「わかった。どうしても無理そうな時は通信機で救難信号を出すんだ。絶対だぞ?」


「えぇ、私も少しずつ撤退します。」


「では、私は一足先に戻る。他の者は軽くモンスター達を監視、調査しつつ撤退し、増援を待て。」


「「「「はっ!」」」」








 エルダス神国の国王、エドワードは人当たりも良く、民に寄り添う国王という事で人民からは、かなり人気があった。


 エドワードが、久々の休日でゆっくり読書をしていると、不意に部屋の扉がノックされた。


「至急、お耳に入れたい事があります。」


「ふむ、アルリスか。入って良いぞ。」


「はっ。失礼します。」


「して、至急とは何事か。」


「はい。只今、新層更新を依頼していた獅子の牙の消息が途絶えた件で、迷宮に調査に行ってまいりました。

 しかし、新層よりも2つ程浅い階層で、黒い人型のモンスターと遭遇しました。そのモンスターはおそらく自身のステータスが低いのか、それをカバーするかのように今までのモンスターとは明らかに違う、強力なモンスター達を召喚し、操っていました。

 現在、障壁魔法が使えるイジス中隊長が封じ込めていますが、長く保ちそうにありません。

 至急、増援の要請をお願いします。」


「なるほどの。その人型は地上を目指しておるのか?」


「階層を越えているようですし、間違いないかと。」


「そうか。ならば、ギルドへの増援依頼の許可を出す。

 できるだけモンスターを処理しつつ、撤退せよ。後の作戦はお主に任せる。被害を最小限に抑えてくれ。」


「はっ。では、失礼します。」





 それからアルリスはギルドに走った。

 ギルドに到着し、急いで受付に向かうと、受付嬢が怪訝そうな顔で見ていた。


「すまない、緊急の用がある。ギルドマスターはいるか?」


「え、えぇ、少々お待ち下さい」


 そう言って、奥に走って行った。


 しばらくすると、奥から筋骨隆々の男、ギルドマスターが出てきた。


「どうした?」


「今、迷宮の調査をしているのですが、少々厄介な事になりまして、至急増援をお願いしたいのです。」


「詳しく聞こう」


 それから、奥にあるギルドマスターの部屋で国王にしたのと同じ話をした。


「わかった。ならば、俺も向かおう。今いる冒険者達は最高でB級だ。そいつらを連れていくといい。」


「っ!ありがとうございます!ギルドマスターが一緒ならば心強いです。」


 ギルドマスターのガルムは現役を引退こそしているが、元はS級の冒険者だった男だ。


 冒険者時代は、とても真面目で国からの信頼も厚かった。


「あぁ、お前は先に冒険者達を連れて、迷宮に戻れ。すぐに合流する。」


「はい。お願いします。」


 ギルドマスターの呼び掛けにより、B級6人が集まった。


「では、私に付いてきてください。」


「はーい。報酬は沢山ちょうだいね〜?」


「まったく、すぐ金の事ばかり…。」


 冒険者達が話していたので補足しておく


「問題ありません。聖騎士団からの依頼ですので、達成されればそれなりの報酬はあるかと思いますよ。」


「わーい。絶対達成させるもんね〜。」


「はぁ…。」


 そんな冒険者達を見て大変そうだな、と思ったアルリスだった。



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