レベル上げ 前編
「なぁ、ユウ。俺とも戦らねぇか?」
「なんでそんなに戦いたいんですか?僕はまだガルムさん程強くはないですよ?」
「いいんだよ。普通の奴らより強ぇだろ?」
「それは、そうなんでしょうけど…」
「それに、俺がガチでやる訳じゃねぇ。ガチでやるのはお前がもっと強くなってからだ。
まぁ、稽古とでも思ってくれりゃいい。」
「そこまで言うならわかりました。」
「クク…丁度いい、狂化を試してみろ。」
「え?明日に響いたりしないんですか?」
「治癒魔法かけてもらえば多分問題ねぇだろ」
「多分って…」
「んじゃ、かかってきな。」
「はぁ…わかりました。では、行きます。」
狂化を発動する。
全身に血管が浮かび上がり、肌が真っ赤に染まる。
身体からビキビキと音がする。
本当に大丈夫だろうか?
「まずは思いっきり殴ってみろ。」
そう言われたので、ガルムの所まで走ろうと地を蹴った次の瞬間、ガルムの目の前に到着していた。
少し戸惑ったが、言われた通り思いっきりぶん殴る。
「おっと」
ガルムは腕でガードしたものの、地面に跡を残しながら、後ろに3m程滑って行った。
「なかなかの威力だな。よし、次は蹴りだ。」
さっきは速すぎたので、軽く地を蹴ってみる。
今度は、ギリギリ目で追えるぐらいの速度だった。
ガルムはまた、腕でガードの構えをしているので、そこを思いっきり蹴る。
今度は、少し仰け反りながら、5m程滑って行った。
「こりゃ思ったより強ぇな…これからが楽しみだぜ。」
そこで、狂化が解除される。
瞬間、全身に痛みが走り、地面に倒れてしまう。
「グッ…これは…ハァ…思ったより…キツいですね……」
「それが狂化だ。まぁ、切り札の1つみてぇなもんだ。」
「な、なるほど…」
「聖女様のとこまで連れてってやるよ。明日の目標はレベル300だ。いいな?」
「頑張ります。」
ガルムに背負われてアテナの所まで行くと、驚きつつも治癒魔法をかけてもらえた。
しかしアテナは少し怒っているみたいだ。
「まったく…程々にしてくださいね?」
「わりぃわりぃ、ハハ」
「すみません。気をつけます。」
まだ少し痛むが、動けないことはない。
今日はもう部屋に戻って休もう。
翌日、ガルムと2人で準備運動がてら、走って行くことになった。
馬車で2時間かかる道のりを、3時間かけて走破した。
「ゼェ…ゼェ…」
「ガッハッハ、まだまだスタミナが足んねぇなぁ」
もともと、運動なんてほとんどやっていなかった。
こっちに来てからも戦闘以外に運動なんてやっていない。
もっと鍛えるべきだろうか…
「休憩がてら今日の予定のおさらいだ。」
「ふぅ…よろしくお願いします。」
「じゃあまず、今日は最下層まで行く。」
「それなんですけど、いきなり最下層まで行って大丈夫なんですか?
確か、推奨レベル400超えって話でしたよね?」
「あぁ、問題ないだろ。俺の予想だが、おそらくお前のステータスは、今いるC級またはB級の奴らと遜色無い。
そいつらの平均レベルはC級で約600、B級で約800だ。」
「え?僕のステータスってそんなに高いんですか?!」
「まぁ、俺の予想だがな。
しかし、まだレベル200手前ってんだから驚きだよな。
さて、今日の最低目標はレベル300だ。最下層でレベル上げしたらすぐ上がるだろ。」
「わかりました。僕はそろそろ大丈夫です。」
「よし、なら早速潜るぞ。」
「はい」
最下層に行く途中、26層で毒液を吐いてくる鳥に遭遇した。
「アイツはポイズナリーバードだな。空から毒液を吐き散らし、体液も毒っていう厄介なやつだ。
対空攻撃手段が無いなら急いで進んだ方がいい。
アイツは自分からは絶対降りてこないからな。」
「へぇ、面倒な相手ですね。」
そんな会話をしながら観察していると、ポイズナリーバードが突然暴れだした。
「おっと、お怒りみたいだな。しっかり避けろよ!」
「え?」
突然何を言い出すのかと首を傾げていると、ポイズナリーバードが毒を吐き散らし始めた。
「わわ!」
雨のように降り注ぐ毒液を全て躱すのは困難だ。
ジュ!
「ぅぐっ!くっそ!!」
よりによって毒液が両目に入ってしまった。
目が見えないまま、スキルで強化された感覚だけで回避に専念する。
数分後、自然治癒の効果で目が回復し、見えるようになる頃には、ガルムがポイズナリーバードを倒してくれていた。
「初めてにしては上出来だな!」
「急に酷いじゃないですか、もう…」
「まぁまぁ、目が見えなくても避けられるようになっただろ?」
「それはそうですけど…はぁ、早く最下層まで行きましょう。」
「だな。さっさとレベル上げて強くなって貰うぞ?」
「ハイハイ…」




