罠無し迷宮
今回少し血の表現が入ります。m(_ _)m
長くなりそうだったので分割させていただきます。
近日中に上げるのでお楽しみに
目が覚めると空はまだ暗かったが、城の中はからは沢山の人の声が聞こえてくる。
この世界の人達は早起きなようだ。
グッと伸びをして、寝癖などの確認の為、鏡の前に移動する。
身だしなみを整え、迷宮に行く準備をしていると、扉がノックされた。
「おーい俺だー。起きてるかー?」
扉の向こうからガルムの声が聞こえてくる。
わざわざ迎えに来てくれたようだ。
「はーい。どうぞ入ってくださーい。」
返事をするとガチャっと扉を開けてガルムが入ってきた。
「おはよう。外出する準備はできてるか?」
「あ、はい。大丈夫です。」
今はまだガルム達と出会った時と同じ格好なので特に準備する物もない。
「そうか。なら、まずギルドに行くぞ。」
「ギルドですか?」
「あぁ。流石にそのままだとアレだからな。
ギルドの備品の装備を貸してやる。」
「なるほど、分かりました。何から何までありがとうございます。」
「おう。その代わり今日はしっかりレベル上げて貰うからな。」
「もちろんです。」
外に出ると、アテナとアルリスが待っていた。
「お待たせいたしました。」
「いえいえ、今来たところですから。では、行きましょうか。」
アテナの言葉に頷き、全員でギルドへ向かった。
「…こんなもんでどうだ?」
ギルドの備品からとりあえず装備を探してもらった。
薄い鉄のチェストプレートに膝&肘当て、丈夫な革でできた篭手を貰った。
「思ってたよりしっかりしてますね。」
「まぁな。大体は元冒険者のお古とか売れ残りで安くなったやつを買い取ったりしてるんだ。」
「へぇ、そうなんですね。あ、あと僕は拳より脚を使うので硬めの靴とか無いですか?」
「あぁ、あるぞ。……ほら、これだ。」
渡されたのは、爪先と踵の部分に鉄板が入れられた少し硬めの革でできた靴だ。
サイズもピッタリだったのでこれを使う事にする。
「ありがとうございます。これで大丈夫です。」
「おう。じゃ、行くか。」
「はい!」
今日行く迷宮は馬車で2時間程走った所にあるらしい。
早速、馬車に乗って出発する。
今乗っている馬車は外の見た目こそ普通だが、中は4人でもしっかり寛げる空間が確保されており、掃除も隅々まで行き届いている。
流石、王家の馬車と言ったところか。
そんな事を考えていると他の3人が何やら話していることに気が付いた。
「ガルムさん、いくら罠無し迷宮とはいえ、いきなり中級者向けの迷宮はまだ早かったのではないですか?」
「ん?まぁそれもそうだがこいつはシャドウウルフの群れを1人で撃退してんだぜ?」
俺の話題のようだが、一旦聴きに徹することにする。
「それはそうですが…」
「まぁその為の俺らって訳だ。万が一があったら困るのはこっちだからな。
心配すんな、無茶はさせねぇよ。な、ユウ。」
ここでガルムがいきなり話を振ってきた。
「え、あ、はい。もちろんです。流石に僕も死にたくはないので。」
「そうですか。ではせめて罠無し迷宮の事を詳しく教えてはいかがですか?」
「…それもそうだな。よし、迷宮に着くまでまだ時間掛かるからな、もっと詳しく教えてやるか。しっかり聴いとけよ?」
ガルムが念を押してくる。
その顔で言われると普通に怖いのでやめて欲しい。
勿論そんな事は言わないが。
「はい!」
「よし、ならまず、今から行く迷宮は通称罠無し迷宮って言われてる所だ。昨日もちょっと話したが、まったくと言っていいほどトラップが無い。
その代わり、下の層に行く度にどんどんモンスターが強くなる。他の迷宮よりもな。」
「そんなに強くなるんですか?」
「あぁ、1番下の層は推奨レベル400超えだ。ちなみに30層しかない。」
「400って…僕まだ40なんですけど…。」
「安心しろ。1番上の層は推奨レベル5とかだからな。レベル上げには最適だろ?」
「…確かにそうかもしれませんね。」
「ユウさん、実はこの迷宮なんですが、初めは初心者向けだったんですよ。」
「え、そうなんですか?」
アテナが急に話題をぶち込んできた。
「はい。この国は迷宮を見つけるとA級の冒険者パーティに依頼して、最下層まで開拓してもらうんです。」
「調査って事ですね。」
「そうですね。名前にもある通りトラップがまったく無いし、階層数も初心者迷宮とあまり変わらない30層でした。
ちなみに初心者迷宮は、今1番浅い迷宮で最下層が25層までしかありません。」
「…それがどうして中級者向けの迷宮になったんですか?」
「それは、A級冒険者パーティによる開拓も終わり、一般に公開された時に、トラップが無いと言われれば、皆さんこぞって潜りますよね?」
「それは確かに…」
「しかも、始めの内はホーンラビットやゴブリンなど、初心者でも倒せるモンスターしか出てきません。
すると、どんどん下の層へ進んでいくんです。
そして、簡単な迷宮だという油断と下の層に進めたという高揚感で、F級やE級の方々が深く潜りすぎてしまいました。」
「…なるほど、それで大量の死者が出てしまったと?」
「そういう事です。
その事件があってから再調査したところ、A級の方々だったからこそ簡単に攻略出来ましたが、下の層に行けば行くほど、モンスターの推奨レベルが飛躍的に上昇しているのが分かりました。
それこそ低ランクの方々が束になっても太刀打ち出来ないほどに。」
「A級パーティによる開拓の時点でわからなかったんですか?」
「そうですね。この迷宮は当時、見た事の無いモンスターが多数出現しました。
そのせいで推奨レベルの設定を誤ってしまったんです。」
「なるほど、そんな事があったんですね。気を付けます。」
「えぇ、そうしてください。」
そうしてアテナはにっこり微笑み、この話題は終了した。
「さて、そうこうしてるうちにもうすぐ到着だ。降りる準備をしといてくれ。」
すっかり話し込んでしまったらしい。
2時間があっという間だった。
沢山の馬車が止まっている停留所のような場所で降り、迷宮の入口までやって来た。
入口には警備の騎士が2人立っていて、冒険者達の身分証を確認していた。
何かメモを取っているので、誰が出入りしたのか把握しているのだろう。
「身分証を」
全員、身分証を騎士に渡す。
「え!?ガルムさんに聖女様まで…。」
騎士達が目を丸くして驚いている。
やっぱり有名人のようだ。
「あぁ、ちょっと仕事でな。」
「そ、そうですか。万が一はないと思いますがお気を付けて。」
「あぁ、ご苦労さん。」
身分証の確認も問題なく終わり、いよいよ迷宮へ潜る。
少しばかり緊張していると、ガルムが話しかけてくる。
会合の時も声を掛けてくれたし、よく人を見てるんだなと思った。
「大丈夫だ。お前を死なせたりはしねぇから安心しろ。
俺と手合わせするまで、死なれたら困るからな。」
そう言って凶悪な笑顔を向けてくる。
なんだか可笑しくなって笑ってしまいそうだが、良い感じに肩の力も抜けた。
いよいよ初めての迷宮に入る。
入口は10m程の大きな岩がくり抜かれたような感じになっている。
中に入ると、石造りの階段があった。
ガルムがスタスタ降りていくので後ろを着いて行く。
階段を降りきり、前を見ると終わりが見えないほど広い草原が広がっていた。
「は?」
「びっくりしたろ?迷宮はどこもこんな感じだ。
洞窟かと思ったら、突然草原に出ましたとかな。」
「…なるほど。」
正直驚いたが、ゲームでもそんな設定は多いのですぐにそういうものだと理解した。
「ここが一階層だ。とりあえず、あそこのゴブリンでも倒してみてくれ。」
この草原にはゴブリンの他にホーンラビットやスライムもいる。
どれも弱いモンスター達だ。
ひとまず言われた通り、1番近いゴブリンに向かって歩く。
だんだん距離が縮まって、10m程の距離に来た時、ゴブリンと目が合った。
1秒程見つめ合っていると、突然ゴブリンが叫びながら飛びかかってきた。
「ギギィ!!」
「おっと」
ゴブリンはボロボロのナイフを振り上げて突き刺そうとしてきたが、とりあえず横にステップして回避した。
シャドウウルフより全然遅いので余裕を持って避けられる。
「ギィ!ギギ!!」
その後も同じように飛びかかってくるので同じように躱していると、ガルムから声が掛かる。
「おーい!攻撃しねぇと倒せねーぞー!」
さっさと倒せという事らしい。
そこに、また同じようにゴブリンが飛びかかってきたので、横に回避し、着地して前屈みになった隙を突いて、顔面に思いっきり蹴りをお見舞した。
すると、僅かに抵抗はあったものの、思ってたほどの衝撃が来ず、そのまま一回転して転びそうになった。
どうなったのかとゴブリンの方を見ると、首から上がもげて血が吹き出していた。
「うわ…」
いきなりグロい場面を見てしまって、少し気持ち悪くなる。
そこに、ガルム達が近付いて来て話しかけてくる。
「まぁ、ゴブリンぐらい余裕だな。…どうした?」
「あ、いえ。いきなりグロかったもので少し気持ち悪くなっちゃいました。はは。」
「そうか、まぁその内慣れるだろ。さ、次だ次。」
そう言ってガルムはまたスタスタ歩いていく。
しばらく着いて行くと、また階段が見えた。
最初に降りた階段とほとんど変わらない、石造りの階段だ。
次の階層もだだっ広い草原だった。
その次も、そのまた次も。
そうして、特に戦うこともなく五階層までやって来た。
「次はここにいるコボルトと戦ってみてくれ。ゴブリンより少し強いが、多分問題ない。」
ガルムがそう言うのでとりあえずコボルトらしきモンスターを探す。
コボルトは犬の頭を持つ人型のモンスターで、見渡すとすぐに見つかった。
手にはサーベルを持ち、革の鎧を着ている。
ゴブリンの時と同じように歩いて近付くと、20mぐらい離れた場所から目が合った。
犬の頭だから鼻が利くのかもしれない。
コボルトはただこちらを見ているだけなので、少しずつ近付いて行く。
5mぐらいの距離まで近付くと、コボルトはサーベルを構えて臨戦態勢をとった。
「グルゥ…」
鳴き声を上げてジリジリ近寄って来る。
さらに1mほど近付くとサーベルを振り上げて斬りかかってきた。
「あぶな!」
サーベルを振る速度が思ったより速く、当たりそうになってしまった。
気を取り直して、一旦距離をとる。
こちらが武器を持っていない以上、正面から行くのは危険だ。
なので後ろに回り込む事にする。
また、ジリジリ近寄って来るコボルトを視界に捉えつつ、横に走る。
ステータスのお陰か、元の世界の自分よりかなり速く走れる為、簡単に後ろをとれた。
が、コボルトもこちらから目を離さないようにしている為、すぐにこちらに向き直る。
これでは意味が無いと後ろをとり続ける。
しばらくそうしていると、コボルトの振り返りが遅れた。
これはチャンスだと、後ろから横腹を思いっきり蹴り飛ばす。
バキッと音がして、10mほど吹っ飛んだコボルトが起き上がることはなかった。
「んー、まぁ問題ないだろ。次行くぞー。」
ガルムはまたどんどん進んでいく。
10層目までやって来た。
そろそろこのままのレベルでは辛くなってくる。
周りは相変わらず草原だ。
「よし、次の相手はアイツだ。」
ガルムが指差した方を見ると、3mぐらいある豚の頭のモンスターがのそのそ歩いていた。
片手には100キロはありそうな木の棍棒を軽々と持っている。
「オークですか……」




