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ウシロダくん  作者: つるのひと
4/4

起③



「そう。じゃあ、」



 ()()()()()、だね。



 菫色の瞳を持つ彼女は、

 うっすら目を細めて、そう言った。



「僕は()()()。よろしく」

「うしお……さん?」

「うーん。出来れば、くんで呼んでくれると嬉しいな」


 宗教上の理由で。


 と、うしお()()は付け加えた。



 私は頷く。

 断る理由も、特にない。



「うしおくんは、なんで、ここにいるの?」

「出るって聞いたから、ちょっと確かめに」

「ひとりで? 怖くないの?」

「あんまり」



 肩をすくめる、うしおくん。


 お化けとか、都市伝説とか、

 理由もなく怖がるタイプじゃなさそうだ。




 うしおくんを改めて見る。

 すらりと高い背に、

 首周りのすっきりとしたショートカット。

 女子制服を着ていなければ、

 きっと男の子に見えただろう。

 菫色の瞳は、闇にまつろわぬ光をたたえて、

 堂々としているのに、つかみどころのない、

 不思議な子。



「でも、今日はもう帰ろうかな。

 さよちゃんもいっしょに帰らない?」


 うしおくんは、廊下の端まで歩いていくと、

 暗がりから肩掛けカバンを取り出した。


「悪いことしちゃったから、お詫びになにか奢るよ」

「え?」

「だって、確かめに来たんでしょ」

 




『ウシロダくん』のうわさ。




 何気なく放たれたその一言で、

 闇が再び、ざわりと蠢く。



「もう時間は過ぎたから、『ウシロダくん』は現れないよ」



 “夜の6時50分に、

 ひとりで2階の渡り廊下を歩いていると、”



「さよちゃんは、僕が先に居たから、見られなかった」


 

 “足音が、

 ひたひた後ろをついてくる。”



「うしおくんは、見られたの?」

「うーん、どうだろう。

 ねえ、」



“『後ろだ……後ろだ……』

 低い声がだんだん近づいてくるけど、

 絶対に振り返ってはいけない。

 振り返ると……”



「君は、どうして此処に居る?」




「……私、」



 息を吸う。

 吸って、吐く。

 輪郭が形を成して、闇を遠ざける。







「私のともだちが、ウシロダくんを見た、って」

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