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ウシロダくん  作者: つるのひと
3/3

起②



「なんで」



 しばらく彼女と見つめ合って、

 私は、やっと三文字絞り出した。


 首を傾げる、彼女。


 私の疑問には答えてくれない。

 いや、

 答えられるわけがない。

 あまりにも漠然とした問いだ。



 なんで、私がいるって分かったの。

 なんで、振り向いたの。

 なんで、なにも言わないの。


 ここでなにをしているの?

 ウシロダくんのうわさを知らないの?

 貴女は誰?



 菫色の、彼女の瞳をじっと見つめたまま、

 ぽこぽこと湧き出た疑問が、

 形を成す前に消えていく。

 酸欠の金魚のように口をぱくぱくさせて、

 つづきの言葉を探していると、




「君は、

 誰」



 首を傾げたままの彼女が、

 そう問いかけてきた。


「私は、」



 名前を答えようと息を吸って、

 ああ私は呼吸をしていたのだと、

 そんな当たり前のことに気がついて、


 闇と私の身体とが、

 その境界線が、

 呼吸によってはっきりと分かたれて、



 ようやく、生きた心地がした。



「さより。稲田、沙代里」



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