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ウシロダくん  作者: つるのひと
1/3

私(たち)だけ

 

 あの子には変な癖がある。


 ひとりで廊下を歩いている時、

 友達との会話がふと途切れた時、

 突然振り返るのだ。

 まるで、なにかに呼ばれたみたいに。

 そして数秒空中を見つめる。

 そのなにかに返事をしているかのように。


 たぶん、気づいているのは私だけ。

 あの子を見ている私だけが気づいた、

 特別な、癖。


 はじめは見つけられたこと自体が嬉しかった。

 けれど次第に、それでは足りなくなった。


 あの子が見ているものを、

 私も見たくなった。

 あの子の特別を共有して、

 あの子の特別になりたかった。

 私があの子を見ているように、

 あの子にも、見ていてほしかった。



 だから、私はあの子を見続けた。

 あの子が振り向いてくれるまで。


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