ウシロダくん
ウシロダくん。
私の通う中学校で、囁かれているうわさ。
「夜の6時50分に、
ひとりで2階の渡り廊下を歩いていると、
足音が、
ひたひた後ろをついてくる。
『後ろだ…後ろだ…』
低い声がだんだん近づいてくるけど、
絶対に振り返ってはいけない。
振り返ると…」
私の友達は、
振り返ってしまった。
その日から、彼女の席は空っぽのままだ。
友達が何を見たのか、
どうしてあんなことになったのか、
誰も知らない。
知る由もない。
知らなくていい。
そう、思っていた。
夜の渡り廊下で、あの子に会うまでは。
「その『境界』を、越えてはいけないよ」