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一人の少女の誓い

 入学式当日

 なんだか、長く感じたこの二週間はほとんどが部屋の整理で持っていかれて、結局最後には隣人のサキュバスに手を貸してもらう形になってしまった。

 しかし、今はそのことは一旦置いておこう

 今は、この栄えあるオウトロムンド魔法学園に正式に生徒であることを認可される、まぁつまりは入学式を心の底から楽しもう。

 入学式を楽しむというのは、なかなか奇抜な考えに思えるが、ことオウトロムンドでの入学式は毎年何かしらのイベントが起こるともっぱらの話題なのだ。

 だから、僕のこの【楽しむ】という感情は皆が思ってることになる。

 実際に去年なんかは、在校生が協力して、爆発魔法の連発で空に花を咲かせたのだから。

 きっと、今年も何かすごいイベントが用意されているはずだ。

 そんなことを想いながらも、ここ二週間一切寄ることのなかった、学園内へと僕は足を踏み入れる。

 門をのけると、レンガで舗装された道が学園内の様々な施設へと通じており、宙には看板も浮かんでいる。

 噴水の水は物理法則を無視した方法で噴射されており、噴射された水が形を変えているのを見るのもまた一興だろう。

 噴水の周りには休憩できるスペースがあり、そこで昼食をとったら心地いいに決まっている。

 あたたかな日の光を浴びながらも、噴水近くの休憩スペースに生えた大きな四本の木、木漏れ日が零れる中で寝息を立てる将来の自分が想像できる。

 僕は一度周りを見渡した後に大きく深呼吸をする。

 受験以外で学園内に入るのは初めてで、周りにある景色をこれから6年間見ることになると思うと、ワクワクしてしまう。

 今日からここが僕の学び舎だ。


「よし、たくさん勉強して、魔法士になるぞ。」


 僕がここの学校に入学したのは、魔法士に憧れたからだ。

 魔法士とは一体どういう仕事かと聞かれると、答えるのは少し難しいと僕は思う。

 魔法士とはほんとに多種多様な仕事をする、何でも屋のような仕事だからだ。

 いうなれば、魔法を使ってなんでも困りごとを解決する者たちの事を言う。

 ある時は、畑を耕し、ある時は天気を変え、ある時は凶暴なモンスターから民を守る。

 ほんとに、魔法士を目指すものは多い。

 故に魔法士を目指すものの数だけ、魔法士の仕事とはあるのものなのだ。

 だからこそ、魔法士になるのは、とても難しいことだ、だけど僕はここで勉強して必ず魔法士になって見せる。

 そんなことを想いながらも学園内の看板に従って入学式の会場に訪れる。

 すると


「お兄ちゃん!」

「シエル、来てたのか」

「もちろん!お兄ちゃんのかっこいい姿を見逃せないもん!あっ、入学おめでとう!」

「ありがとう、でもまだ気が早いよ、入学授与はこれからだからね」

「そうだね、えへへ」


 妹のシエルの傍には、お父さんとお母さんが一緒にいて、お父さんがやっと来たか、と言いながら僕の傍に来る


「息子よ、お前の夢のためにこれから頑張るんだぞ」

「口下手なお父さんがそこまでいうなんて、お母さんもしかして何かお父さんに言った?」

「あら、あなた、可愛い息子に台本の事ばれてますわよ。」

「まったく、かなわないな」


 お父さんへのいじりも含めて、短い間ではあったが、再開した家族との団らんも済ませて、僕はあてがられた席へと向かう。

 すでに何人かの者が座っており、僕の席は両側にすでに座っている者がいたこともあって、すぐに分かった。

 間にちょこんと座って、姿勢を正して、膝の上に拳を置く。

 しかし、僕はしり目でとなりの者を見る。

 股を大きく広げて座る同級生、見たところ種族は獣人のウルフルズ、オオカミのような鋭い目、しかし彼は人間の血も流れているために体は毛におおわれてなく、素肌である。

 そのため、顔立ちも確認できるが、ハーフエルフである僕の観点から見ればかなり、整っている。

 鋭い視線も相まってかなり近寄り難い雰囲気を纏わせている。

 しかし、耳と尻尾は、オオカミのそれであるから若干可愛くも見える。

 愛くるしさというものだろう、しかし態度は気に食わない、僕とは相いれないタイプだと思う。

 いや、そう思いたい。

 しかし座高をみるに、身長はそれなりにあるようだ。

 僕の身長が175くらいなのを見るに彼はすでに180を超えている。

 獣人にしてはかなり大きい、おそらく人間の血のほうが強いためであろう。

 見た目は人間、しかしふてぶてしい態度は獣人のそれだ。

 他の周りの生徒は特に気になる者はいないが…っと思い後ろを見たときに


「あっ」

「あっ」


 そこに、ユミルの姿を見つけた。

 今座っている席はクラス別となっている、そしてユミルが同じ区画にいるということは、それはユミルが同じクラスメイトであるということだ。

 僕はすぐに一度相槌をうってから、前を向く

 気にしても仕方がない、同じクラスだというのであれば、それはそれで問題はない。

 僕はそんなことを思っていると、突然空中に光る玉が現れる

 どこかの区画で「っひ、人魂!」っという声が聞こえたが、これは人魂ではない

 多少形は違いうがこれは、魔道具だ。

 拡声器の役割を担う者だろう。

 光る玉は今の位置よりも多少上へと移動すると、そこから声が聞こえ始める


「お集まりの皆さま、大変お持たせしました、これより第100回、オウトロムンド魔法学園の入学式を開始いたします。最初に学園長からの会式の言葉です。それでは学園長お願いします。」


 拡声器からはけだるそうな声が聞こえてきて、その声に反応して、僕らのいる位置よりも多少高い位置にある、台に学園長が関係各所の方々や来賓の方にお辞儀をしながら、台の上に立つ


「皆さん、どうも、このオウトロムンド魔法学園の学園長を務めている、バベルです。型ぐるしい話しをしても仕方がないので、一言二言だけ申します。まず最初に皆さん、ご入学おめでとうございます。そして、オウトロムンド魔法学園は自由な学園です、皆さんの熱心にこたえられるように、様々ん講師の方々がおります、皆さんが目指す将来の夢のために、ここでたくさんの仲間をつくり、そして切磋琢磨してお互いを高め合ってください、そして、6年間を実りのあるものにしてください、以上です。」


 学園長はそれだけ言うと、すぐに台を降りてしまう。

 そのあとは関係各所の方々や来賓の方々のお話をはさみ、いよいよプログラムでいうと、校歌斉唱の一つ前の新入生代表のあいさつだ。

 僕個人としては正直興味はないが、しかし代表の子と友達になれれば、きっといい友人になれるはずだ。

 僕は、そんなことを想いながら、悠長にかまけていたら

 拡声器から、新入生代表の名が出された


「新入生代表、ユミル・イシュベル、前へ」


 えっ?今なんて?

 ユミル?ユミルの名前が出たぞ……

 僕はそんなわけないだろうと思って言うと、視線の横を隣人のサキュバス、ユミルが通り過ぎる。

 そして、台の上に上がる

 

「ユミルが、新入生代表!?」


 思わず、声に出てしまった。

 小声で言うほどの余裕がなかった僕は少し大きい声でそう言ってしまい、周りの注目を集めてしまった。

 拡声器からも、「そこお静かに」っと注意をうけてしまった。

 台の上に出たユミル、尻尾を左右に揺らしながらも、照れながらマイク式の魔道具に魔力をいれてそして、話しだす。


「みなさん、私はサキュバスです。私はこの学園に入ってやりたいことが一つあります、それは異種族の友達をたくさん作ることです。サキュバスはどの種族からも畏敬の目で見られることが多いです。だから私はその垣根をなくしたいと思っています。そのためには、様々な努力が必要になるでしょう、しかしその努力はこの学園を私が去るころには必ず、実らせたいと思います。これから、6年間よろしくお願いします。」


 ユミルはそう声高々にいうと、僕のほうを見てくる。

 笑顔を僕に向けてきて、手を振る

 もちろん、数人の者がその視線と動作につられて僕のほうを見る。

 これは…大変なことになりそうだな。

 きっと僕の学園生活に穏やかな日は来ないだろうと、実感した瞬間であった。


 

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