お隣さんはサキュバス
「よいしょっと」
プエルタの先にある学生寮についてひとまず届いた荷物の整理をしているが、意外にも荷物があって一人で整理するのはかなり骨が折れる
僕はオウトロムンドが提供する学生寮にて、一人暮らしをすることになる。
家賃は学費から抜かれる形なので、特に細かい部分は気にする必要はない。
食材もひと月に消費しきれるか分からないほどの量が冷蔵庫の中にあり
中身がなくなると追加されるとパンフレットには書いてあったが…
ほんとにかなりの量だ。
僕が少食ということもあるのだろうが、冷蔵庫には干し肉10キロに各種果物、野菜が3キロは入ってる
そのほか調味料もそろえてあり、個人的にはかなりうれしいが、別に料理がそこまで得意じゃない僕はこの調味料達を使う機会など来ないのだろうな。
米もちゃんと備蓄されていて、なんと50キロもの量だ。
これをひと月でたいらげる種族でもいるのだろうか?
僕ら家族なら、三か月くらいは持つぞ、僕一人なら半年以上もちそうな量の米だ。
「にしてもほんとに広い部屋だな」
部屋は3LDKもの広さがあり、エアコンや洗濯機も完備な上に、風呂やトイレはちゃんと別だ。
一人暮らしスタートを決めるにはかなり豪華な部屋だなと思うが……
リビングにある大量の段ボールのせいでその解放感も皆無
現在時刻は昼を過ぎようというのに全然片づけが終わらない
「少し、外の空気を吸うか。」
僕は靴を履いて外に出る
僕の部屋は6棟ある学生寮のうち、学園から一番近い1棟の3階の13号室
313号室に暮らすことになる僕は5階建てで50部屋ある学生寮が6棟もあることに驚いたが、この異世界学園ことオウトロムンドには総勢3000名以上もの生徒がおり
6年生になっている。
1学年10クラスもあり、一クラスに50名もの生徒がいる。
同級生が500人もいることに俺はなんだか異世界クオリティーを感じつつも、考えてみれば
多種多様な種族が通うこの学園は、生徒のニーズに合わせた学科を実技をやることが多く。
クラスにあ50人もいるが全員で同じ授業を受けることは基本的にはない
それもそうだろう、魔法を得意とする種族や苦手とする種族にまったく同じ授業を行っても仕方がない
生徒の現在のレベルに合わせて、教師がアドバイスできるような、システムをこの学園は取り入れている。
ちなみに学科別の授業などでは大きく分けて二つある。一つは魔法技術特化学科、略して魔法学
主に魔法の行使を中心に授業が行われて、様々な魔法の研究に没頭する学科だ。
もう一つは魔工技術学科、略して魔工学、主に魔道具や魔法を用意した機械の作製に没頭する学科だ。
ちなみに僕は魔法学のほうに入っている。
「ふ~、にしてもほんとに大きな学校だな。」
僕は一体どれほどの敷地をこの学校は持っているかと思いながら、舗装された道を歩く
気温も今日はよく、ほんとあと少しで春が来るのだな、と実感できる
心地よい風が吹いて、木々が揺れる
川が流れており、河川敷へと降りる
こういう景色を見ると、地球にいるのとさして変わらないように思えるが
ふと空を見ると、見える三つの太陽
科学的な部分では正直まだ謎だらけのこの異世界だが、そう言った事も今では魔法の登場であやふやになっている説がある。
むしろ今は魔法の原理を解き明かそうという流れがあるとのこと、それもそうだなと思う
僕も、もし魔力がなかったら、異世界の宇宙よりも、魔法のほうに興味を惹かれるだろう
「うーん、お昼何にしようかな。」
僕はしばらく河川敷で日光浴をした後で、その日の昼ご飯を何にするか悩みながら学生寮に戻る。
自分の部屋に入るためカギを出す
ちなみに学生寮の扉はオートロックだ。
313の扉に自分の鍵を…鍵を…あれ?
ポケットを何度も確認しても鍵を発見できず、僕は急いで先ほどの河川敷まで走って戻る
道すがらで落としてきた可能性も考慮して、一応目線を配せるが
それらしいものが見えない
道の途中幾人かの生徒と思わしき異種族たちとすれ違うが、今はそれよりも部屋鍵だ。
先ほどの河川敷に帰ってきて、鍵を探す
しかし、夕方ごろになっても鍵は見つからず、僕は仕方なく学園側に連絡を入れるために一度学生寮に帰る。
学生寮には何か問題があった時用に学園に直通の電話がある。
「はぁ、引っ越し初日からいきなり鍵を無くすなんて、僕大丈夫かな・・・」
途方に暮れながら、学生寮に帰る
僕は電話の元に行って、学園側に連絡を入れようと、受話器を取ろうとしたその時だった。
「あの、すみません。もしかして313号室の鍵を落としたのはあなたですか?」
声をかけられて後ろを向くと、そこには一人の女子生徒がいた。
頭に二本の曲がった角が生えており、尻尾が生えており、その尻尾の先がハート形になっている。
顔立ちはかなり整っており、スタイル抜群でかなりの美人がそこには立っていた。
「な、何でしょうか?」
僕は自分の鼓動が早くなるのを感じる、だって今僕の目の前にいるのは、魔族のサキュバスなのだ。
サキュバスは男の精気を食料としており、一度狙いを決めた男は精気を吸い取りきるまで離さないと言われているのだ。
母さんが気を付けてと言ってたのはそういう訳だ。
「あっ、すみません。急に話しかけてしまい、そのこれを渡したくて」
そう言って、サキュバスの子が差し出してくるのは僕の部屋の鍵
鍵には番号が書いてあり、一目でどこの部屋の鍵なのかを確認することができるようになっている。
「あ、ありがとう。えーっと、君名前は?」
一応の社交辞令として名前を聞いておく、本当はサキュバスに関わっていると危険なのだが…さすがに鍵を拾ってくれた者に鍵だけ受け取ってすたこらさっさというのは失礼過ぎるので
「あ、あの、私サキュバスのユミルと言います。すみません」
何だろう、このサキュバス、すごく弱腰というか
人との会話に慣れていないというような感じだ。
「まぁ、えーっとユミルさん、鍵拾ってくれてありがとうね。それじゃあ」
「あっ、はい」
僕はそう言って、階段を上っていく
すると、後ろから足音がする。
見てみると、そこにはユミルがいた。
僕と目が合って、笑顔を向けてくる
・・・、僕は若干、足はやになって階段を上る
すると同じくらいのペースで足音が後ろから聞こえてくるので、今度は走って上る、しかしそれでも同じペースで足音が後ろから聞こえてくる。
僕は自分の部屋の前に来て息を少し切らしながら、僕の後ろから足音が止むのを聞いて、振り向いて
「な、なんの用!」
っと叫んで後ろにいるユミルに言うと
ユミルはっびくっとすると、懐から鍵を出す
そのカギには、312とあり
「あ、あの…自分の部屋に」
急に叫ばれてびっくりしたらしいユミルは涙目になりながらそういう
まさかのお隣さんだった。
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