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最近、縮地を使ったネタを多くみかける気がします。縮地ネタに走った先輩まじリスペクト。
村の住民の朝は早い。
彼女、カトゥーの場合はまず水瓶に水を入れることから始まる。
水瓶に水が溜まったのを確認したら顔を洗い、歯を磨き、朝食をつくる。
今日の朝食はパンの耳ともやし炒め。
寂しい財布の中身からすこしでも栄養のとれるものをとろうと尽力しているのがわかる。
何故、彼女はこうもひもじい思いをしているのか。
「あれ、サトゥーさん。おはようございます。」
「おはようカトゥー、いい朝だな。」
彼はサトゥー。
彼女の保護者であり、彼女の育ての親だ。
山で一人泣いていた赤子を拾い、育て上げた彼は今、彼女の隣で住んでいる。
「で、カトゥー、その、なんだ?その大きな穴は?」
今、彼と彼女は今壁越しに会話をしている。
そう、この村唯一の酒場にはいまカトゥーの腰から頭の先ほどある大きな穴があいていた。
「いや、あの、それはですね…」
「もしかして客がその穴客がぶちあけたのか!?」
「い、いえ!?やだなぁ、うちのお客さんにそんなことする人いるはずないじゃないですか!」
そんなことをする人がいるのである。
この穴はこの村の自警団の幹部があけた。
あそこの人たちはいつも悪酔いするのだ。
いつもこの店にきては店に損害を与えて帰っていく。
だから、今日も彼女は金欠で今朝の朝食も貧相なのだ。
しかし、その事は彼には説明できない。
彼はカトゥーの保護者であり、この建物の家主でもある。
そして、彼は心配性なのだ。
万が一、サトゥーが穴を店にあけていくような客がいることを知れば忽ちこの村唯一の酒場は営業休止にさせられるだろう。
事実、彼女は一度だけサトゥーに大休止させられたことがある。
とにかく、彼には絶対に知られてはならない!
「いやね?この穴、実は私が昨晩あけちゃったんですよ。昨日、自警団の人がきましてね?その人が剣を腰から下げていたので素振りをさせてもらっていたんです。そしたらね、なんとバナナの皮が足元に!いやー、これにはチャップリンもビックリですね!きっと剣が重かったからバランスをとりにくかったのもあったのでしょう。そのままつるっと滑りまして転んでしまったのです。慌てて自警団の人が私を起こそうとして手を差し伸べてきてくれました。私は気恥ずかしい思いをしながらも彼の手をとります。しかしそれは奴の罠だったのです。咄嗟に気づいた私は縮地ンガーZを起動して瞬間移動をしました。その瞬間私のいたところには巨大なハンマーが振り下ろされてました。あのとき縮地ンガーZが手元になかったらきっと今頃はミンチだったでしょう。一体どうしてこんなことをするのか?私は顔を上げました。なんてこったい、やつの正体はシュクチン大魔王じゃないか!これには私も驚嘆、沈痛。しかし私も泣いてばかりではいられません。縮地ンガーZとシュクチン大魔王。全人類と縮地をかけた戦いの火蓋が切って落とされました。そうしてあいたのがこの穴なんです。この穴は歴史的にも重要でこの村の重要文化財にも指定されているんですよ。だから決して、決っっっしてうちのお客さんがあけた穴ではありません!」
「お、おう。わかった、落ち着け。」
言い訳というには余りにもお粗末な内容。
サトゥーは、なんとなく客がやったんだな、と理解した。
しかし彼は優しいのだ。
目玉焼きに塩をかける人以外には手を差し伸べるほど優しいのだ。
なんとなく察したサトゥーは廃材をカトゥーにあげることにした。
縮地ンガーZ・・・どっかの博士がどっかの敵に対抗するためつくったロボット。縮地エネルギーによって稼働している。いまはツコゥバ研究所に保管されている。
シュクチン大魔王・・・クシャミをしたあいてを縮地によって消す魔王。相手は死ぬ。