革命 7
「・・・今世間を騒がせている ”革命軍”・・・その総本山を発見したらしい」
神妙な顔をしたジェームズが、同じく真剣なまなざしのエマにそう告げた。
”革命軍”
”革命家スコーピオ”を筆頭にした反社会集団。人通りの多い場所で人質を取り、人々の目線を集めた上で演説を行う。全てを語り終えた後に人質を解放して自爆をするという事件を多数繰り返した集団だ。
ただの街頭演説では誰の目にもとまらぬであろう”革命軍”の思想。しかしそれは、目の前で演説をしていた人間が笑顔で爆散するという非現実的な光景と供に、それを見た人々の記憶に深く刻みつけられた。
「・・・なるほど、それで我々に出動の要請が掛かったわけですね」
エマの言葉にジェームズは頷いた。
「ああ、出発は1時間後だ。準備を整えておいてくれ」
自分の思想を広めるために同胞を自爆させるような集団だ。あきらかにまともではない。
「・・・・・・相手は戦闘能力を持たない一般人・・・しかし、厳しい任務になりそうな予感がするな」
ジェームズは深くため息をつくと、1時間後の出動に向けて準備を始めるのであった。
◇
「いくら凶悪な事件を起こしている集団とはいえ、あくまで相手は一般人・・・基本的には我々だけで対処可能な筈です」
”革命軍”の本部、古びたビルを包囲した機動隊。その隊長が緊張した面持ちでヒーロー二人に呼びかける。
「わかっています。我々は後方で待機・・・あくまでヒーローが出動するのは相手側に凶悪な能力者がいたとき・・・そうですね?」
ジェームズの言葉に、機動隊の隊長はこくりと頷いた。
「すいません。本当は最初から一緒に行動していただきたい所なのですが・・・警察側としてもメンツというものがありますから」
ヒーローはそもそも対能力者用に結成された部隊。それ以外の事件にまで出張ってしまっては警察の側が無能だと侮られてしまう。
それはマズいのだ。
警察という組織自体が侮られては、それこそ犯罪者が増長してしまいかねないのだから。
「では、先に我々が突入しますので待機をお願いします。非常時には無線で連絡いたします」
そう言い残して隊長は部隊の元へ戻っていく。二人になったヒーローたちは突入を開始する機動隊の姿を眺めながら、険しい顔をしていた。
「・・・・・・相手は一般人だ。普通に考えたのなら我々の出番は無い筈だが」
「何か不安があるのですか? ”ミスターT”」
エマの疑問に、ジェームズは静かに首を横に振る。
「確かに不安はある・・・だけど何が不安なのか、自分でもよくわからないんだ」
いつになく弱気なようすのジェームズに、エマはさらに何か問いかけようと口を開く・・・その瞬間、機動隊が突入したビルの内部から銃声と悲鳴が響き渡った。
「!? 我々も行くぞ ”ウィング”!」
駆けだしたジェームズ。ワンテンポ遅れてエマもそれに続く。
二人は正面からビルの内部に侵入した。一階の最奥にある大きなドアが開いている。恐らく先に突入した機動隊はその奥だろう。そう判断したジェームズは開いたドアの中に駆け込んだ。
視界いっぱいに広がるのは血にまみれた機動隊たちの死体の山。硝煙と血の香り。そしてその奥にいた人物を見たジェームズは目を大きく見開いた。
「・・・ルーカス? なんでここに・・・」
ルーカス・スミスこと、消息不明になっていたヒーロー”ガンマスター”。ヒーロースーツに身を包んだ彼が、大型の銃器を抱えてそこに佇んでいたのだ。