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革命 6

「同士スコーピオ・・・それで、この私に話しというのは?」


 大熱狂の演説の後、スコーピオ直々に呼び出された一人の男。薄くなりかけた頭を整髪料でオールバックにまとめた中年男は、緊張した様子でスコーピオに問いかける。


「ふふ・・・緊張することはないよ、同士ペレス。君には我々の崇高なる使命の為に、一つ仕事を頼みたいんだ」


 穏やかな笑みを浮かべて答えるスコーピオに、ペレスと呼ばれた男は目を輝かせる。


「おぉ!! この私が使命の為に働けるのですか!? なんと光栄な・・・ええ、ええ! どのような仕事でも命に代えてもやりとげます!」


 えらく興奮した様子のペレスを見て、スコーピオはニヤリと意地悪く口角をつり上げた。


「素晴らしい心意気だよ、同士ペレス・・・では、この革命家スコーピオが君に仕事を託そう・・・」


 スコーピオはゆっくりとペレスの元に歩み寄り、その右肩に優しく手を置くと、彼の耳元でそっと囁いた。


「我らが使命の為に・・・・・・・・・死んでくれないかな?」









「誰も動くなぁ!! コイツがどうなってもいいのか!!」


 ヒステリックな大声を上げて周囲を威嚇する一人の中年男性。薄くなりかけた髪の毛をたっぷりと整髪料でなでつけてオールバックにまとめている。その両目は血走っており、とても正気とは思えなかった。


 男の右手には一丁のハンドガン。その銃口は左腕で拘束している警察官のこめかみに向けられている。


 人通りの多い真昼の街道で行われる犯罪行為・・・しかも警察官を襲撃するという異常。周囲には野次馬が集まっており、男はその野次馬に向かって叫び続けている。



「この世界は間違っているぅ!」


「能力者が跋扈するこの時代ぃ!!」


「犯罪は激化し!」


「治安は乱れるばかり!!」


「政府は我々を守るどころか!」


「自衛手段である能力の使用を禁じる始末ぅ!!」



 叫びながら徐々に興奮してきたのか、声の音量が上がっていく。目は血走り、ツバを飛ばしながらも男は演説を続ける。



「革命だ!」


「今こそ革命が必要なのだ!!」


「世界に正義の鉄槌を!!」


「革命をぉ!!」



 そして男は突然ピタリと口を閉じると、左手で拘束していた警察官をドンと突き飛ばす。わざわざ自分から人質を手放すという奇行に目を白黒させる周囲の人々。


 男はそれどころか手にしていたハンドガンすら地面に放り投げると、先ほどまで目を血走らせていた人物とは思えないほど爽やかな笑みを浮かべたのだった。


「皆さん、ご静聴どうもありがとう」


 次の瞬間、男の体が爆散した。


 周囲の人間に被害を与えるほどではなく・・・しかし確実に男の体をバラバラに吹き飛ばした爆発。爆風に乗って、男の肉片が周囲の野次馬達に降りかかる。


 阿鼻叫喚。


 目の前で起こった非現実的な出来事にパニックにおちいる人々の姿・・・。


 この奇怪な事件は、一部の人々にトラウマを植え付けながら、一人の男の存在を世界に知らしめたのだった。





”革命家スコーピオ”





 世界を揺るがす。奇人の名を・・・・・・。






 

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