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革命 5



「どう思いますか? ジェームズさん」


 長官室からの帰り道、まだ不満顔のエマは隣を歩くジェームズに訪ねる。ジェームズは思案顔で頷くと、周囲をちらりと一瞥してから声のトーンを落として話し出した。


「我々がアームストロング長官の元で動く事に関しては、悪い手ではない。街で起こっている犯罪に対しては、軍部よりも明らかに警察の方がフットワークが軽いからな・・・・・・それにアームストロング長官は非常に頭の切れるお方だ。きっと彼の元でならこの窮地も切り抜けられるだろう」


「・・・・・・そうですか。他ならないアナタがそう判断したのなら間違いないのでしょうね」


 エマはゆっくりと息を吐き出すと、真剣な眼差しでジェームズを見つめた。


「ジェームズさん、今回の失踪事件をどう見ますか?」


「先ほども言ったように、例え相手が麻薬王セルジオ・バレンタインだったとしても、あの二人が負けるとは思わない・・・きっとセルジオは氷山の一角だ。それもとびきり巨大なやつのね」


「・・・私たちで対処できますかね?」


「わからない。だからこそ、今回の件はむしろ助けの船なんだ。前回のテロ以上にやっかいな事が起こったのなら、警察と上手く連携が取れなければ敗北は濃厚だからね」


 コクリと無言で頷く二人。そしてエマが、何かを思い出したという風に口を開いた。


「そういえばジェームズさん。二人の失踪に、もしかしたら関係のあるかもしれない人物に心当たりがあるのですが」


「本当かい?」


「ええ・・・とはいっても、かなり胡散臭いというだけで、二人の失踪と関係があるかもと言ってしまうと、少々強引な紐付けなんですが」


「構わないさ。情報は少しでも多い方がいい」


 エマは思い出すように視線を上に向けると、眉をひそめてその人物の名を口にした。


「”革命家 スコーピオ” って男をご存じですか?」






 寂れた講堂に、ぎゅうぎゅうに詰めかけた大勢の人々。彼らは一様に目をキラキラと輝かせて壇上を見上げる。


 ゆっくりと舞台袖から現れた一人の男。芝居で役者が着るような大仰な衣装を身に纏い、顔には穏やかな微笑を貼り付けた中年の男。


 その人物が現れた瞬間、講堂に集まった人々は歓声を上げる。ボロボロの講堂が大きく揺れたと錯覚するほどの大歓声。それを受けた男は、にこやかに右手を挙げて歓声に応えた。

「同士諸君」


 男がしゃべり出したとたん、先ほどまでの大歓声が嘘のように、場は静寂に包まれた。集まった人々は真剣な表情で壇上の男の言葉を待っている。



「革命の時だ」


「この世界は間違っている」


「能力者が跋扈するこの時代」


「激化する犯罪」


「政府に止める手段はなく」


「それどころか我々に自衛手段である超能力の使用を禁止する始末」


「我らは立ち上がらねばならない」


「正義のために」


「この世界を救うのだ」



 芝居がかった様子で両手を広げる男。

 沸き上がる歓声。



「我が名は”革命家 スコーピオ” この世界の救世主である」



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