革命 4
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「・・・今話した通りだが、何か言いたそうだねヒーロー”ウィング”。凄い目をしているよ・・・とても君のファンには見せられそうに無い凄まじい目だ」
警察庁長官ダン・アームストロングは、疲れたような表情を浮かべて椅子に深く腰掛け、目の前に起立している二人のヒーローを眺めた。
怪我から復帰したばかりのヒーロー部隊リーダー。ヒーロー”ミスターT”ことジェームズ・ウィルソン。生粋の軍人らしく乱れの無い立ち姿と、軍服の上からでもわかる隆起した筋肉が、戦いを生業としている者独特の迫力を醸し出している。
彼の隣にいるのは、まさに対照的な人物。
ヒーロー”ウィング”ことエマ・R・ミラー。モデルやアイドルとしても活躍する彼女の華やかな雰囲気は、こんな辛気臭い部屋にはいかにも不釣り合いで、違和感すら覚えるほどだ。
エマはその透き通った碧眼の奥に不審の光を宿らせ、親の敵とばかりに目の前に掛けている警察庁長官を睨み付けていた。
「・・・詳細をお願いします長官。私は先ほどの言葉に、何一つとして納得していません」
「簡単なことだよヒーロー”ウィング”。君たちはしばらくの間、軍部ではなくこの私の指揮下に入る・・・これは正式に国が決定した事だ。軍人である君たちに拒否権は無い」
淡々とそう話すダンに対し、エマは怒りの表情を浮かべて反論をした。
「私が聞いているのはその話ではありません! その前のお話です!」
怒りを顕わにするエマに同調するように、隣に立っているジェームズも深く頷く。
「彼女の言うとおりです長官。確かに私たちは軍人だ。上の言うことには素直にしたがいましょう・・・しかし、そうなるに至った経緯を詳しく知る権利くらいあるはずです・・・・・・親愛なる友人達の身に、何が起こったのか知る権利くらいはね」
その言葉を聞いてダンは深くため息をついた。
「だからもう話しただろう? ヒーロー ”ニンジャボーイ”と ”ガンマスター”の二名は消息不明だ・・・・・・奇しくも先日の”ヘル・ハウンド”が消えた件と同じように、全く情報が掴めないのだよ」
その言葉を聞いて、ジェームズは何かを考え込むようにしてから口を開いた。
「・・・彼らは”麻薬王”の目撃情報を受けて出動していた・・・それは間違いありませんね?」
ジェームズの問いにダンは静かに答える。
「その通りだ」
「奇妙ですね・・・私は麻薬王と直接戦った事がある。戦力的に、麻薬王セルジオ・バレンタインと戦って、あの二人が負けるとも思いませんが・・・仮に麻薬王が二人に勝ったとして、その後、二人の消息が掴めないのが腑に落ちない。アイツの性格なら、ヒーローに勝ったという事実を派手にアピールしそうなものです・・・」
「そうだな・・・そこが我々も腑に落ちない。そしてヒーローだけでは無く、一緒に出動した警察官まで一人残らず姿を消しているのも奇妙だ・・・かのジョセフ・ボールドウィンによる大規模テロに匹敵するような邪悪な何かが起ころうとしている。そんな気がするんだ」
そしてダンはゆっくりと立ち上がると二人のヒーローを見て口を開いた。
「力を貸してくれヒーロー達よ。平和の為には・・・やはり君たちの力が必要なんだ」