革命 2
戦乱の中、人をかき分けてセルジオを追うルーカス。それを妨害しようとする敵兵を、素早い当て身で片付けると、狭い部屋から外に転がり出た。
「おうおう、こっちで決着つけようやヒーロー」
セルジオがわざわざ声を出して、自分の居場所をルーカスに知らせる。そしてあざ笑うかのように、加速能力も使わずに階段を駆け上がって行く。
明らかに罠だ、しかし、だから何だというのだろうか。
「見え見えの罠だからって・・・このまま奴を逃すよりはマシだぜ!」
ルーカスは手元のライフル銃を握り直し、セルジオを追って階段までダッシュをする。勢いよく駆け上がり、屋上への扉を蹴り開けると、すぐに発砲できるように銃を構えた。
目の前には余裕の表情で仁王立ちするセルジオ・・・そしてルーカスに照準を合わせた無数の銃口と武装集団の姿だった。
「ウェルカムだヒーロー! オレ様からのプレゼントを受け取りな!」
セルジオが右手を上げて合図をすると同時に、武装集団が一斉に射撃を始める。
「っうぉおおぉお!?」
全力で身を翻して扉から離れるルーカス。一瞬遅れて無数の弾丸が、先ほどまで彼がいた場所を蜂の巣にする。
紙一重で回避できたが、聞こえてくるのは武装集団の足音。多勢に無勢、あの数とまともに正面から戦っては勝ち目はないだろう。
「クソッ、一旦引いて本隊と合流すっか」
◇
「ほらほら、さっさとヒーロー様を片付けてきな」
セルジオは大きなあくびをしながら、ぞんざいな態度で兵たちに指示を出す。ヒーロー”ガンマスター”を追う兵達の後ろ姿を見ながら、セルジオはフンッと鼻で息を吐き出した。
(つまらねえな、噂に聞くガンマスターの能力を使えば、この兵達なんて問題にもならねえだろうに・・・)
あらゆる銃器を自由に持ち運べるといわれるガンマスター。ロケットランチャーでも持ち出せば逆に自分たちを一網打尽にすることすらできただろう・・・しかし、彼のヒーローとしての不殺の信念が、今のこの状況を作り出している。
本当にくだらない。
持って生まれた恵まれた力を、下らない信念で自ら押し殺している。これだからセルジオはヒーローというやつが大嫌いなのだ。
わずかな苛立ちと供に息を吐き出した次の瞬間、彼の背後に出来た影から、ずるりと人影が姿を表す。
ヒーロー”ニンジャボーイ”ことケイゴ・タナカ。影から影に移動するその能力でセルジオの背後を取る事に成功したケイゴは、まだ彼に気づいていないセルジオを無力化するために、事前に準備していたスタンロッドを振り上げ・・・・・・そして自身の体が全く動かなくなっている事に気がついた。
「全く不用心ですよミスター・バレンタイン。私がいなかったらそのまま逮捕されていたでしょうに」
「おお、すまねえな新入り。助かったぜ」
セルジオと親しげに会話をする人物。屋上の物陰から出てきたその人物を視界に捉えたケイゴは、驚きのあまり息を呑む。
その人物は、身動きの全く取れないケイゴに歪な笑みを向けると、朗らかな表情で自己紹介を始めた。
「お久しぶりですな、ヒーロー”ニンジャボーイ”。特殊部隊”ヘル・ハウンド”隊長、レオン・レパード警部ここに参上いたしました」