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悪の臭気 2

 店主に案内されたのは店の奥。


 特別な客しか入れないその部屋に、奴はいつものように座っていた。顔の三分の一を占めるほど大きなサングラスをつけた、アジア人風の男性。


 どこか胡散臭いその男・・・リーと名乗る情報屋は、店主に連れられて入ってきたウルフの姿を見て、ニヤリと不敵に笑った。


「おやおヤ、久しぶりだねえ兄さん。噂には聞いているヨ。何でもあのジョセフ・ボールドウィンに致命傷を与えたらしいじゃアないかい」


 陽気なその言葉に、ウルフは不機嫌そうなうなり声を上げた。


「・・・・・・結局仕留めきれなかった。あれだけの邪悪を前にして仕留め損ねるとは・・・・・・不覚だ」


「ふふっ、実力的には大分負けていたんダ。致命傷を与えただけ、大金星だと思うケドね」


 ヘラリと笑いながらそんな事を言うリーを、ウルフは鋭い視線で睨み付けた。


「おおう、怖い怖イ。しかしアンタも運が良イ・・・ワタシの見立てじゃあ、当の昔に殺されていた筈だっタからね」


 言いたい放題なリーの言葉。


 しかしそれは事実であった。


 闇の組織をまとめ上げていたジョセフ・ボールドウィン。彼の集めた能力者達はいずれも強者揃い、いかにウルフが強力な力を持っていたとしてもまともにぶつかっては勝ち目がなかったのだ。今回彼が助かったのもたまたまに過ぎない。


「・・・そんな事はどうでもいい。情報を買いに来た」


「まア、そうだろうねェ。ワタシの所に情報以外の目的で来る奴の方がまれだ」


 シニカルな表情でそう言ったリーはゆっくりと立ち上がると、芝居がかった様子で両手を大きく広げる。


「さあ、何が聞きたイ? まあ、アンタはどうせ悪人の居場所しか聞かないのだろうケドね」


「悪人の居場所・・・か。今日は少し違うな」


「ほう? それは珍しイ」


 少し興味を惹かれたような声を上げるリー。そして邪魔だとばかりに店主に向かって振る。いくら場所を提供して貰っている店主とはいえ、情報料を払わない人間に話を聞かせたくはないのだろう。


 リーの横柄な態度に、しかし店長は何も言わず、軽く一礼すると部屋を去って行った。それを確認したリーは満足そうな表情を浮かべて口を開く。


「で? 欲しい情報っテ?」


「・・・・・・さっきニュースで見たのだが、警察の部隊がまるまる一つ失踪したそうだな」


「そうダねえ、不気味な事件ダ」


「しらばっくれるなよ情報屋。この事件の裏について聞かせろ。今日はそのために来たんだ」


 そしてテーブルの上に札束を放り投げるウルフ。リーはそんな彼を見て不思議そうな表情を浮かべた。


「何で警察の失踪事件なんて知りたいんダイ? アンタが欲しがる情報なんて他にいくらでもあるだろうニ」


「臭いだ」


「臭イ?」


「臭うんだよ・・・鼻の曲がりそうな邪悪の臭いだ」


 犬歯を剥き出して凶悪な表情を浮かべるウルフ。そんなウルフの言葉を聞いて、最初はキョトンとした表情を浮かべていたリーは、やがて堪えきれなくなったように笑い出す。


「ハハハッ! 臭いカ! それは予想外ダヨ・・・いいヨ、気に入っタ。アンタの望む情報をやろうじゃないカ」


 そしてリーはゆっくりとウルフの元へ歩み寄る。ウルフを見上げるようにして、ちょいとサングラスをずらすと、ニッコリと満面の笑みを浮かべる。


「付いてキナ、合わせたい奴がいるンだ」



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