表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/103

不穏な噂 5

 麻薬王セルジオ・バレンタイン。


 この警察ならば誰もが知るビッグネームの犯罪者を目の前に、レオンは一瞬驚くも、すぐにその顔に獰猛な笑みを浮かべた。


(・・・・・・素晴らしい。名誉挽回の機会が向こうからやってきてくれるとは! 先の大規模テロでヒーローが取り逃したこの男を捕まえれば、きっと長官も文句は言えまい)


 ペロリと薄い唇を舐めるレオン。相手は一人、ならばどれほどの強者であろうとレオンの敵では無い。

 能力 ”捕食者の眼光プレデターズ・ゲイズ”を発動する前に、レオンは一つ瞬きをした。


 ”捕食者の眼光”睨み付けた人間、一人の行動を完全に無効化することが出来るというもの・・・しかしその効果を発動するためには常に相手を見続けなくてはならず、瞬きをするだけで効果は解けてしまうのだ。


 故に能力を発動する前に瞬きを一つ。それは彼が長年行ってきた、謂わばルーティーンのような行動だった訳だが・・・レオンが再び目を開いたとき、目の前に座っていた筈のセルジオの姿は消えていた。


「な・・・奴はどこに・・・」


 レオンが部下に確認をしようと周囲を見回すと、さらに驚愕を顔に浮かべる。


 瞬きをしたのはほんの一瞬、その一瞬の間に周囲の部下達は皆、力なく地面に倒れていたのだから。


「こっちだぜ隊長さんよ」


 背後から聞こえる嘲るような声。勢いよく振り返ろうとするが、背中に受けた激しい衝撃で、レオンは無様に地面に転がった。


(蹴られた? ・・・クソッ、姿さえ視界に入れれば・・・)


 態勢を崩しながらも背後に視線を向けるも、すでにそこには誰もいない。 


 背後に人の気配。


 サッと振り返ると、視界いっぱいに広がる巨大な拳。顔面に叩き込まれる巨大な拳に、レオンは自身の鼻の骨が折れるのを感じた。口に広がる血の味、恐らく歯も折れているのだろうか?


 あまりのダメージによろよろと後ずさるレオン。しかし彼はニヤリと笑みを浮かべた。


「・・・・・・やっと捕らえたよ麻薬王」


 その眼は真っ直ぐにセルジオを捕らえている。

 




”捕食者の眼光”





 彼の眼光に射すくめられたものは、どのような強者であれ、その行動の一切を無力化される。


(勝った・・・やはりオレの能力は最強だ)


 勝利を確信したレオンは、腰にぶら下げていた警棒を手に取り、ニヤニヤと笑いながらゆっくりとセルジオの元に歩み寄る。


 次の瞬間、背後から乾いた破裂音が響き渡った。


 嫌に聞き慣れたその音を聞いて、レオンはその正体が銃声であるとわかる。それと同時に右足に走る激痛。自分が撃たれたのだと理解した。


 地面に崩れ落ちるレオン。痛みに顔をしかめながら銃声の方向に振り返ると、そこに居たのは今風のファッションに身を包んだ中性的な青年だった。


「今のが噂の能力か・・・うん、凄い能力だねレパード警部」


 そう言いながら青年は倒れたレオンのもとに歩み寄ってくる。その右手には彼を撃ったであろう拳銃が握られていた。


「でもね? 君の能力には弱点がある・・・それは君自身がよおくわかっているんだろ?」


 レオンの近くまで歩み寄った青年は、しゃがみこんでその目線の高さをレオンに合わせる。澄んだ藍色の双眸が、何かを見透かすかのようにレオンの顔を覗き込んできた。


「君の能力が効果を発揮するのは一人だけ・・・つまり敵が二人になった時点で君に勝ち目はない。それを補う為のヘル・ハウンドだ・・・まあ、セルジオに部下をやられた時点で君の負けは決まっていたようなものだね」


 そう言って笑う青年の顔は、ゾッとするほどの狂気を孕んでいる歪な表情を浮かべていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ