レオン・レパード
「・・・・・・ああ、朝か・・・」
甲高い音を響かせる目覚まし時計の音でレオンの意識は覚醒する。目覚めの良い彼はスッと自然な動作でベッドから上体を起こすと枕元の目覚まし時計を止める。
起き上がり、顔を洗おうと洗面台の前に立つ。ふと顔を上げると、少し垂れた自分の目が(目という部位は彼にとって特別な意味を持っていた)こちらを見返してくるのが見えた。
「・・・フフッ・・・・・・フフフフフッ」
思わず笑みがこぼれ出る。
レオンはずっと自分の立場に不満を持っていた。
今レオンを見返している少し垂れたブルーの瞳。神のごとき超能力を持ったこの瞳を持ちながら、彼はただの警察官という地位に甘んじていたのだから。
『捕食者の眼光』
レオン・レパードの持つ自称神の能力。
能力を発動させた時、その瞳が捕らえた対象の動きを止める事が出来る。
相手を問答無用で無力化できる。非常に強力で、悪人を捕らえる警察官という職業にぴったりな能力だといえるだろう。
しかし彼の能力が日の目を見ることは無かった。
国の定めた新たな法により、公共の場で能力を使うことが禁じられたのだ。それは警察官であるレオンも例外でなく、何故か許可がおりたのは軍部所属のヒーロー部隊とかいうふざけた連中だけだ。
何かがおかしい。
間違っている。
ずっとそう思い続けていた。
街の平和を守っているのは軍ではない。警察の筈だ。ならば能力の使用が許可されるのは警察の人間でなければならない筈・・・。
そしてその思いは叶えられたのだ。新たに任命された長官によって。
警察の対能力者用部隊”ヘル・ハウンド”
その指揮官にレオンが任命されたのは必然といえる。
悪人を無力化するという事柄にかけて、彼の能力は他の誰よりも優れていたのだから。
「フフフッ、感謝しますよアームストロング長官」
神の瞳を持つ男は一人、自分の時代の訪れを感じて静かに微笑むのだった。
◇