リーダー代理
「よおリーダー、起きてるかい?」
そう言って病室の扉を開けるのは、ヒーロー”ガンマスター”ことルーカス・スミス。
「ルーカスか。ああ、起きているよ・・・とはいえ、まだ起き上がれるほど回復はしていないから暇なものだけどね」
ベッドの上でそう言って微笑んだ”ミスターT”、ジェームズ・ウィルソン。ジェームズはいつものように満面の笑みを浮かべているが、全身に包帯が巻かれたその姿は痛々しかった。
(・・・まあ、リーダーが生きていてくれて本当によかったよ)
ルーカスは心の中でそう呟くと、お見舞い用に持ってきた花束をベッドの側にある花瓶に活ける。鮮やかな色の花が無機質な病室をわずかに明るくした。
「回復までどれくらいかかりそうなんだ?」
ルーカスの問いに、ジェームズは難しい顔をして口を開いた。
「・・・すぐに復帰という訳にはいかないだろうな。しばらくは療養が必要そうだ。何せ全身に酷い火傷を負っているからな・・・この病院に治療系の能力者がいなければそのまま死んでいた可能性もあった」
「・・・アンタが生きていてよかったよ、本当に。今アンタの代わりにリーダーの代理って奴をやっているんだが・・・どうにもオレには柄に合わん」
「そんなことないだろう? 君なら何でもそつなくこなすだろうさ」
そしてしばらく談笑をした後、ルーカスが何かを思い出したかのように話し出した。
「そういえば最近のニュースは見てるかいリーダー?」
ルーカスの少しシニカルな表情を見て、付き合いの長いジェームズは彼が何の事を言っているのかを察した。
「ああ、見ているよ。入院生活は思いの外暇なモノでね・・・君が言いたいのは例の新しい長官の話しだろう?」
「流石はリーダー、話しが早いぜ。そんで、例の新長官についてアンタの意見を聞きたいんだが」
「レパード長官か・・・私は以前彼と話しをしたことがあるのだが、冷酷なようでいて、その実正義感の強い熱い男だったよ」
「・・・へえ、意外だね。しかし警察に超能力者の部隊をつくるってのはどうなんだろうな」
ルーカスの言葉にジェームズは難しい顔をした。
「・・・彼の言わんとしていることはよく理解できる。確かに強力な能力者による犯罪が激化する中、ヒーローだけでは手が回らなくなっている事は事実だ」
「じゃあリーダーとしては新長官に賛成かい?」
「・・・・・・そんな単純な話しではない。確かに警察に超能力者の部隊をつくる事のメリットは大きい・・・しかし、手が回らないからといって単に数を増やせばいいというモノではないんだ。”超能力”は協力故に危うい・・・使い方によっては銃器すら凌駕するほどに。
銃器を扱うには免許がいる・・・だが超能力に関しては歴史が浅い故にきちんとした法律が定められていないんだ。だからこそ公に能力を使うことのできる人間は慎重に選ばなくてはならない」
「・・・なるほどね。新長官の考え方事態には賛成でも事を急きすぎているってアンタは思っているのか」
「その通りだよルーカス。例え警察の内部から選ぶのだとしても、正義の番人である警察官が必ずしも自身の能力を律しきれる精神力を有しているとは限らないのだから」
そしてジェームズは静かに窓の外を見た。キラキラと眩しいほどの日差しが窓の外の街へ降り注いでいる。
「・・・・・・何にせよ、賽は投げられた。上手くいくように祈るしかないな」
◇