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抑止力

「大人しく投降しろ! もう逃げ場はないぞ!」


 相手に警告を発しながらジリジリと一人の男を包囲していく複数名の警官達。一対多数の圧倒的優位な状況・・・しかし警官達の顔には油断の欠片も無く、張り詰めた表情をしていた。


 何故なら目の前の男は攻撃型の超能力者・・・力によっては人数の有利など一瞬で覆ってしまうだろう。


 男もそれはわかっているようでニヤリと余裕な表情で笑うと何故かその場で上着を脱ぎ捨てた。


「・・・っ!? 動くな! 撃つぞ!」


 何かの能力を使う予備動作だと感づいた警察官が銃口を男に向けるが時既に遅し、男が体をぶるりと振るわせると、その体から周囲に何かが噴出された。


 咄嗟に両腕で顔をカバーする警官。一瞬遅れて突き出した両腕と右太ももに鋭い痛みが走り思わず悲鳴を上げてその場に倒れる。


 あまりの痛みに涙を流しながら腕を見るとそこには巨大な針のようなモノが深々と突きささっていた。


「不用意に俺を取り囲んだのは間違いだったなポリ公!」


 ヘラヘラと笑いながら倒れた警察官を見下ろす男。


 恐らく上半身から強靱な針を飛ばす事のできる能力・・・確かにうかつに取り囲んだのは失敗だったのかも知れない。警官はそっと唇を噛みしめた。


 悔しそうな様子の警官を見てさらに上機嫌になった男はトドメをさそうと能力を発動させ・・・その瞬間、何者かの集団がこちらに向かってくる足音に気がついた。


 それは警官の増援のようだった。先ほどの倍ほどの人数が男の元へ向かってくる。


 そして、ソイツは警官達の後ろからゆっくりと現れた。


 一部の隙も無くきっちりと着こなされた警察の制服。見事なブロンドの髪はたっぷりの整髪料でなでつけられ、少し垂れた目が見下したように男を睨め付ける。


 警官の数は先ほどより多い・・・しかし男の能力は多対一を得意とするもの。数が倍に増えたくらいで男の優位は揺らがない。


 ニヤリと笑った男が再び能力を発動しようとし・・・そして自分の体が全く動かない事に気がついた。

 警察官を従えたソイツは動けなくなった男を見て馬鹿にしたような表情を浮かべる。


「ふんっ・・・犯罪者風情が我々に逆らうからだ」


 そしてソイツ・・・レオン・レパード警部は動けない男に向かってゆっくりと歩み寄ると、不意に拳を握り締めて思い切り男の顔面を殴りつけた。


 動けない男は受け身も取ることが出来ずに無様に地面に転がる。


「お前は! いつまでも! 我々が! 能力を使うこと無く! 貴様らのようなウジ虫共と相対するとでも! 思ったか!?」


 一言一言怒気のこもった声を発しながら連続して男を蹴り続けるレオン。しかし言動とは裏腹に、まるで動くことの出来ない相手をなぶることに快感を感じているかのようにその表情は晴れやかであった。


「オレが・・・オレたちこそが正義だ!」


 狂ったように高笑いをする男・・・レオン・レパード警部。


 彼こそが警察という組織に新たに生まれた能力者集団の長・・・警察の新たなる抑止力なのである。





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