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決戦 12

 その気迫に当てられたケイゴは思わず相手の生死を考えずに銃を乱射してしまう。放たれた銃弾はしかしジョセフの体に届く事無く、現れた分厚い炎の壁によって阻まれる。


「あぁあああぁあ!!」


 ジョセフは奇声を発しながら腕を振るった。その動きに呼応するかのように彼を囲んでいた炎の壁が動き、一つの塊となって銃を構えたケイゴに襲いかかる。


「っ!?」


 近距離で放たれた巨大な火の玉。逃げ場は無い。


 ケイゴは息を止めると攻めてもの抵抗として両手で顔をガードしてうずくまる。


 圧縮された炎の塊は質量を持ってケイゴの小さな体を吹き飛ばし、ポーンと宙に放り出されたケイゴはそのまま窓を突き破って建物の外へと落ちていく。


(マズい・・・この高さから落ちたら・・・流石に死ぬ・・・)


 全身が焼け焦げた痛みで意識が朦朧とする中、ケイゴは自信の絶体絶命な状況を打破する可能性を必至に探った。


 祖父より渡された道具での状況回避は無理そうだ。カギ縄も先ほど使用して無くなってしまった。


 受け身を取っても助かるような高さでは無い。


 ならば・・・。


(限りなく低い確率だけど・・・自分の超能力に頼るしかない・・・か)


 ケイゴの能力は短時間影の中に潜り込み、影から影へと移動する能力。今回はこの能力を利用して着地の瞬間に地面に出来た自分の影の中に潜り込む。


 成功するかはわからない。


 そもそも高所からの落下の衝撃を影の中に入ると殺せるのかも知らない。


 だけどこれ以外の方法がどうにも思いつかなかった。ならば何も足掻くこと無く死んでしまうよりは幾分かマシな選択の筈だ。


 閉じてしまいそうになる重い瞼を必至に開く。能力の発動時間はかなり短い・・・発動のタイミングを誤ってはいけない。それは即ち自身の死を意味する。


 だんだん迫ってくる地面。


 ドクドクと高鳴る鼓動。


 すぐにでも能力を発動してしまいそうになる恐怖心をグッと押さえつけ、地面との距離を必死に計る。


(・・・・・・今!)


 能力を発動。


 まさに体が地面に衝突しようとしたその瞬間、自身の影にその体が吸い込まれた。


 影の中に潜り込んだときに訪れる慣れた浮遊感。・・・どうやら落下の衝撃は上手く殺せたようでまだケイゴは生きていた。


 のそりと自身の影から体を出す。


 しかし高所落下でのダメージは免れたものの巨大な火の玉をぶつけられたダメージは非常に深刻だ。


 荒い息を吐き出しながら視線を上げると、頭上から何かがゆっくりと下りてくるのが見えた。


「やはり生きていたかニンジャボーイ。それでこそ正義のヒーローだ」


 炎の塊を翼のように成形し背中に付けたジョセフがゆっくりとケイゴの目の前に降り立った。炎の翼で飛べる訳ではないだろうが、それでも空気の抵抗を受ける面積を増やしてパラシュートのように落下のスピードを落とす事くらいならできるのだろう。


 ケイゴは歯を食いしばってゆっくりと立ち上がった。


 肉弾戦がメインのケイゴが動くことも満足に出来ないほど負傷している時点で勝ち目は無い・・・しかし諦める訳にはいかなかった。


 ジョセフが言うように、彼は正義のヒーローなのだから。


「その意気や良し・・・ヒーローよ、せめて私の手で屠ってあげよう」


 ジョセフはそう言って背中についていた炎の翼を自身の右手に纏わせた。煌々と燃えさかる炎の熱気がケイゴまで伝わってくる。


 今にもケイゴの命の灯火が消えようとしたその瞬間、勝ちを確信していたジョセフの背後から獣のうなり声にも似たかすれた声が聞こえた。


「邪悪・・・滅ぶべし!」



 

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