決戦 6
「ウィング、怪我の状態はどう?」
戦闘を終えたケイゴが物陰に隠れていたエマの下に駆け寄る。エマはその綺麗な顔をしかめながら怪我の状態を報告した。
「・・・致命傷ではないわ。携帯の治療パックは持参しているから応急措置はできると思うけど・・・残念ながらこれ以上の戦闘は無理そうね」
誰よりも正義感の強いエマだ。ここでの脱落は相当悔しいのだろう、唇を噛みしめて鋭い眼光でケイゴに向き直った。
「・・・後は頼んだわよニンジャボーイ」
その言葉にケイゴは正義のヒーローとしての強い意志を感じ、無言で力強く頷いた。くるりと身を翻して警察庁の建物の中へと入っていくケイゴの背中を静かに見送りながら、エマは消え入りそうな声でポツリと呟いた。
「・・・・・・また私は戦力外・・・か」
◇
走る
走る
走る
建物の中には重装備に身を包んだ兵達が構えていたが、ケイゴが祖父から習ったのは日本の古武術の流れを組む暗殺術。隠密行動はケイゴの最も得意とするところだ。
本来なら武装した兵達の相手もするところだが、今は時間が惜しい。影を移動する能力も使用しながらケイゴは兵達の目をすり抜けて驚くべきスピードで建物の最上階、長官室へと向かう。
(・・・見つけた。あの扉か)
やがて彼の目の前に現れるのは長官室の扉。背負った刀をするりと抜き放ち、ダッシュの勢いで扉を思い切り蹴り開けた。
「ミスターT! 無事ですか!?」
しかし部屋に飛び込んだケイゴの目の前に広がっていたのは悪夢のような光景。
エラそうに深々と部屋の真ん中にある椅子に腰掛けている安物のハロウィンマスクを被ったスーツ姿の男と・・・その足下に転がっている焼け焦げたジェームズの姿。
「やあ、初めましてニンジャボーイ。君も試練を無事くぐり抜けてここまでやってきたようだね」
ゆっくりと立ち上がるスーツ姿の男。
その異様な迫力にケイゴは無意識のうちに一歩後ずさる。
「私の名前はジョセフ・ボールドウィン。君たちヒーローの敵だ」