決戦 4
ケイゴはエマにだけ聞こえるような音量でその作戦内容を簡潔に伝える。ソレを聞いたエマは半信半疑で頷きながらケイゴに問いかけた。
「・・・わかったけど・・・できるの? それ」
「やったことは無いけど・・・理論上は問題ない筈だ」
緊張した面持ちのケイゴを見てエマはフッと表情を和らげる。
「いいわ、他に手も考えつかないしやってあげる」
そしてバサリと翼を広げて飛び上がった。
エマは十分な高度まで上昇するとショットガンを構えているパワーを目がけて急降下を開始する。
ショットガンを所持している相手に対してそんな直線の動きをしたのなら普通は格好の的になってしまう。しかしそうはさせまいと地上のケイゴが懐から取り出した何かをパワーに向かって投擲した。
古来より日本に伝わる投擲用の暗殺武器。所謂手裏剣と呼ばれるそれは、ケイゴの熟練の技術によって狙った場所と寸分違わずに飛んでいき、風車方の刃がぐるぐると回転しながらパワーに向かって襲いかかる。
ケイゴが連続して投擲した手裏剣の数は5つ。
逃げ道を塞ぐようにして四方に散らされた手裏剣を全て回避するのは至難の技。しかしパワーが取った行動は思いも寄らぬものだった。
何と唸りを上げて襲い来る手裏剣を無視してそのまま急降下してくるエマにショットガンの銃口を向けたのだ。
当然手裏剣はパワーの胴体に突きささるが、彼の強靱な筋肉によって刃が阻まれて期待していたほどのダメージは期待できそうにない。パワーはニヤリと笑うとそのままショットガンをエマに目がけて発砲した。
銃口を向けられた瞬間に慌てて急旋回するエマ。しかし無情にも回避は間に合わず、散弾の一部が右足に着弾。エマは悲鳴を上げながら墜落した。
「ハッハァ! 無様ね小娘!」
エマを嘲ったパワーはちらりとケイゴがいた方向を確認する。
「・・・いない?」
先ほどまでケイゴが居た場所に誰もいなくなっている。それを確認した瞬間、パワーはぞくりとするような殺気が足下から発せられるのを感じた。
「隙あり!」
ヌルリと足下の影から上体を出したケイゴが手にした刀をくるりと反転させて所謂峰打ちの上体で強かにパワーの顔面に叩きつけた。
いくら峰打ちとはいえ鉄の棒で顔面を強打されて無事な筈も無く、パワーは鼻血を吹いて派手に倒れる。
ケイゴの能力は影から影への移動能力。
しかしその移動可能な距離は短い。遠くにいる敵の影に入ることなど不可能なのだ。
ならばどうするか?
簡単な話だ。誰かの影に潜り込み、目的の場所まで運んで貰えば良い。
手裏剣はただの目くらまし。手裏剣を投擲した後にケイゴは飛び上がったエマの影に潜り込み、パワーの足下までエマと供に移動していた。
「ボクたちの勝ちだ!」