決戦
「いたぞ! 殺せ!」
鋭い声と供に乱射される銃弾の嵐。
ジェームズは横っ飛びに射線から外れると近くにあった扉を蹴破って何の部屋だかわからない部屋の中へと逃げ込んだ。
ここは警察庁の内部。
駆けつけたジェームズを待ち受けていたのは最新式の重装備に身を包んだ武装集団であった。
「くっ・・・重装備の兵を相手にこちらは丸腰に近いとは・・・ヒーローとは何とも難儀な仕事だな」
そう呟きながらジェームズはくぐり抜けた入り口の側に素早く陣取った。ジェームズを追うようにして入ってきた敵兵を奇襲の一撃で昏倒させる。
そしてくるりと身を翻すと背後の壁に向かって駆け寄り、跳び蹴りの一撃で壁の大穴を開けて隣の部屋に転がり込んだ。
遅れるようにして先ほどまでいた部屋に銃弾が撃ち込まれる音が響き渡った。最初の突入者がやられるのを見た他の兵が壁越しに銃弾をばらまいているのだろう。
いちいち全員を相手にしていたら体力が持たない。ジェームズは呼吸を整えると一気に駆けだした。
目指す場所は決まっている。
悪人の親玉という奴は決まって高い場所に行きたがるモノなのだ。
「やあ、いらっしゃいヒーロー ”ミスターT”・・・試練を超えて最初にここにやってくるのは君だと思っていたよ」
血だらけのジェームズが転がり込んだ先は警察庁の長官室。そこで彼を歓迎するように両手を広げた男は安物のハロウィンマスクを顔に被った痩せぎすの男だった。
「・・・貴様が今回のテロの元凶か」
ジェームズの言葉に何故かそのマスクの奥に見える瞳を嬉しそうに輝かせて男・・・悪の頭領、ジョセフ・ボールドウィンは立ち上がる。
「その通り。そして同時に的外れだヒーローよ。”今回のテロ” では無い。今までに起こっていたこの街の能力者による犯罪行為・・・そのほとんどの元凶が私だ」
ジョセフのその言葉に、ジェームズはキッと顔を引き締めた。
「なるほど・・・ならば正義のヒーローとして余計に貴様を倒さねばならぬようだ」
ヒーロー・・・正義の体現者。
目の前で奮起する憧れ続けた正義の味方の姿にジョセフは嬉しさのあまり身震いをした。
「素晴らしい・・・素晴らしいぞミスターT! 君こそが私の思う正義の味方に最も近い男だと前から思っていたよ」
「貴様の思う正義の味方・・・だと?」
「その通り! そして正義の味方よ! 君に、君にこそ問おう!」
柄にもなく興奮したように一歩詰めよるジョセフ。
その異様な迫力にジェームズは思わず一歩後退した。
「君にとっての正義とは何だ?」