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ハンマー

「しっかしオレの相棒はどこに行ったのだろうねぇ? 現場についたら一人だったから少し腹が立ったよ」


 ねっとりと耳に残るようなしゃべり方でそう言いながら、ハンマーと呼ばれる男はだらりと脱力したような歩き方で歩み寄ると、目の前に倒れている人物の頭を鷲づかみにして怪力で無理矢理体を引き上げた。


 頭を掴まれた人物は苦痛のうめき声を上げる。


「やっぱり外から引っ張ってきた奴ってのは信用ならねえな・・・なあアンタもそう思うだろう? ヒーロー ガンマスターさんよ」


 そう言ってハンマーは掴んでいた頭を離すとふらりと揺れた体に蹴りを叩き込んで再び地面にダウンさせる。


 蹴り飛ばされた男・・・ヒーロー ”ガンマスター” ことルーカスは激しく咳き込みながら地面にフラフラと立ち上がった。


 爆破テロの報を受けて先に出動していた警察の部隊は目の前の凶悪な能力者の手によってすでに壊滅している。その謎の能力によってヒーローの中でも屈指の制圧力を持つルーカスも今まさに敗北寸前まで追い詰められているのであった。


(・・・クソッ、あの能力の正体がつかめない事にはどうしようもねえな)


 ボロボロの体に鞭打ってアサルトライフルを構える。そんなルーカスの様子を余裕の表情で見ていたハンマーは何やら嬉しそうに笑い声を上げた。


「ハッハァ! いいねヒーロー! まだやるのかい」


 周囲に一般人の姿は無い。故に遠慮無く銃をぶっぱなそうとルーカスが引き金に指をかけたその瞬間、ソレは起こった。


 後頭部から感じる謎の衝撃。まさにハンマーで殴られたかのような強烈なそれをまともに受けたルーカスは目の前が一瞬白くなるのを感じた。


 あまりの衝撃に銃を取り落としてフラフラと揺れるルーカスを目がけてハンマーが駆け寄る。繰り出された膝蹴りがルーカスの腹部にクリーンヒット。プロテクターで全身を固めているとはいえそのダメージは大きく、ルーカスは体をくの字に曲げる。


「シャアァ!」


 甲高い叫び声と供に繰り出された回し蹴りがルーカスのこめかみにヒット。再び地面に倒れた彼の無様な姿をハンマーはニヤニヤと笑いながら見下ろした。


(・・・厄介な能力だ。ヘルメットで頭を防護していたからここまで持ちこたえられているものの、もしノーガードだったなら最初の一撃でノックアウトだぜ・・・)


 あの謎の衝撃はどのタイミングでくるのかわからない以上防ぎようが無い・・・警察の部隊を一人で制圧した事から推測するに、あの衝撃を複数同時に発動させる事もできると考えてもいいだろう。


 ズキズキと痛む頭を押さえながら敵の戦力を分析していると、ニヤニヤと笑っていたハンマーが口を開いた。


「情けねえなヒーロー。第一ステージでこんな様じゃあ本命の場所に行く事なんざできねえぜ?」


「ほん・・・めい?」


「おうよ。今テメエらは試されてんのさウチのボスによ。もしここから奇跡の大逆転を起こしてオレに勝つことができたなら・・・警察庁に向かうといい、そこでオレらのボスが待っているからよ」


 ハンマーの言葉にルーカスは戦慄する。


 警察庁に爆破テロが起こったという知らせは聞いていない。つまりは二カ所での爆破テロ、さらに監獄での囚人達の解放すらフェイクだという事・・・そんな大規模な事ができる敵の組織の巨大さに背筋が氷るような感覚を覚えたのだ。


 止めなくてはならない。


 少なくとも目の前にいる敵にこれ以上手こずっている訳にはいかなかった。


 ルーカスは全身の気力をかき集めて立ち上がる。

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