メグ
「やあエマ。君はアイドル活動で急がしかったから伝えるのが遅れちゃったけど・・・最近クイックリー警備と警察庁が互いに結びつきを強める為に相互研修を行っているのは知ってるかな?」
戸惑った様子のエマに説明するために椅子に座っていたリーダーのジェームズが立ち上がってメグと名乗った女性の隣に並んだ。
「相互研修・・・ええ、話は聞いています」
新聞で話題になっていた話だ。
大きな会社とはいえ、クイックリー警備はあくまでも民間会社。そんな組織と警察が表立って組織的なつながりを持つというのだから世間はざわめいた。
先日起こった能力者による警備会社の本社へ殴り込みをかけられるというあり得ざる事件。その事件を経て立ち上がったクイックリー警備の若き社長ジョセフ・ボールドウィン氏の熱意に押されての事だというが・・・世論は賛否両論だ。
凶悪な能力者による犯罪が絶えない今、今までの常識を打ち破って平和のために新たな態勢を作ろうという姿勢はエマとしては好ましいモノだった。ヒーロー活動をしていても常に人手が足りないと感じていたからだ。
「メグさんはその相互研修の一環として来ていてね・・・本来なら警察と我々ヒーローは全く別の組織なのだが、警察署長とウチのトップそれから例の警備会社の社長の三人で話し合いを持った結果、街の安全をより強固なモノにするためにはウチの部隊にも研修者を回した方が良いという結論が出たみたいだ」
「そういう事です。改めましてエマ・R・ミラーさん、私はクイックリー警備所属のメグ・アストゥートです。短い期間ですがよろしくお願いしますね?」
そう言って彼女は薄く微笑みながら手を差し伸べてきた。
綺麗な女性だ。
もちろんエマだってアイドルとして活動している以上、その容姿で負けているとは思わないが彼女は何というかエマと違った大人の色気が感じられるのだ。キラリと知的に光るノーフレームの眼鏡や、タイトなビジネススーツの上からでも感じられる豊満な肉体がエマに無い魅力を持っていて何か不愉快だった。
「・・・よろしくお願いします」
握り締めた掌から伝わる力が思っていたより強くて驚く。
(何か体を鍛えているのかな?)
そう思った次の瞬間には手がパッと離された。
「さて、挨拶も済んだことですし仕事に移りましょうか皆さん」
何故か仕切りだしたメグの顔にはニヤリと不敵な笑みが浮かんでいるのだった。