表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/103

復帰

「皆様ご迷惑をおかけしました。ヒーローウィング、本日から任務に復帰致します」


 ピシリと敬礼をしながら復帰の挨拶をするのは美しき女ヒーロー、エマ・R・ミラー。


 どうやら任務で負った怪我は完全に癒えたようで、すぐに戦線に復帰しても問題無さそうだった。


「おかえりエマ。ずっと待ってたよ」


 そう優しく微笑むのはチームのリーダー、ミスターTことジェームズ・ウィルソンだ。その厳つい顔には太陽のような輝かしい笑みが浮かんでいる。


「ケイゴもいねえし最近は大変だったんだ。エマが戻ってきたなら少し楽になるかね」


 隣でそう呟いた黒人男性は読んでいた本をぱたりと閉じた。


 ガンマスター、ルーカス・スミスもニヒルな笑みを浮かべてエマの復帰を歓迎する。


「ケイゴ先輩が・・・いない・・・ですか? 私より早く退院したと聞いておりますが何かあったのでしょうか?」


 エマの疑問にジェームズが答える。


「ん? ああ、エマは知らなかったね。今ケイゴは有給を取って田舎の祖父の家に行っているようだよ」

「祖父の家に・・・何故このタイミングで?」


 休暇を取るにしてもタイミングというものがあるだろう。


 少なくとも任務の失敗が続いて世間一般のヒーローの評価が下がってきている今取るべきでは無い。


 しかし憤慨した様子のエマをジェームズが宥めた。


「まあまあ、それはケイゴ自身も分かっているさ。彼が祖父の家に行ったのは遊ぶためじゃない。修行をするためさ。前回の任務を通して自分の力不足を思い知ったらしい」


「修行・・・ですか?」


 訝しむエマにジェームズは微笑みかける。


「ああ、ケイゴの祖父、ケイゾウ・タナカ氏は日本で高名な古流武術のマスターみたいでね。ケイゴに近接戦闘術を教え込んだのも氏だという。今回の休暇はケイゴに取って師に鍛え直して貰うという目的の為だろうね」


 その説明を聞いてエマは納得する。


 前回の任務で力不足を感じたのはエマも同じだからだ。ケイゴもそう感じて修行を行っているのなら・・・何か先を越されたようで少し不快だった。


 確かに一緒に任務を行う事で、以前彼に対して感じていたような感情は無くなった。ケイゴが地味だが堅実で的確な仕事を行う実力のあるヒーローだと理解したからだ。


 しかし同時に負けたくないという思いも大きくなった。


 何せ同じ年齢のヒーローなのだ。ライバル視するのも当然と言える。


 その実力を認めたからこそ負けたくない、絶対に自分の方が素晴らしいヒーローになってみせるという思いはエマの中で強くなった。


 そんなエマの心の葛藤を見抜いたのかジェームズは突然エマの頭をワシャワシャと力強く撫でた。


「!? ジェームズさん何を・・・」


「焦ることは無いよエマ。君はまだ新人じゃないか。未熟だと言うことはこれから強くなれるという事でもある・・・ゆっくりやっていこう。少なくとも私は君の成長をゆっくり見守る気でいる」


 その言葉にハッと気づかされる。


 ケイゴにあってエマに足りないモノ・・・それは実戦経験の差だ。ならばこの気をチャンスと捉えるべきだろう。彼が祖父の元で修行している間にエマは実践で足りないモノを学ばせて貰う。


「うん、いい目になったね。これなら安心だ。今はケイゴがいないからエマはルーカスとバディを組んで貰う。彼は軍歴が私より長いから色々と学ぶところはあると思うよ」


 ジェームズの言葉に頷いたエマはルーカスの目の前に行き、挨拶をした。


「よろしくお願いします。ルーカスさん」


「おう、よろしくな嬢ちゃん。まあ気楽にやろうや」


 ルーカスはニヤリとニヒルに笑うのだった。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ