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加速

「セルジオ! お前は能力持ちだという噂があるがこの数に包囲されてはどうしようも無いだろう! 大人しくお縄につくんだな」


 銃を構えてじりじりと間合いを詰めてくる警察官をちらりと見て、セルジオは大きくため息をついた。


「あーあ、俺様が一番テンションの下がる事しやがって本当に・・・この人数で武装したら捕らえられると思ったか? やってみろよポリ公」


 セルジオは足を肩幅に開いて先ほど声を上げた警察官に向き直り、炎のタトゥーが印象的な鋭い眼光で睨み付けた。


 もともと大きな彼の身体がさらに巨大になったかのような威圧感。銃を向けた警察はぶるりとその身を震わせて、しかしそれに呑まれまいと大きな声を上げた。


「動くな! 次に動いたら発砲する!」


「ああいいぜ。もしテメエらに俺が見えたらな?」


 次の瞬間、何故かセルジオは警察官の目の前にいてその巨大な拳を振り上げていた。指に付けたドクロを模した銀の指輪がギラリと光る。 


 振り下ろされた拳は呆気にとられた警官の顔に突きささり、肉を打つ鈍い音と供に警察官はその場に崩れ落ちた。


「!? みんな囲め!」


 他の警察官が急いでセルジオを包囲するが、次の瞬間には彼の姿は皆の前から消えている。キョロキョロと周囲を見回していると廃工場内にいくつか放置されていた機材の上から声が聞こえた。


「無理無理、お前らじゃ俺様は捕らえられねえよ」


 見上げると、巨大な機材の上であぐらをかいて警察を見下ろしているセルジオの姿。


「俺様の能力 ”誰も俺を捕らえられない”(アクセラレート)は物体を加速させる能力。テメエらみたいなウスノロには触れることさえかなわない王者の能力だ」


 突如自分の能力を語り始めたセルジオ。よほど自身があるのだろうか、その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。


 加速能力。


 先ほどまでの攻防を見るに視認すら難しいほどの速度での移動を可能にするのだろう。


 凄まじい能力だ。彼の言うとおり、これだけの数を揃えても戦闘向きの能力を持たない一般の警察官では相手にならないだろう。


 餅は餅屋。能力者には能力者だ。


 そしてその男は颯爽と現れた。


「ヒーロー ”ミスターT” ここに参上!」


 腹の底に響くバリトンボイス。


 ミスターTことジェームズは鋭い目線で機材の上に腰掛けるセルジオを睨み付けた。


「おやおやこれは驚いた。ご多忙なヒーロー様の登場か。ここにゃ観客はいねえからポイント稼ぎはできねえぜ?」


 軽口を叩きながらひょいと機材から飛び降りるセルジオ。


 音も立てずに着地するとゆっくりと歩み寄り、至近距離まで接近してジェームズとにらみ合う。


 こうして並んでみるとセルジオの身長はかなり大きく、186センチあるジェームズより一回りは大きいようだ。


「警察の皆さんは他の男達を捕まえた後この場から離れて下さい・・・この男は私が拘束します」


 ジェームズが警察に声をかけるとセルジオの口角がニヤリとめくれ上がった。


「タイマンなら勝てるとでも?」


「もちろんそのつもりだが?」


 ぶつかり合う互いの視線。


 戦いが、始まる。

  

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