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シツ記  作者: こここ
8/11

タルト

「心配するな。俺がちゃんと送っていってやるさ」

困惑する笹屋に鶸は任せておけと笑う。

(そうだ、辻井と川野の元へ行く途中だった)

手招きをされて他人の家から出ると鶸は何故かもと来た道を辿っていく。

「これだと駅に戻ってしまいます」

袖を掴んで引き留めた。

すくっと伸びた背は街路灯の光と暗闇の中間で立ち止まる。

一重の目が静かに見返している。

迷いもなしに真っすぐに立っていられる男が今更恐ろしく感じた。

俯くと、掴んだ袖にできた皺を見つめた。

緩い風が足元を掬うように抜けていく。

「未だ俺を送っていこうというのか」

「いや、友人の家に」

「行ってどうする?キボネに捕らえられているのに」

嘲笑を含んだ声は驚愕の事実を伝えた。

「諦めな。じきに喰われる」

平然と言い放つ鶸に笹屋はすがりついた。

「助けてくれ」

自分の不甲斐なさを情けなく思う余裕すらない。

(喰われるって何だ、あの気色の悪いものに辻井と川野が?)

この暗い夜道は違う世界だと最早認めるしかなかった。

笹屋一人で駆けずり回っても二人を救うことはできない。

おかしな事にそこだけは冷静な判断ができた。

いきなり手首を掴まれ引き寄せられる。

人工的なほどに整った容貌が今にも頬が重なりそうなくらいに間近にあった。

「晶彦一人なら桃の礼がある、だが友人とやらは別口だ。対価を貰わねば、こちらとしてもやれないな」

「じゃあやって下さい」

「対価が何か聞かないのか」

「聞くと、もしかしたら、ためらうかもしれない。だから聞きません」

ゼリーでは駄目なのだろうなと一瞬考えていたら、鶸が「もう桃いらんぞ」と釘を刺してきた。

手を離した鶸は先に立って歩き出した。

慌てて横に並ぶと横眼で笹屋を見て黙ったまま笑みを浮かべた。


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