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ある雑誌記者の記録1-2
リフォーム済
端末機に表示させるのではない正真正銘の紙の写真だ。
興味をそそられてついつい視線を動かしてしまった。
悪い癖だ。
荒れ果てた街の中を兵士が歩いている。
それを見て私は即座に眼を閉じた。
「だからSさん、もう辞めたんだよ。今俺が書いているのは映画評論だ」
「知っているよ」
じゃあ何で見せた?
こうなると腹をくくるしかないと分かっていたが、S氏に対して恨みがましい気持ちはなくならない。
「聞くだけじゃなかったのか?」
「じゃあ、見るだけ、聞くだけ」
私の稚拙な嫌味に図太い神経を持つS氏らしい返答だ。
それだけでは決して終わらないだろうに。
私は溜息をついて再び写真へ視線を移した。
三日前に北部で大規模な作戦が行われたのは知っている。
その時のものかと尋ねると首を振る。
「そういう話じゃない。よく見てくれ」
砲撃を受け崩れ落ちるビルディングの間を歩く灰色の兵士たち。
火薬の匂いがふいに鼻先を過ぎる幻覚に見舞われた。
現在私がいる状況から比べたら遥かに衝撃的な写真ではあるが、これだけでは世間に何か訴えるという力はないと私は判断した。
事件性に欠けるのだ。
言ってみればただ精悍な兵士の写真である。
政府の宣伝写真くらいにはなるかもしれない。
北部との戦争状態は長く、私たちはこの状態に慣れきってしまった。




