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シツ記  作者: こここ
2/11

ある雑誌記者の記録1-2

リフォーム済

端末機に表示させるのではない正真正銘の紙の写真だ。

興味をそそられてついつい視線を動かしてしまった。

悪い癖だ。

荒れ果てた街の中を兵士が歩いている。

それを見て私は即座に眼を閉じた。

「だからSさん、もう辞めたんだよ。今俺が書いているのは映画評論だ」

「知っているよ」

じゃあ何で見せた?

こうなると腹をくくるしかないと分かっていたが、S氏に対して恨みがましい気持ちはなくならない。

「聞くだけじゃなかったのか?」

「じゃあ、見るだけ、聞くだけ」

私の稚拙な嫌味に図太い神経を持つS氏らしい返答だ。

それだけでは決して終わらないだろうに。

私は溜息をついて再び写真へ視線を移した。

三日前に北部で大規模な作戦が行われたのは知っている。

その時のものかと尋ねると首を振る。

「そういう話じゃない。よく見てくれ」

砲撃を受け崩れ落ちるビルディングの間を歩く灰色の兵士たち。

火薬の匂いがふいに鼻先を過ぎる幻覚に見舞われた。

現在私がいる状況から比べたら遥かに衝撃的な写真ではあるが、これだけでは世間に何か訴えるという力はないと私は判断した。

事件性に欠けるのだ。

言ってみればただ精悍な兵士の写真である。

政府の宣伝写真くらいにはなるかもしれない。

北部との戦争状態は長く、私たちはこの状態に慣れきってしまった。


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