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出会いと気合い。

「はあ・・・つまらないなあ」


繰り返す毎日、作業のような日々。


いつしかなにも起こらない青春を周りのせいにして自堕落な日々を送っていた。



「--本日付で生徒寮を出ていき、{虹色荘}に移ってもらう--」

あの日校長室で言い放たれた言葉がふいに俺の脳を刺激する。


ガタッ!

「いてて……」


まぶしい朝日がカーテンの隙間から入り込んでいる。

どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。


俺はこの{虹色荘}101号室の住人、高橋奏多たかはしかなた

この荘は俺の通う山川双葉高等学校、通称双高のよく言えば天才的悪く言えば変人的な生徒が集められて暮らす、いわば「常識外れの渋滞所」である。多分俺を除いて。



「タカナタくぅ~~~~~ん!!あそぼ~~~~~」


「ぐはっ」


「彩音先輩っ!?苦しいです!あとその呼び方やめてください……」


「別にいいじゃあないか。地球は今日も回っているんだよ!!!!!」


この人は103号室の住人、櫛田彩音くしだあやね先輩。

天真爛漫、自由奔放、全力疾走。こんな言葉たちのために生まれてきたような存在だ。

見惚れてしまうほど鮮やかな緑色のショートカットに可愛らしい丸い輪郭。スラッとした手足と守りたくなるような笑顔は反則級だ。


「朝から騒々しいっすよ……って姉御!?なんすかその今すぐパシャリとカメラに収めたいお姿は!」

こいつは一つ下の高校一年生、102号室住人の長篠武蔵ながしのむさし

俺を兄貴、彩音先輩を姉御と呼び慕っている。先輩が好きっぽい?

なぜか四六時中ヘッドホンを首から下げている。本人に言わせてみると体の一部らしい。

しかし全く意味がないというわけではなく武蔵はインターネットに自作のボカロ曲を投稿しているのである。顔はかなりのイケメンだが、性格に難ありという残念系イケメンだ。


「朝ごはんできましたよー」

リビングから聞こえてきたこの優しい声の持ち主はわが天使エンジェル201号室に住んでいる

高橋麗華たかはしうるか先輩。なんと奇跡的に俺と苗字が一緒。ぶっちゃけ結婚してると思ってる。

名前の通り麗しくて長い茶髪は今日もいい香りがしそうだ。あふれでる母性につい甘えたくなってしまう。


「今朝は麗華特製ハンバーガーとお味噌汁よ~」

家事全般できて完璧なんだけど……組み合わせおかしいよなあ、しかも朝だし。まあかわいいけど。


「おいっしそう~。……んん~うまいっ!!女同士でも結婚しよう!!」


「うふふ、ありがと。彩音なら考えちゃおっかなあ」


「「そんなっっっ!!!!!!」」


……こんなやつ(武蔵)と声を合わせてしまった…こっちみてニヤニヤすんな!


「もうわたすでるからね~~~~、タカナタく~ん戸締りたのんだわよ~~~」


「また二日酔いですか・・それでよく教師が務まりますね・・・あとその呼び方やめてください」


このダメダメ教師は202号室に住んでいて、この荘の管理役の橋本修羅子はしもとしゅらこ

独身で現在彼氏なし。見た目はたれ目のおっとり系でモテそうなものだが、お酒を飲んだ時と車のハンドルを握ったときは丸っきり性格が変わってしまう。そんな彼女は裏で{ケルベロス}なんて呼ばれている。まあ使ってるの俺と武蔵だけだけど。ちなみに既にレベルはさんじゅ・・


「余計なことまで説明しゅんな!!!!」





ガチャ。

結局遅刻寸前だよ。

「いつから俺が戸締り当番になってんだ……」


「ねえ。」


振り向くとそこには見覚えのない少女が立っていた。


「え、君誰?その制服双高だよね?」


「きみは……きみは自分の人生を楽しんでいる?」


唐突な質問に頭が真っ白になった。その瞬間、まるで心の中を見透かされているかのようだったからだ。


キーンコーンカーンコーン。

遅刻が確定した。



「はあ……結局なんもこたえられなかったなあ」

なんとかホームルームには間に合ったが、さっきの質問がどうも耳に残っている。


担任が教壇に立ち、ホームルームをはじめた。

「はい、今日は転校生を紹介します。はいってきていいよ~」

・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

「あれれ~、もう入ってきていいよ~~~~!!」

・・・・・・。

「あの~……」


ガララッ!!!!


随分遅れて入ってきたのは今朝俺にあの問いかけをしたあの少女だった。

真っ白い髪の毛に緑の大きな瞳。まんまるの輪郭と目。人形のような童顔。絵にかいたような美少女だった。

彼女はニコリともせず自己紹介をはじめた。


水瀬白亜みなせはくあと申します。今後ともお見知りおきを」


淡白な挨拶だったが俺は彼女から目を離せなかった。


「えー、じゃあ席は高橋君の隣ねっ!!」

……え。そんな展開ある?ラブコメのテンプレ?信じていいのか!?俺の青春っ!?

……しかし彼女は先生の指をさしている先、同じクラスの高橋みつをの隣に座った。

そうだった……このクラス高橋って5人いるんだった……。



「ねえねえ、なんで今転入なの?」

「どこから引っ越してきたの?」

「俺と付き合ってください」

「なんか趣味ってある?」


案の定謎の美少女、水瀬白亜は休み時間になるやいなや質問攻めにあっていた。

朝のことを聞きたかったがクラス内ヒエラルキーでほぼ最下層である俺が大勢に囲まれている彼女に近づくことはできなかった。てかあんな美少女と普通には喋れねえし。

しばらく黙ってただ座っていた彼女だがなにも答えずに席を立ち、教室の一番隅の席に座りうずくまっている俺のもとに来た。


「朝の質問の答え、聞かせてほしい」


「え!?俺!?ああ~、あれね。なんで俺なんだ?どうしてあの時あんなことを聞いた?」

まさかあっちから来るなんて思ってもみなかったから俺ともあろうものがクラス中の注目が集まる中キョドってしまった。


「あなたはこれまで見たことのない目をしているから」


……なんか答えになってない気がするが……まあいいか。


「俺は自分の人生を楽しめるのに楽しんでないと思う。変えようと思えば変えられるのに楽をして現状を維持している。いや、必死に維持しようとしているだけかもしれない」


「……やっぱりあなたとてもおもしろい。あなたについてもっと知りたくなったわ」



「「「ええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」」」

クラスが騒然となった。いや謎の転校生を見に来ていた生徒全員だ。

「公開告白!?」

「あいつやるじゃん!」

「転校初日でねえ・・」

あちこちから口々に囁かれ始めた。


「待て待て!これくらいで騒ぎにするな!」


だって俺には心に決めたお人が……。


キーンコーンカーンコーン。

またしてもチャイムが俺と彼女を引き裂いた。




「あ~、どっと疲れたぜ」


謎の美少女転校生が冴えない陰キャ童貞引きこもりに公開告白をしたという噂は瞬く間に学校中に広がり、

男子からは嫉妬の目、女子からは何かしたのではという疑いの目が一日中向けられた。


「マンガとかで読む分にはうらやましかったけど、いざこうなるとめんどくせえなあ」


でもあの質問、俺が今自分で抱えてる疑問を言い当てられたようでちょっと怖かったな。

あんな風に答えたけど実際自分が一番分かってねえしな。

ガララッ!!


「ちょっと兄貴!!なんすかあの噂!!兄貴が突然転校生とおめでた婚したって!!!??」


……いくとこまでいったな。


「んなわけあるか、俺は見境なしの欲情ザルなんかじゃあないんだから」


「そうっスよねえ。兄貴にそんな度胸あったら今頃こんなとこで俺なんかと話してないっスよねえ・・」

正論だし真実だがなんかムカつく。一発殴ってやろうかな。


コンコン。

窓を外側からたたいている音が聞こえる。


「また彩音先輩鍵忘れたんかなあ、はいはい今開けますよっと。ってうわあああああああああ!!!」


そこにはこの最悪な一日の元凶であり、俺とおめでた婚したことになってる少女が立っていた。


「本日付でこの虹色荘の203号室に越してきました、水瀬白亜と申します。以後お見知りおきを」


この破天荒少女との出会いが俺の止まっていた青春をもう一度走らせるキッカケになるのだが、

……それはまた別のお話。




ご覧くださった方へ


読了していただいたらできるなら評価をしていただきたいです。


更新のモチベアップになります。


是非よろしくお願い致します。


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