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厨二のチェニー  作者: 夢✡やみみ
1/2

チェニー

 

7月も半ばに差し掛かった夏の日に、都内の剣山つるぎやま学園にある噂が流れ始めた。

その噂は、風のように早く学園中に広まっていった__が、その勢いは止まらず、日本中どころか世界中にまで知れ渡っていた。


学園内では、どこに居てもその噂にまつわる話が聞こえてくるほどだった。


「2学期に転入生が来るらしいよ」

「え、何年生?」

「それがさ、2年生なんだって」

「何だ、別の学年じゃん。そこまで騒ぐ話?」

「それがさ、その転入生、何かトクベツらしいんだよね。」

「トクベツ?」

「そ。何も左眼を殺人犯に刺されたらしいんだよね」

「何それ、そんな情報どこから入ってくんの?」

「SNSに普通に載ってたの。」

「そんなの載ってるわけないじゃん、ガセじゃないの?」

「違うんだよ、その転入生が自分で公開してるの!」


「はぁ、チェニーって誰だよ?」

「知らないの、今SNSで話題のチェニーだよ!」

「最近SNS見てないから知らないんだけど。そんなに有名なの?」

「有名も何も、めっちゃヤバいんだよ。アカウント作成から1週間足らずでトレンド入りしたんだよ!」

「は、何それ」

「嘘だと思うなら見てみ、一般人なのにフォロワー10万越えで、外国のフォロワーもたくさん居るんだよ!」

「マジか、帰ったら見てみる」


「知ってた、チェニーってうちの学校に転校してくるらしいよ……」

「嘘でしょ、あのチェニーが!?」

「うん。昨日SNSで普通に公開してた。めっちゃRTされてたし、今朝校門の前に居た変な奴もそれ見て来たんだと思う」

「えー、それやばくない?」

「だよね、この学校が売名の為に作った垢としか思えない」

「まあ、こんなボロ臭い校舎とこんなボロっちいセーラー服じゃぁね」


剣山学園内で様々な噂が流れている、SNSで話題になっている“チェニー”の投稿は、こんなものばかりだった。



チェニー @tyenii_tyu2

ぼくはチェニー。ブラックホールを制覇した勇者さ。

ぼくは宇宙をも自由に操れるのさ。

ぼくの力を見たい人間たちは、ぼくの住処に繋がるための魔法陣を、風呂場の壁に描くんだ。

魔法陣の画像を載せとくよ。人類にはまだ難しいかもしれないね…(笑)



チェニー @tyenii_tyu2

ふう。今日も雨がひどかったね。

実はぼくが宇宙を司る魔王を倒したから、その血液が降っているみたいなんだ。

雨が続いて困るだろうけど、魔王から光の玉を取り返したから、世界はまた平和に戻るよ。



チェニー @tyenii_tyu2

ぼくは学校には行ってないんだ。何せ選ばれし者だからね。

行く必要はないんだが、人類が学校とやらで何を学ぶのかを知りたいんだ。

人類が死んだらどうなるかも知っているぼくでも、学校の楽しみやら勉強の大変さは分からないんだ。

きっと魔法少女になるための修行よりは楽なんだろうけどね。



チェニー @tyenii_tyu2

地球のみんな、朗報だよ。

ついにぼくを編入させてくれるっていう学校が見付かったんだ。

その名も剣山学園っていうんだよ。

今すぐ地球に帰る支度をしなければね。編入するのは2学期からだよ…



「……何こいつ、何でこんなに人気になったん?」

「知らない、こういうの珍しいからじゃない?」

「どっちにしろ、有名人が転入してくるってやばいよね」

「チェニーって女だよね?魔法少女とか言ってたし」

「喋り方は男みたいだけどね。一人称もぼく、だし」

「それ楽しみだよね。今もチェニーの性格についてめっちゃ荒れてるし」

「ほんとすごいよね。めっちゃ来るリプライも全部返してるしさ、外国語もかんぺきじゃん」

「外国語わかるの?」

「適当。多分合ってるよ、それっぽいし」

「でもさ、こうやってバカにしてるけど、チェニーって本当に何者なんだろうね……」


チェニーの人気は衰えないまま、溶けるように夏が終わり、9月がやってきた。

 

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