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7話 秘かに始まるアナザーバトル

ちゃうねん。もっと早く投稿する予定やってん。

……遅くなりました。

 ウサギは滅びた。結果としてどれだけステータスが上がったのかは怖くて見ていない。

 というか、ステータスあんま意味ない気がする。

 たとえば、耐久力。先ほど信じられない程耐久力が上がったが、そこまで上がったとしても、痛ければ何の意味が無い。多分、攻撃を喰らって動ける事は凄い事なんだろうけど、痛い物は痛いのだ。

 どれだけかっていうと、


 「トラックに轢かれた時以来だ……畜生め」

 「轢かれた事があるんだね……」


 とりあえず傷付いた身体に鞭打ってウサギ2号をシバキたおしたあと、俺は五体投地して撃沈していた。その上からバシャバシャと薬の様な匂いの水を掛けてねぎらいながらも、静海が呆れた声を出した。


 「痛い痛いと言いながらも、激しく動いていたけど、その轢かれた時も直後に激しい運動をしたの?」

 「直後じゃないけれど、病院を抜け出して中体連の決勝に出た事なら」

 「何部?」

 「やきゅー」

 「意外……あ、でも、そういえば、野球部の人たちとよく一緒に居た気がする。というか、虎徹くんって高校の時はどこにも入っていなかった気がするんだけど?」

 「その時の後遺症でキッパリとやめた。どうせそん時3年生だったから引退だったし、それに、これ以上やるなら足をぶった切るぞと医者に脅されたし」

 「馬鹿ね」

 「でも勝った。そん時の相手、中体連三連覇がかかっていたらしいけど」

 「そのあたりが、ホントに虎徹くんらしいというか……どうせサヨナラホームランでも打ったんでしょ?」

 「何故わかったし!?」

 「だって、足が駄目ならば歩けばいい、って思うのが虎徹くんじゃない」

 「…………ノーコメント」


 何でこんなに見事に読まれてるんだよ……エスパーかお前。


 しかし、過去に仕出かした事に関しては、今思えば馬鹿だと思うけれど、後悔はしていない。全てを賭けて振り抜いた一撃。強い奴を沈めた時の快感というのは、一度味わったら本当に忘れられなくなるのだ。

 挑む時の緊張感。挑んでいる最中の焦燥感。捻じ伏せた時の達成感。だから『俺たちは強かった』――そう胸を張って言える。


 「あれ……?でも、文化祭じゃで踊ってたし、体育祭でも活躍していた気がするんだけど?中学校3年生の時に後遺症の残る怪我……?」

 「静海。昔の凄い人は言った――元気があればなんでもできる、と」


 怪我?後遺症?んなもん、これ幸いにと高校受験の為の勉強している間に克服したわ。とはいえ、部活みたいな日常的に激しい運動は無理っぽそうだったしなぁ。当時。特に俺は放っておくとオーバートレーニングがちになるから、って言われたし。


 「……納得」

 「ところで、今俺にかけた奴って何?なんかすげー薬臭いし、身体のあちこちがシュワシュワ言ってはるんやけど」

 「回復薬」

 「さんきゅ。どう考えても使い方間違えてると思うけど」

 「口移しの方がお好みだった?」

 「んーん、パース」


 軽口の返答代わりに空になったビンが俺の頭へコンッと落ちてきた。その様子をバッチリとカメラに収めていた玉玲さんが声をあげて笑う。まったく、軽口も楽じゃないぜ。

 いや、冗談はともかく、回復薬って普通飲むものだよな?効いているならば別にいいけれど。しかしこんなので痛みが引いていくんだからスゲェぜ、ファンタジー。

 ……まあ、一番のファンタジーは、ウサギに燃やされたり転かされたり、散々な目に遭っているにも関わらず、穴の一つも空いていないこのスーツなんだけど。どれだけの防御力持っとるんや。

 うん?そういえば、服の事で思い出したけど、この鎧ってずっと着たままなのかな?流石にずっと着ているのはヤなんだけど。


 ――待機モードへ移行します。


 ついでのついでに鎧の事へと思考が向くと、無機質な電子音声が流れた。同時に俺の身を覆っていた鎧がまるで液体金属のようにシュルシュルと蠢き、左手の籠手の様な形に落ち着いた。籠手、というより、甲が付いた腕輪か。最低限の盾としての機能を残しつつも、指先が覆われていないのは助かる。


 「間が悪い……薬かける前に納まれよ」


 ――善処します。


 「……まあいい。静海、悪いがもう一本くれ」

 「ん」


 つーか、喋るんだな。俺の鎧……。

 まあ、詳しく調べるのは後にしておこうか。いつでも調べられそうな事より今後の確認だ。とりあえずサッカーのピッチ脇に置かれている水をぶっかけるみたいに、頭から薬を被って気持ちを切り替える。


 「あー、ゆっくりだけど結構キくな。んで、静海、ウサギ()はどうする事になった?」

 「え?ああ、うん。今、大地さんが解体屋を手配した。手間賃は取られるけれど保管してもらえるって」

 「色んな商売があるんだな……」


 商売のコツは、人のニーズに応える事、か。まあ、確かにこれだけでかい獲物を相手にする者にとってはありがたい商売なのかもしれない。そんな事をつらつらと考えながらも、俺はようやくといった感じに立ち上がった。若干痛みが残るが問題は無い。


 「んじゃあ、あれか。その解体屋が到着するまでここで休憩か」

 「多分、そのままキャンプだろうね。全然進んでいないけど」

 「こんだけでかい獲物が横たわっている所で野営って、襲われやしねぇのかな?」


 それに解体するとなると、ここら一帯は血風呂になるだろうし、その匂いに釣られて新たな猛者共が群がって来てもおかしくは無い……と思う。資格取る時に『野営をする際は細心の注意を払いなさい』とくどいほど言われているし。

 しかし、静海は対策があるのか、慌てることなく、むしろ素っ気無く頷いた。その凛とした横顔をよく見ると、微かにだが目元に不安な色が浮かんでいる。


 「……なーに企んでやがる?」

 「キャンプについての事。上手くいけば何事も無いし、上手くいかなかったら……ちょっと危険かなって」

 「成程な。相談ぐらいなら乗るぞ。おにーちゃんに話してみ?」

 

 あっ、やべぇ。つい癖でおにーちゃんとか言っちまった。案の定、きょとん、とした表情で見つめられたが、その視線が痛い。おい、頼むからカメラ止めろ。


 「……今のはちょっとグラッとキたね」

 「クールなビジュアルとホットな性格が全然合っていないというか……流石日本。ギャップ萌えは凄いネ」

 

 ヤメローッ!人の傷を穿るのはヤメローッ!褒めるような口ぶりで人を貶めようとするのはヤメロ―ッ!大体な!お前ら口元がニヤつき過ぎなんだよ!目が生温か過ぎなんだよ!

 ロクでもねぇな!ウチの女性陣は!


 「じゃあ、お言葉に甘えて色々手伝ってもらうかな。お兄ちゃん」

 「オメーいつか絶対泣かす!」


  ◆   ◆   ◆


 「あー……疲れた」


 どうやら解体屋が到着するのは明日の朝方になるそうだ。俺はというと、疲れた身体に鞭打ってせっせと瓦礫を直して最低限の設営を済ませていた。多少は広いけれど、非常に簡素な昔ながらのテントの天井を仰ぎ見て、ようやくひと心地が付いたようにため息が漏れる。

 尚、女性陣はホイポ〇カプセル型の超リッチなコテージに宿泊中だ。大地さんから手渡されたテントを組み立てて、「よっしゃ」と思った瞬間に、静海が放り投げたカプセルから白亜の建物が出てきた瞬間の徒労感は一生忘れはしないだろう。しかも、ポカンとしたアホ面もしっかりとカメラに収められたから性質が悪い。

 ただ、まあ、男の子として彼女らとの待遇の違いに文句を言うのもお門違いだろうとはわかっている。

 ……お財布事情を鑑みれば甚だ理不尽ではあるが。

 特に静海結月は彼女がもう一つ所持するクラス『紋章士』を使い、倒れるギリギリまで力を振り絞ってまで、この簡素なテントが狙われないよう術を施してくれているのだ。貧血のような状態になった女の子が、より頑丈で快適な寝床に着く事に異論を唱える程小さな器は持っていないつもりだ。

 

 静海が持つ『紋章士』とは、いわゆる魔法陣などを描き、効果を付与するというサポート型の術使いだという。今、俺たちがキャンプをしている場所の地面に魔物避けの魔法陣をかいてもらったことにより、従来より何倍もの安全な場所となっているのだ。

 ……まあ、その肝心な紋章を書く為に大分整地にこき使われましたけどね?しかも、最初の転移の時に買ったらしい『はじめての紋章術』という本を片手に付与された時には、本当かよ、と思った物だが。


 ともあれ、俺と静海は第二クラスはそこそこ世界観に沿った物を得る事が出来たらしい。とはいえ、メインは共に目も当てられないが。


 ともあれ、異世界初キャンプである……荒野の街道で。ウサギ2頭が死んでいるそのまさに隣で。

 

 細かい事を気にしたら多分生きていけないのだろう。チャンドラーも言っている。男はタフでないと生きていけないと。ハハッ!この程度の事など……。

 

 とまあ、無理矢理日常のテンションに落ちつけてみたのだが、キャンプと言っても別段やる事なんて無い。本当にあとは寝るだけだ。メシ?メシは……ああうん。ウサギじゃなくて、ビスケット型の携帯食にした。ちょっと試してみたかったけど、「アレは硬すぎて食べられないよ」と言われた。試したことがあるんだな、大地さん……。


 「というかさー、大地さんって相当この世界潜ってるでしょ?」

 「ゲーム時代からだからね。かれこれ10数年……もう20年いくかな」

 

 うわっ、マジもんかよ。アナザーが現世界として顕現したのが丁度俺達世代が生まれた年と一緒だから、ベテランもいい所じゃないか。特にゲーム時代からの猛者は自らの資質では無く、ゲーム時代のランクを引き継いでいるから、顕現以前の世代と以後の世代じゃ文字通り桁が違う。とはいっても、昨今となってはそういった大物たちも大分引退したしたいみたいだけど……。

 ただ寝るだけなのもつまらないので、話を振ってみたけれど、ちょっと興味が出てきたな。そうか、夜会話は基本だものな。味気も色気もねぇけど!むしろ色気はあったら困る!


 「もしかして、静海の親父と知り合ったのも?」

 「その時の縁だよ。ゲーム時代、この世界が顕現した際のゲート封鎖事件、通称『神の一週間』。そして今――特に彼は名うての仕立て職人だったからね。色々お世話になったものだ」

 「仕立て職人にお世話になるって事は、スカウト系か。後衛には見えないし」

 

 俺の指摘に、おやっと感心したように彼は頷いた。

 

 「布装備から斥候を連想するとはいい読みだね。その通りだよ。ゲーム時代の表現で言えば、『戦闘力は最低限の純斥候』って所かな。シーフと言うよりサポートさ」

 

 ……うん。『戦闘力は最低限』って所に自嘲が含まれている気がしたけど、ベテランのサポートって超チートだと思うの。ゲームで言えば、だけどね。しかも、この世界が実体化したとしても、戦闘職じゃないから、息も長く続けられるだろうし。


 「いいなー。俺もそっちがよかったかも。スカウトはスカウトでも、トレジャーハンターとかさー」

 「確かに、虎徹君の事情を鑑みれば、一獲千金の夢は捨てがたいよね」


 にこりと朗らかに笑っていた大地さんは、「だけど、」と言葉を繋げて表情を引き締めた。


 「斥候職は君には決定的に向いていない」

 

 それからしばらく俺は大地さんから、何故向いていないのか、何故否定するのか、彼の仮説とそして経験を交えながらの話を伺う事になり、そして、俺はアナザー初日にして改めてこの世界との向き合い方について本気出して考える事になった。


 ◆   ◆   ◆


 「ふー……」


 強がりも限界だった。ようやくセーフハウスに入ると、ベッドに行くのも億劫で、備えつけのソファーに身を投げ出していた。じんわりと、身体の芯に綿のような重たい物が絡みついている気がした。


 「あれだけ力を使ってまだ意識が保てるの?普通なら何度も意識がトんでいるはずだよ。スゴイね、結月」

 「……ギリギリよ。もしかしたらって思って買い込んだ薬がほとんど無くなっちゃった」

 「わかってると思うけれど、それってかなり危ない傾向だよ?」

 「うん」


 術者系のクラスは魔力……私の場合は魔力と言っていいのか分からないけれど、その数値化された力が尽きてしまうと、悪質な後遺症が残らないよう強制的に身体の安全装置が下りてしまう。この身体の芯に残る重たさは、多分、何度もエンプティ―になり、それを薬で強制的に補ってきた副作用によるものだと思う。

 正直言うと、気を抜いてしまうとまっすぐ歩けない程。そして視界は気持ち悪い程に歪んでしまっている。正直、虎徹くんに引っ張られ過ぎ。

 でも、今の私にはあまり後悔は湧いてこなかった。


 「珍しい程に気合入れちゃって……そんなに、あの『彼』の前でイイトコロ見せたかった?」

 「うん」


 後悔しない理由――それは偏に、彼と共にこの世界を歩いてみたかったという、タダの意地以外の事他ならない。折角、折角、折角……強引な手段を使ってでも、ようやく共に歩み始める事が出来たというのに、その事を後悔する気なんて勿体ない。

 むしろ、今日の事を思い出すと……それだけで嬉しくて疲れも目眩も忘れてソファーの上でコロコロ転がりたくなる。熱くなった顔を隠すように、スリスリと擦りつけてフス-と鼻から深く息を吐く。


 「……変わって無かった」


 スリスリと感情を擦り付けるように頭を動かしながら、今日の事を思い出す。強烈なまでに引っ張れてクタクタになったけれど、伊吹虎徹は秘かに憧れていた頃となんら変わっていない。


 ルックスは端正。クール系で近寄りがたいけれど、普段の声は色気のある低音が艶やか。それだけで結構憧れる子が多かったと思うけれど、大人びてきた所為か破壊力が更に凄い。ありがとう、って言われた時はもう……。


 でも、一番憧れた部分はその謎の引力。飛び抜けて勉強ができた訳でも、飛び抜けて運動が出来た訳でも(当時、怪我していたと初めて知ったけれど)なく、イケメンとはいえども彼の兄妹たちみたいに浮世離れしたレベルという訳でも無い。自分での評価になるけれど、彼のルックスの近寄りがたさは私と同等ぐらいかもしれない。


 それでも、虎徹君が「やろうぜ」と音頭を取れば誰もが喜んで踊り出す。彼が「大丈夫」と言えば、その雰囲気に引っ張られて不可能を覆す為に全力以上を尽くす。


 自然と周囲を纏め上げ、その集団の魂のように輝くその姿は、家の関係で『超一流』と呼ばれる人たちと交流もあった私にとっても衝撃だった。それに気が付いたのは、5月の集団行動の時だったかな……?

 それはともかく、今日私が引っ張られ過ぎたのは、彼が変わらず――むしろ、パワーアップしていた事に浮かれていたからだと思う。


 「玲、貴女から見て、彼はどんな感じに映った?」

 「……衝撃だね。才能も破天荒さも厄介さもウチの『にーに』に匹敵するかあるいはそれ以上だと思う」

 「『台湾の至宝』に……私の目に間違いは無かったのね」

 「でも、絶対に組みたくない相手だと思うなー。結月を見て特に思う。アレは色んな意味で味方を殺すよ」


 屈託のない玉玲の言葉に私も「確かに」、とクスリと笑う。けど、あれでも彼はかなり周囲に気を配るタイプだと私は思う。実際今日はかなり気を使ってもらっていたと感じるし、だからこそ独りよがりになり過ぎないのだと思う。その程度の事なんて、問題でも何でもない。


 「わざわざ探しだすほど好きならさっさと告っちゃいなよ」

 「断られるのが目に見えているのに、する訳ないじゃない」


 多分、今の彼の頭の中は薫流ちゃんたち兄妹を養っていく事だけで一杯一杯だと思う。そんな状況で告白したって、彼みたいな人は間違いなくスッパリと断る。

 そもそも、多分、今の彼は私を異性として意識していないと思う。すべてひとしく庇護対象、そんな感じかもしれない。だから、私はこのキモチを伝える気はない。多分、もっと仲良くなったとしても……。


 でも、彼の隣に居たい、というネガイは叶えたい。


 その為にこの番組に強引にねじ込んだし、彼のマネジメントを請け負った。その所為でライバルが増えるというリスクは承知の上。だって、私が射止めるから。

 カメラが回っている以上、行き過ぎたやり取りをするつもりは無い。下手を打ってこの感情が暴走しない様に、あえてこの状況を望んだのだから。その上で彼の気持ちを射止める勝算は少ないのかもしれない。自分でも遠回りしすぎていると思う。


 けど、けど、けど、


 「……絶対に、虎徹くんに『好き』って言わせてみせる」


 それが私の恋愛の容。彼の足かせにならぬよう、だけど我を通させてもらう。

 今日という日にあった事を思い出し、その上でしっかりと自分の気持ちを確認しながら、瞼がゆっくりと降りて行った。

好きだと言うより、好きだと言わせたいですよね。恋愛って。

……うん?言われた事無いですよ。ここ数年は(血涙)


愛とか恋とかよりも、睡眠時間ともっと書く為の時間が欲しい今日この頃。

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