カカオ90%のチョコって何か口ん中にへばりついて不快
コンテ食ってるみたいな感じでした。
※
「いやースリムになるかと思った・・・」
そんなことを言いながら腰を擦るダイゴ。ちなみにその胴回りは現在も絶賛内出血中である。
「・・・」
ダイゴの無駄口に対してアッシュは反応するのも億劫なのか、無言で死者の家目指して歩き続けていた。
その沈黙が苦痛に感じられた為に、ダイゴは懲りずに口を開く。
「・・・そ、そういやアッシュさんってどんくらいの期間獄犬をされてるんスか?」
「・・・・・・」
(オウフ、だんまりかよ・・・)「じゃ、じゃあ!・・・ええっと、・・・へ、獄犬に入ろうとしたきっかけは」
「オイ」
ダイゴの話を遮るように、アッシュが歩きながら声を発する。その声は冷たかった。思わずダイゴの心臓が跳ねる。
アッシュは振り返ることなく、言った。
「非常時以外で仕事と関係無ぇことくっちゃべんなハゲ。俺はテメェと馴れ合うつもりなんざ毛頭無ぇんだよ」
その言葉は、怒りが息を殺して潜んでいるようでも、拒絶が歯を剥き出して唸っているようでもあった。
「うぇい!?す、すんません!肝に命じとくっス!!」
そんなプラスのニュアンスが全く感じられない言葉に、ダイゴは歩きながら謝る。その謝罪の最中、頭の中ではこう考えていた。
(うぅむ、予想はしてたがここまでATフィールド厚いとはなぁ・・・。・・・もしやさっきからずっと俺を待たずに自分だけさっさとエレベーターに乗ろうとしてたのは、拒否の表れだったのか!?・・・さっきのエレベーター閉めるボタン事件は、アッシュさんなりの茶目っ気だと思ってたんだけどなぁ・・・)
胴体を切断するレベルの茶目っ気ってそれは最早狂気じゃないのか。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
黙りこむ二人。足音だけが町に響く。雑踏の中で、そこだけ切り離されているような沈黙が存在していた。
そして、そうこうしている内に二人は死者の家に到着するのであった。
死者の家の中は静かだった。死んだばかりの人間が来るという特性上、賑わう方が珍しいのだろう。
その美術館のような静寂の中で、ダイゴは少し考えた後、アッシュに話しかける。
「あ、あの、アッシュさん。死者の家で情報貰うっつっても、一体誰に貰うんスか?ハローワークの人とかっスか?」
「・・・別に誰でも良い。今暇そうな職員見つけて、調査証見せて情報引っ張ってきて貰うだけだ」
その話が仕事関係のことだった為に、アッシュはしかめっ面ではあったが、そう答える。
「成る程・・・、んじゃあ俺暇そうな人探してくるっス!」
自分も何とか役に立とうと、ダイゴはアッシュの居る場所から離れ、時間のある職員を探そうとした。
だが、アッシュと別の方向を向いて移動を始めようとしたその時だった。
「・・・あの職員、暇そうだな」
アッシュはダイゴの助けなど要らないとばかりに、さっさと情報提供する時間のある職員に目星をつけてしまい、その方向に歩き始めたのである。
「も、もうっスか!?仕事が早いっスね・・・」
そんなことを言いながらダイゴはアッシュの歩む方を見た。しかし、瞬間ダイゴの動きが止まった。
「おい、あんた暇か」
静止するダイゴには目もくれず、アッシュは目星をつけた職員に言う。
その職員と言うのが、ダイゴ停止の理由であった。
「・・・どちら様でしょうか」
「・・・親友・・・さん」
一昨日の恩人であり、昨日の悩みの種であり、今日の己の課題である青髪の機巧少女、親友・拾号の姿がそこに在った。ダイゴの声を認識した彼女は、その方をちらりと見る。
「っ・・・」
瞬間、親友の瞳に、昨日と比べればそこまで明瞭では無いが、しかし確かに恐怖が滲んだ。
「あ?・・・知り合いか?」
アッシュがダイゴに問う。
「へ?え、ええ、まあ・・・」
「・・・・・・」
曖昧な返事をするダイゴと押し黙る親友。その二人を交互に見た後、アッシュは興味無さげな顔で「あっそ」と言ってから、親友の方に向き直り、懐から調査証を出して、続けた。
「俺達は獄犬だ。今時間が有るんなら協力してもらいたい」
「・・・十分程なら」
「すまない」
親友の受け答えに礼を述べてから、アッシュは言う。
「取り敢えず、"ラムドレー"と"リムード"と言う名前の、二人の犯罪者の現在の住処と心象を調べて欲しい」
「分かりました」
親友はそう言うと、まるでダイゴから逃げるように若干早足で奥に引っ込んだ。
その姿を見送った後、ダイゴは考える。
(っべぇな・・・。すっげえ避けられてる。はっきりわかんだね。・・・でも、これじゃあ嫌われたまんまだし・・・どうしようか)
親友の為親友の為とは言っていても、やはり一度仲良くなった(かに思われる)人間に嫌われるのは個人的にも心にくるものだ。そうダイゴは痛感した。
と、そんな思考を続けているところに、親友が戻って来る。その手には白い紙があった。
「これが現在死者の家に保管されている"ラムドレー"と"リムード"の情報の全てです」
そう言うと、親友はその紙をアッシュに手渡した。
アッシュは手渡されたそれに目を通すと、親友に言った。
「・・・これだけ情報があれば、午前中に仕事は終わりそうだ。協力、感謝する」
「いえ、これが私達の仕事ですから」
親友がそう言うと、アッシュは、
「・・・それもそうか。じゃあDPは後程そっちに行くから、これからも宜しく頼む」
と言ってから、背を向けて出口に向かって歩き始めた。
そんなアッシュを見て、ダイゴは置いていかれてはかなわないと思い、急いで親友に、
「えと、じゃあ今日はありがとうございましたっス!ほいじゃ!」
と礼を言ってから、アッシュを追おうとした。
その時だった。
「・・・貴方も、獄犬だったんですね」
背後から、そのような親友の声が聞こえた。
「え?」
ダイゴは振り返るが、既に親友は背を向けて、自分の仕事に戻る為に歩き出していた。
親友のその言葉にどんな感情が込められていたのか、馬鹿なダイゴには分からない。
"貴方の様な人でも獄犬に成れるんですね"
そんなニュアンスが多大に含まれていたのかもしれないし、或いは全く含まれていなかったのかもしれない。
しかし、そんなことは、今のダイゴには眼中に無かった。頭の中に、とある疑問が渦巻いていたからだ。
「・・・親友さん、俺のこと獄犬職員だって知らなかったっけ?」
あの日、マリオはダイゴが獄犬職員だと親友に言っていた。多少なりとも遠回しな表現ではあったが、確かに言っていた。
だのに、親友は今、『まるでダイゴが獄犬職員であることを初めて知ったかの様』な台詞を言った。
「・・・考えすぎか?」
もしかしたら忘れていただけかもしれない。そんな可能性を考えるも、ダイゴの心中の違和感は消えない。
「・・・っと、このままじゃ今度こそ置いてかれちまうな」
しかし、ダイゴは仕事中だったこともあり、一旦そこで思考を切って、既に遠くにあるアッシュの背中を追った。
苦いのは嫌いです。




