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死後(デッドイン)  作者: 糞袋
第三章・悪人
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遮陽

何か今日は天気が悪かったです。だから今日は引きこもってレポート書いてました。


 所変わって此処はとある建物の一室。

「・・・遅いね、お父ちゃん達」

 時計を見ながら少女はそう呟いた。少女の髪は黒いショートカットで、その容姿は小学生ぐらいに見える。

「まあ今回はウチ等が勝手にやった事でゲスからねぇ。他の仲間からのサポートも無いでゲスから、まあ仕方無いでゲス」

 ぐるぐる眼鏡を掛けた茶髪ショートツインテールの少女は、そう言いながら何やらスパナ片手に機械を弄っている。

「・・・そういえば、ザロックちゃんは今回の作戦がどんなものか知ってる?」

 少女の問いに対し、ザロックと呼ばれた少女は、機械弄りを続けながら言った。

「おや、コンコは今回の作戦の内容を知らないのでゲスか?」

「うん」

 少女、改めコンコは素直に頷く。

 すると、ザロックは機械弄りを止めて、コンコに向き直って言った。

「ゲースゲスゲス、ならば誠に恐縮でゲスが、今回の作戦の内容をウチが教えさせて頂くでゲス。・・・まあ、作戦といっても、脳筋の集まりであるゴンタグループの男共が考えたもんでゲスから、大した作戦では無いんでゲスが」

「ありがとう!ザロックちゃん!」

 コンコがお礼を言うと、ザロックはニコリと笑って説明を始めた。

「内容はこうでゲス。まずメアルを除いたメンバーで店を探し、見つけたら中に入って威嚇行為をするでゲス。そんで、店内から人が消えたらそこからありったけのDPをブン取るでゲス。そして、その後その店を何らかの方法でぶち壊すでゲス。それにより周りの店に居る人達が驚いて逃げたら、そのもぬけの殻になった店々からに入って同じようにDPをブン取るでゲス」

「ん?じゃあメアルくんは何処で何やってるの?」

 コンコがそう問えば、ザロックは「良い質問でゲス!」と言って、続けた。

「一応、通報される前にスタコラサッサと逃げる手筈でゲスが、通報されて獄犬が飛んでくる可能性もあるでゲス。その時は、先ず皆である場所に逃げて、そこで戦うでゲス。その時に、そのある場所で待ち伏せしていたメアルが、死角から矢なりなんなり飛ばしたりして、獄犬を倒すって寸法なんでゲス。つまり、メアルは通報された時の、予防線って訳でゲスよ」

「ふぅん、そうなんだ。・・・って事は今お父ちゃん達は獄犬の人達と戦っているから、遅いのかなぁ・・・?」

 コンコが心配そうな表情で呟く。

 そんなコンコに対し、ザロックは笑って言った。

「大丈夫でゲスよ!あの男共は馬鹿でゲスが、腕は確かでゲス!だから、コンコは安心して親父さん、もといゴンタさんを待っていて良いんでゲスよ!」

「・・・そう、だよね」

 自分を安心させようとしているザロックの気遣いに感謝しながら、コンコは笑った。




ピンポーン




 その時、玄関のチャイムが鳴った。

「!お父ちゃん達帰って来た!」

 コンコが嬉しそうに玄関に向かおうとする。

「あ、コンコ!敵かもしれないでゲスから無闇に出るのは止めるでゲス!」

 しかし、それをザロックが制止し、コンコの前に立ちながら慎重に玄関に向かって歩いていき、扉の前で言った。

「・・・どちら様でゲスか」

 間髪入れずに返答が返ってくる。

「俺だ。バトラーだ」

 その声を聞き、本人だと確信してザロックは扉を開けた。

「おお、バトラーさん!今回はどんなご用件でゲ・・・スか・・・」

 

 扉の向こうでスミオとメアルを担いで立っているバトラーの姿を見て、ザロックは言葉を失った。



「・・・ん・・・あ・・・?」

 そんな曖昧な声を漏らしながら、赤メッシュの少年、スミオは目を覚ました。その後、数秒間ほどボンヤリした意識の中天井を見つめ、直ぐに自分の寝ている場所がグループのアジトだということに気付き、跳ね起きた。

「何だ!?何だって俺はこんなところに居るんだ!?俺は・・・」

 そこまで言って、自分が先程赤いモヒカンの大男に敗れ、意識を手放していた事を思い出す。

「そうだ、俺は・・・!クソッ、メアルは!?」

「ここだ」

「うおっ!?」

 死角からの突然の声に、スミオはおっかなビックリし、その方向を向く。するとそこには、メアルが立っていた。

「・・・俺の方がダメージが少なかったみたいで、その分早く意識が戻ったんだ。だから、今こうしてお前が起きるのを見張ってろってザロック達に言われたんだ」

「・・・俺に変若水飲ませりゃ良かったじゃねえか。そうすりゃ待つ時間も減ったろうに」

「アレは急を要する時とか、またはよほどの重傷の時に使う物だ。放っておけば治るような怪我で、しかもアジトの中で時間は腐るほど有るんだったら使う必要は皆無だろ」

「・・・それもそうだな」

 スミオが納得したところで、メアルが言った。

「じゃあ、茶の間に行くぞ。皆が待ってる」



 茶の間には、コンコとザロック、そしてバトラーの姿が在った。

「あ、スミオ気が付いたんでゲスか」

 ザロックがスミオの姿に気付き、そう言った。

 バトラーもスミオの姿に気付き、と同時にDPの入った袋を取り出して、

「・・・よし、これで全員揃ったな。じゃあ今回のDPの分配をするぞ。何時もなら五割がグループに、残り五割が組織に分けられるが、今回は勝手に動いたペナルティとして、四割がグループ、六割が組織の取り分になる。以上だ」

 と淡々と事務連絡を行った。

 しかし、その連絡は全くスミオの耳には入らなかった。何故なら、あることが気になったからだ。


「・・・そんなことより、ゴンタさん達はまだなのかよ」


 その言葉に、今までずっと無言で俯いていたコンコの肩が、ビクッ、と揺れた。


「・・・なぁ、オイ」


 ザロックの眼が、眼鏡越しに曇った。


「・・・オイ!!テメェだよ!テメェに聞いてんだよバトラー!!!」


 そう怒鳴りながら、スミオはバトラーに掴みかかる。


「気絶してた俺達と、"戦長"のテメェが此処に居るって事は、テメェが俺達を此処に連れて帰ったんだろ!?だったらよ!何でゴンタさん達は居ねえんだ!!オイ!!!」


「・・・"グループ全体が窮地に陥っている時に、リーダーである人間の救助は不要。何故なら、リーダーが窮地に陥るような敵を相手取っていると、他のメンバーの救助が間に合わなくなるから"。昇る太陽の規則の一つだ。お前もそれは知っているだろう」


 スミオの咆哮にも近い質問に、しかしバトラーはあくまで淡々と答える。だが、その瞳の奥にはチリッ、微かに悔恨の炎が揺らいだ。だが、火の粉よりも微弱なそれに、その場に居る人間は誰も気付かない。

 故に、スミオは咆哮は続く。

「・・・っ!!だったら、何でプスーカさん達も居ねえんだよ!!!アァ!!!?」


「・・・俺の力不足のせいで、皆捕まった」


 そんな言葉と共に、今度は誰にも分かるような大きさで、バトラーの瞳の火炎が揺らいだ。


 それを見て、スミオは「〜〜〜!!!」と声に鳴らない唸り声を上げながら、急に周りを見回し始めた。

「・・・何を探してるんだスミオ」

 静かにメアルが問う。

「決まってんだろ!俺の槍だ!!・・・あった!」

 スミオは自らの骨から造られた槍を掴むと、玄関に向かった。

 しかし、その腕をメアルが掴んだ。

「・・・んだコラ」

 瞬時にスミオの瞳が敵意で燃える。だが、そんなスミオに対し、メアルは動揺することなく言った。

「・・・大体お前がやろうとしていることは察しがつくが、敢えて聞くぞ。何処に行く気だ」


「決まってんだろ。獄番に殴り込みに行くんだよ」


 獰猛に、肩で息をしながら、スミオが言った。

「止めろ。自殺行為だ」

 しかし、メアルは静かに言った。その冷静な様子に、スミオがキレた。

「っ〜〜テメェ!!さっきから見てりゃ、何でそう落ち着いてられんだよ!!プスーカさん達が捕まったんだぞ!!?それとも何か!!!?冷静沈着なメアル様は、仲間が捕まった程度じゃあ神経一本動揺しねぇってのかよ!!!」


「動揺してるに決まってんだろ!!!!!!!!」


 スミオのマシンガンの様な啖呵は、しかしメアルのその感情剥き出しの叫びに一瞬で掻き消された。

「昇る太陽に入って以来、家族みたいに接してくれた人達がしょっぴかれたんだ!!動揺してねぇ訳がねぇだろうが!!!!しかも、今回プスーカさん達が捕まったのは、俺達があそこで情けなく気絶したせいでもあんだよ!!だってそうだろ!?俺達がしっかりやってりゃ、プスーカさん達のピンチは戦長によって救われてたんだからよぉ!!?」


 メアルの絶叫に、バトラーが目を丸くする。何故ならバトラーはメアル達を気遣って"そのこと"は言ってなかったからだ。

 そんなメアルに、スミオは声を張り上げる。

「そこまで分かってんなら、どうしてテメェは俺を止めんだよ!!!」



「ここでテメェが捕まったら、ゴンタさんやプスーカさんが、テメェを逃がした意味が無くなるからだろうが!!!!!!」



「っ・・・」

 スミオがその言葉に黙りこむ。

 そんなスミオに、メアルは少し口調を落ち着かせながら言った。

「・・・お前が、敵を討ちたいって気持ちは分かる。だが、その気持ちによって、ゴンタさん達の意思を踏みにじるのは、俺は許せねぇ。・・・それだけだ」

 

 沈黙が場を包む。バトラーの表情には影が差し、ザロックは俯き、コンコは今にも泣きそうだ。


「・・・悪ぃ」


 スミオが、ポツリと言った。


 今や室内は、室外の空に負けず劣らず、重苦しく曇っていた。




明日は晴れてほしいです。

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