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死後(デッドイン)  作者: 糞袋
第二章・番犬
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ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ

ゴリラって昔はUMAの一つだったらしいですね。もしかしたら今UMAだとされている生き物もその内このゴリラの様に、簡単に映像や画像や、あるいは動物園などで見ることのできる日が来るかもしれませんね。



「それじゃあダイゴちゃんの研修手続きも終わったし、私たち第四部隊の活動する五階に戻るわよ!」

 トップルームから退室して、マリオがそう言う。その時だった。


 サレムのズボンのポケットから、振動音が聞こえたのは。

「す、すいません! 何かメールが来たみたいです!」

 謝るサレムにマリオは微笑みながら言う。

「良いわよメールぐらい。・・・というか、誰からなのか確認しなくて良いの?」

「そ、そうですね! じゃあ申し訳ありませんが、メール内容を確認させてもらいます!」

 そう断ってから、サレムはポケットから黄色い折り畳み式の携帯電話を取り出し、メール内容を確認する。

「……あ……『天番(ヘブン)』からだ・・・」

 彼女はそう呟いて、あからさまに沈んだ顔をした。その様子に、ダイゴは隣にいるマリオに小声で聞く。

「……何か、サレムさんが見るからにテンション下がった雰囲気を醸し出してるんスけど……、天番って一体何スか……?」

 実は既に何度かダイゴは『天番』という単語自体とは対面している。しかし、その時はものの見事に聞き逃していたり、あるいは気には留めたが直ぐに脳から零れ落ちたため、まるで初めて聞いたかのような反応を示しているのだ。

 マリオは小声で返す。

「天番っていうのは簡単に言えば死界に存在する施設の全てを統治している組織のことよ。獄番も天番の傘下の組織の一つで、私達が貰っている給料は全て彼らが出してるの」

「へー、……んじゃあ何でサレムさんはあんな沈んだ顔してるんスか?」 

 ダイゴの問いにマリオは少し困った顔をする。そして、しばらく何かを考えてから口を開いた。

「……ごめんなさい。それはまだ研修生のダイゴちゃんには言えないわ」

「……了解っス」

 ダイゴがそう答えると同時に、サレムはメールを読み終わったらしい。申し訳なさそうな表情を浮かべながら、口を開いた。

「……すいません、天番からまた呼ばれたみたいです……。ちょっと行ってきます……」

「……そう。……頑張ってね」

「……はい」

 サレムはそう言うと、マリオ達の向かう方向とは違う方向に歩いていった。

「……じゃあ、私達も行きましょうか」

「……ウッス」

 二人は黒い廊下を渡り、来るときに利用したエレベーターに辿り着いた。

 

 エレベーターの中で、体の中身が上に引っ張られるのを感じながら、ダイゴは考える。

(……あの明るいサレムさんがあんなに暗くなるなんて……。天番って、何なんだよ……)

「……天番について考えてるの?」

「うぼえあうお!!?そそそそんな訳無いでございますで候う!!!!」

「……ダイゴちゃんって演技が下手よね」

 マリオはそう苦笑してから、続けた。

「……安心なさい。研修期間が終われば、教えてあげるわ。一般的でないことも、ね」

 そんなマリオの様子を馬鹿なりに察したのか、ダイゴは小さく頷いてから黙った。

 沈黙がしばらく続いた後、エレベーターが停止して、開く。するとそこには、赤い廊下が広がっていた。その深紅に対して、若干目の疲れを感じながら、ダイゴは外に出る。

「じゃあ、行きましょうか」

「ウス」

 二人は歩きだし、それから数十秒も経たずに、ある地点で止まった。赤い扉が、そこには存在している。

(……こいつは?)

 じっくりと見れば、その赤い扉には、『待機室』と書いてある白いプレートが貼ってあることが分かった。待機室とは何ぞやと、首を傾げているダイゴに、マリオが言う。

「ここが、第四部隊の情報の交換場所、『待機室』よ。ま、つまり休憩場所ね」

「なるほど」

 そうダイゴが相槌を打てば、マリオがその赤い扉を開いた。

「どうぞ入って」

「オッス、お邪魔しまーす」

 ダイゴはそう言って部屋に入る。部屋の中は先程の廊下とは違い、真っ赤では無かった。やはり、カラーチェンジが可能なのだ。

 大きなソファーが向かい合う様に二つ置かれ、壁には時計と電話が設置されていた。恐らく、通報に備えての物であろう。そんなことを考えてから、ダイゴは電話から視線を逸らす。

 その時、ソファーの背もたれの端から、靴の先が顔を出しているのが、ダイゴの目に留まった。

「おう? ソファーに誰か寝てるっスね?」

 回り込めば、案の上そこには人が寝ていた。マリオはそれを見ると、溜め息をついた。

「……ハァ、この子ったら。……起きなさいアッシュ!!」

「……んっだよ……。朝から五月蝿えなあ……。殺すぞゴリラ……」

 変声期最中の少年の様な微妙な低さの声で、物騒な言葉を吐きながら、アッシュと呼ばれたその人物は、片目を擦りながらムクリと起き上がった。

 その姿に、ダイゴはあることに気付く。

「ありゃ? ……女の子?」

 鼠色のパーカーと青い長ズボンを纏った、身長170cmくらいの少女がそこには居た。顔は割と中性的であったが、その胸の膨らみは女性のそれであった。ちなみにダイゴは胸で彼女を女性と判断した。結構失礼である。

 そんな無礼なエロハゲの言葉に対し、アッシュは眉に皺を寄せながら、その灰色の瞳でマリオを睨む。

「ああ? ……おいゴリラ。誰だこのハゲ」

「この子はダイゴちゃん、今日から研修生として第四部隊に配属されることになったから宜しく頼むわ。後、ゴリラじゃ無いわよ!!」

「ああハイハイ分かったよ。すまねえなゴリ姉」

「一文字違いで大違いぃぃぃ!!キイイイイ!!可愛いげの無い娘ね!!」

「ま、マリオさん落ち着いて欲しいッス!」

 怒り狂うマリオを宥めながら、ダイゴはアッシュの短い髪に目を奪われていた。アッシュはダイゴの視線に気付き、顔をしかめて言う。

「んだハゲ。言っとくが髪はやらねえぞ」

「人間の髪で作ったカツラなんて、怖くて手が出ないッスよ!」

 そうは言いながらも、やはりダイゴはアッシュの髪に目を奪われたままだ。彼女の髪は、仄暗い銀髪だった。ところどころ跳ねた短いそれが、冷たく鈍い光を放っている。

「ああ? 白髪がそんなに珍しいかよ。じろじろ見んな殺すぞ」

「え!?……あの、つかぬことを伺うっスけど、アッシュさん年はお幾つでいらっしゃるんスか……?」

「享年は16だ。文句あんのかコラ」

「い、いや。そんなこと……」

 アッシュの銀髪は、黒髪と白髪が絶妙に入り混じった結果、生じたものであるらしかった。その髪をわしゃわしゃと掻いて、面倒くさそうに顔をしかめる。

「だったらもう放っといてくれ。寝るからよ」

「コラ! 言った傍から、早速二度寝を決め込もうとするんじゃないわよ!」

 マリオが再び叱り付けるが、アッシュは聞く耳持たずだ。彼ら二人に背を向けて、ごろんと寝返りを打つ。

「全く、先輩なんだからもっとシャンとしなさい!」

 横から小言を言うマリオ。アッシュは気だるげに頭を掻き、再び顔をこちらに向ける。

「五月蝿え。こちとら低血圧で朝はやる気が起きねえんだよ馬鹿」

「馬鹿とは何よ馬鹿とは!」

「まあまあ、マリオさん落ち着いて! んで、……ええっと、アッシュさん! 若輩者ッスけど、宜しくお願いします!!」

「足引っ張ったら速攻で殺すからな」

 そういって、アッシュが鋭い眼光を彼に向けた。その灰色の光からは、冗談のようなものは何一つ感じられない。全身から嫌な汗を滲ませながら、ダイゴはたじろいだ。

(……いや、それでも俺は第四部隊でやってくんだ! 一度そう決めたんだから、俺は逃げねえ!)

 それでも、彼は現状を悔いることはせず、心の中でファイティングポーズを取った。

でもUMAは見つからないからこそロマンがあるのかもしれないですね。まあ僕はそうは思いませんけど。

そういえばゴリラの中にも同性愛者がいるみたいですね。

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