やはり死後の技術は世界一ィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!
一昨日ぐらいに高校の頃の友人が帰ってきました。ですが、明日にはもう行ってしまうそうです。分かってはいるけど、やはり少し寂しいですね。
「どうしたんDA? 鳩が豆鉄砲食らった様な顔しTE?」
呆気にとられているダイゴに、ボブはその何処かクレイジーな口調で問う。その口調が豆鉄砲の正体であるのにも関わらず。
ダイゴはポカンと開いた口を慌てて元通りにして、答えた。
「い、いえ!何でも無いッス! ただ、ちょっとボブさんのテンションがあまりにもイメージと違ってたんで……」
「良く言われるYO! なんせMeは『死界ギャップ大会』一位の男だからNA!」
「え! マジッスか!?」
「嘘よ」
ボブの言葉を鵜呑みにしかけるダイゴに、マリオが言う。嘘を吐かれたことに、彼はショックを受けた。これから上司になる人間が嘘つきではたまらないと、ダイゴは抗議する。。
「ちょっとボブさん! 嘘は言っちゃ駄目ッスよ!」
「軽いジョークだYO! でもYouはラッキーだZE? なんせMeはジョークを殆ど言わないからNA! 驚くなかれ、Meのジョークのペースは一年に一回あるか無いかだYO!」
「え! マジッスか!?」
「嘘よ」
「ボブさん! 嘘は言っちゃ駄目ッスよ!」
ダイゴ、再び騙されかける。この男、全く学習しない。鳩以下である。
「まぁまぁ落ち着きなYO! 別にこのジョークはただYouをからかう為に言ってるわけじゃないZE? このジョークはYouをリラックスさせる為のものなんだYO!」
「マジッスか!? 流石獄犬のトップ! ちゃんと考えて行動してたんスね!!」
「嘘よ」
「もう何も信じない!!!」
三度騙されかけるダイゴ。仏の顔も三度までというが、彼の場合怒りよりもショックが大きかったようだ。今にも膝から崩れ落ちそうである。そんなダイゴに笑いながらボブは言う。
「HAHAHA! いやあ、Youは中々素直だNE! ジョークをかます甲斐があるYO!」
「うごご……! からかわないで欲しいッス! 」
苦い顔をして、ダイゴは言う。騙されるたびに己の馬鹿さ加減に気付くため、これ以上のジョークをかまされたくはなかった。
そんな彼に対して、ボブは笑ってから、一つ咳ばらいをする。
「さて、このまま延々とジョークをかまし続けるのも良いが、それじゃあ“天番”に怒られちまうし、そろそろ普通に獄犬の説明と行くYO!」
「お、オッス!宜しくお願いするっス!」
気を取り直して、ダイゴは頭を下げる。やっと自分の欲する情報が手に入りそうだと、彼の顔はほっとしていた。
「獄犬の給料は月に四十万くらいだYO! んで、更に悪人を逮捕するとボーナスが支払われるんだYO! ちなみに、ボーナスの額は悪人の危険度によって変動するYO!」
「……四十万ってのは、DPでの数えですよね? 一体、どんくらいの価値なんスか? 」
いまいち死界における通貨の額の感覚が掴めていないダイゴは、そう言って首を傾げた。
「死界でのアパートの家賃が大体四万から五万だから、割と良い給料だと思うYO! ちなみに、部隊長クラスになると月給は更にアップするから、飯とか奢ってもらうと良いYO!」
「ま、マジッスか!?」
「嘘よ」
「嘘じゃないYO!? ちょっとマリオ! そういう出鱈目言うの止めてYO!」
唐突なマリオ介入に慌てるボブ。そんなボブをスルーして、マリオはダイゴに言う。
「ちなみに、任務中に死亡した場合の蘇生代は、特別な例を除けば月給から引かれるから注意してね。でも、犯罪者の蘇生代よりは安く済ませてもらえるから、そこは安心して頂戴。……あと、ボブさんはこんなこと言ったけど、あんまりご飯をたかっちゃ駄目よ? 相手が奢ってくれるって言った時にだけ、ご馳走になりなさい」
「お、オス……」
それもそうだと思う反面、心の隅っこで残念な気持ちが滲む。その時、嫌な予感がして、ダイゴはサレムの方を向いた。彼女は苦笑いをしていた。私にはたからないでくださいね、とでも言うように。
形容しがたい居心地の悪さを感じて、己の後頭部を掻くダイゴに、マリオが言う。
「……じゃ、獄犬の説明も終わったし、そろそろ研修手続きしちゃいましょう」
「ん? もう手続きしちゃうNO? 分かったYO。それじゃダイゴ、Youの情報の把握をしたいから、チップを出してくれYO」
「……チップ……ってのは、あの青いやつッスか? 死者の家で貰う、あの?」
「ザッツライト! って言っても、チップの出し方が分からないかもNE。チップは胸に手を当てて、魂を胸から引きずり出すようなイメージをすると、出てくるYO。ってことで、レッツトライ」
「こ、こうっスか?」
言われた通りにやると、なるほど手に吸い付くような形で、青い光を放つチップが胸から出てきた。その輝きに一瞬目を奪われる。青い光の美しさには、死んだばかりのダイゴは、まだ慣れていないのであった。若干名残惜しさを感じながらも、それをボブに渡す。
青い光を右手の中に、ボブは懐から黒い何かを取り出すと、それに耳を当てた。どうやら携帯電話の様だ。
「……Heyエジ! 元気にしてRU? 最近夫婦仲は良好かI? あ、ごめん切らないで切らないDE! それなりに重要な用事なんだYO! あのチップ読み込み用のアレ、持ってきてくれないかNA? ……OH有難U! じゃあ至急頼むYO!」
ボブはそう言い電話を切る。それから、ダイゴに言った。
「ちょっとジョークを掛けただけで電話を切ろうとするんだZE? 神経質な奴だと思わないKA?」
「陰口を叩くなんて、君らしくないなボブ。帰るよ私」
そんな言葉と共に、誰かがトップルーム内に出現した。164センチ程の痩せた体には、青白い上着が羽織われている。後退した生え際のせいで露わになっている額には、濃い皺が刻まれている。その髪は、雪のように白かった。突如現れた小柄な老人におったまげたダイゴは、大口を開いて大声を出す。
「うおあ!? だ、誰ッスかアンタ!?」
「誰って、私は獄番の技術部署『爪船』のリーダー、エジシュタインだけど……。ああ、君が新入りさんか」
「あ、はい。大山大悟って言います。よろしくお願いします」
律儀に生前式の自己紹介をしてから、ダイゴはエジシュタインに問う。
「もしかして、今のテレポートみたいなのは……」
「それは私が開発した『移動機』によるものだね。これは空間移動系の心象を再現した機械装置なんだ。これを使えば、任意の場所に一瞬で移動できるよ。……まあ、これは移動距離を短くする代わりに、消費するDPを削減した特別版なんだけどね。詳しいことを言えばこれは」
「STOOOOP! エジ! 非常に知的好奇心を刺激されるけど、その話はまた今度お願いするYO! 今はチップの読み込みが先だからNE!」
「む、それもそうだね……」
初老の男性はそう言うと、薄手の上着のポケットから、何やら白いものを取り出した。よく観察すれば、それは銃のような形状をしている。ダイゴは慌てた。
「ちょ! エジシュタインさん落ち着いて下さい! 一体それで何する気ッスか!?」
「落ち着くのは君の方だよ……。安心しなさい。これに人を傷付ける機能はないよ。もっとも、鈍器として使用するなら話は別だがね。……ま、見てなさい」
そう言って、エジシュタインはその銃に似た装置の、カードリッジに似た部分に青いチップを差し込むと、ボブに向けて引き金部分を引いた。すると、青い光が銃口部分から放たれ、ボブの体に吸い込まれていった。思わず目を見張るダイゴを他所に、彼は何事もないように口を開く。
「……なるほど、心象は強化系の『強力』、享年16、誕生日2月9日で、生前の家族構成は祖母父母妹二人KA。うん、良い意味で普通だNE!」
「え!? 何故知ってるんで……ってハッ!? もしやその銃みたいな機械の効果は!」
「恐らくご明察だよ。この機械は『追憶機』。そのチップの情報を圧縮し、青い光に変化させて射出することが出来るんだ。で、その光が着弾した対象に、全情報を伝えるという訳。どうだい、大発明だろ」
説明しながら、エジシュタインはチップを抜き、それをダイゴに渡す。彼は死者の家でやったように、その青いチップを胸に当てて、己の中に吸収した。
「ん?」
その時だった。ボブが不意に、そんな声を漏らしたのだ。しかし、ダイゴがボブの方を見れば、彼は既に何事も無かったような、穏やかな表情になっていた。
「どうかしたのかい?」
エジシュタインが、視線を目の前の黒い肌に向ける。
「何でもないYO。ただ、新しいジョークを思いついたんだけど、我ながらこれはシットな出来だなって思って、溜め息が出ただけSA」
「じゃあいつも言ってるジョークに対しては、君はシットな出来だなんて思ってないってことかい? これはたまげた。是非その脳味噌を見せてもらいたいもんだ」
「HAHAHA! そのジョーク、笑えるYO!」
そう言ってエジシュタインをいなした後、ボブはダイゴの方を向いた。
「じゃあとりあえずこれで研修手続きは終了だから、最後にYouの入りたい部隊を言ってくRE!」
「第四部隊ッス!!」
待ってましたとばかりにダイゴは即答する。ボブは笑って頷いた。
「分かったYO!じゃあとりあえず、研修中の部隊は第四部隊で決定と言うことDE!」
「オッス! 宜しくお願いします!!」
そう言って、深くお辞儀をする。マリオはそれを確認すると、口を開いた。
「じゃあ私達はこれで失礼します。サレムちゃん、帰るわよ」
「分かりました! じゃあダイゴさんも行きましょう!」
「ウス! んじゃあボブさん! 今日はありがとうございました!!」
そう言うとダイゴ達三人はトップルームから退室する。それに続く形で、エジシュタインもその場から姿を消した。
「それで、仕事の報告ってのは何だYO!ヒーカン!ミール!」
「ヘい!今回の仕事なんですがね……」
そんなことよりラムネが食べたい。無性に。