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死後(デッドイン)  作者: 糞袋
第二章・番犬
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意味有り気なものに限って大した意味はない

 バルス

「……じゃあそろそろ、ダイゴちゃんの入隊手続きをしに、『トップルーム』へ行きましょうか」

「お供しますぜ。俺もそこにさっきの犯人逮捕の報告しに行かなきゃなんねえんで」

「? トップルームって何スか?」

 ダイゴは首を傾げる。そんな彼に対し、ミールが快く説明をしてくれた。

「トップルームっていうのは獄犬第一部隊隊長、つまり獄犬のトップが居るところだよ。その人は、この地区の獄番のトップも兼ねているんだ」

「へー、そうなんス、じゃねぇや! そうなんだ!」

 慌てて俗っぽい敬語を引っ込めるダイゴ。ミールは再び苦笑した。そんな彼に、気を取り直して坊主頭は質問を続ける。

「んで、そのトップルームってどう行くんだ? てか、それってどこにあるんだ?」

「トップルームは、この八階から成る建物の、最上階にあるよ。ちなみに、ここは五階ね。だから、エレベーターを使うよ」

 そう言って、ミールは先程自分達が使っていたエレベーターを指さした。その先に向かって、マリオ達もぞろぞろと歩く。

 エレベーターの中で、ダイゴはマリオに問う。

「八階にトップルームがあるのは分かったんスけど、じゃあ五階には何があるんスか? さっきの病床だけ?」

 ピンクのアフロが左右に回る。

「いいえ。病床はこの建物の全ての階にあるわ。……そうね、じゃあこの獄番という建物の構造から説明しようかしら」

「お願いします!」

 ダイゴはそう言って再び礼をする。五人が乗っているのにも関わらず、エレベーターには腰を曲げれるほどのスペースがあった。かなり広い。

「獄番が八階建てだっていうのは、さっきミールちゃんが言ったわよね。その一階一階に、病床と獄番、それに加えて獄牢と『爪船(ナグルファル)』って施設が、それぞれ存在しているのよ。そのどれもが同じくらい広いから、この建物は外から見て、立方体の様な形になってるのよ」

「な、成る程」(爪船って、何だ? てか、よく考えりゃ獄牢ってのがどんなところかも、まだ分かんねえし)

「爪船は獄番専用の技術開発局の様なものです。私達の仕事に役に立つ道具を、色々と作ってくれるんですよ。獄牢というのは、獄番備え付けの刑務所みたいなところです。捕まえてきた犯罪者を、そこに収監するんです。ちなみに裁判などはしません。その人がどのようなことをしたのか、獄番の中に存在している機械で、全て見通せますから」

「……ありがとうございます」

 タジタジになるダイゴ。そんな彼を救うように、エレベーターが目的地に着いたことを、機械音で知らせる。五人は外に出た。

 目の前には、やはりというべきか、白い廊下が広がっていた。

「ここは八階にある病床です。病床は天井も廊下も壁も、全て白で構成されているんです」

「ってことはつまり、病床以外の色は違うってことッスか?」

「勘が良いですね。その通りです。獄犬は赤、獄牢は黄、爪船は青で、その天井や廊下、壁を構成されています。まあ、落ち着かないからという理由で、獄犬は自主的にカラーチェンジをしたりもするんですけどね。他の部署と違って、ある意味で独立している感じがありますから」

 成る程。確かに、獄番全体や、あるいは犯罪者などの第三者などに影響を及ぼす他の三つと違い、獄犬は外以外でなら、他のところと隔絶されているのかもしれない。そんなことを思ってから、ダイゴはマリオに問う。

「で、これからどうやってトップルームに行くんスか?」

「渡り廊下を使うのよ。部署同士は、それによってつながっているからね」

 そう言って、マリオは歩き始めた。それに続く形で、残りの四人も足を動かす。すると、すぐに灰色の渡り廊下が見えてきた。どうやらそれが、獄番を繋ぐ存在らしい。

 灰色が過ぎれば、そこには黒が広がっていた。ダイゴは目をパチクリさせて、サレムに問う。

「え? ……赤でも、青でも、黄色でもないんスけど、ここ」

 その質問に答えたのは、ミールであった。

「トップルームのあるところは特別なんだ。なんせ、獄番のトップのいる、獄犬部署だからね」

 成る程、だから他の色とは違う黒色で、ここは構成されているのか。分かったような分からないような、そんな感覚に囚われてるダイゴに、ヒーカンが声を掛ける。

「ほら、呆けてる場合じゃないぜ。目的地は目の前なんだからよ」

 その言葉通り、目と鼻の先に、その扉はあった。上の部分に、現世には存在しないような言語で、それでいて何故か理解できる言語で、『トップルーム』と書かれている。

「な、何かいかにもトップの人が居そうなとこッスね……」

 ダイゴはその扉に気圧される。黒一色で構成されているその扉には、筆舌に尽くしがたい荘厳さが漂っていた。扉自体からではない。扉の向こうに存在している、空間から滲み出ているのだ。一体、この先に誰が居るのか。ダイゴは気になった。

 そんなダイゴの隣で、ヒーカンが扉をノックする。

「すんませーん。第六部隊ヒーカンとミールでさあ。仕事の報告に来やした」

「第四部隊のマリオとサレムも居ます。研修の手続きに来ました」

 ヒーカンとマリオがそう言うと、黒い扉がひとりでに開いた。五人は部屋に入る。

 部屋は外の色と違い、普通の色合いの内装をしていた。サレムの言う通り、獄犬の部署の中のカラーリングは、変更可能らしい。そんな普通の空間の中に、荘厳を揺蕩わせる存在がいた。

 それは、黒い大きな机と、そこに佇む黒人の男だった。男はスキンヘッドで尚且つとても筋骨隆々で逞しい体をしており、身長は190cmはありそうであった。身長だけで言えば、ヒーカンのそれも196cmあるのだが、体に纏う重圧が彼とは桁違いだった。その顔つきはかなり強面で、眼つきの鋭さは猛禽類のそれを思わせる。男の雰囲気に、ダイゴは完全に呑まれてしまった。膝が震える。奥歯が鳴る。汗が滲む。

「ボブさん、この子が今日から獄犬で研修を受けることになった、ダイゴです」

 マリオが男にそう言った。どうやら、男の名前はボブというらしい。ボブはその言葉を受けて、ダイゴに視線を向ける。その眼光に射抜かれ、ダイゴはチビりそうになるが、それを何とかこらえて、頭を下げた。

「き、今日からお世話になることになりましたダイゴです!! どうか宜しくお願いします!!」

 そんなダイゴに、ボブが口を開いた。


「Oh!こりゃあ活きの良いルーキーが入って来たじゃねえKA! おっと、自己紹介がまだだったNA!Meはこの獄番のTop! ボブってんDA! 宜しく頼むYO!」


「……へぁ!?」

 映画に、というより金曜ロードショーに出てくるような、陽気な黒人がそこには居た。


 勿論前書きの滅びの呪文にも意味はありません。ところで、今年のラピュタは夏休みのいつぐらいにやるんでしょうか。

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