③
生理的な涙で視界が歪んじゃったじゃないか!
「なにするのさ雑魚長のくせに!!」
「あぁ? その雑魚の下についてる馬鹿が何言ってやがる!!」
「ふーんだ! ボクは馬鹿じゃないもん! 力だって誰にも負けないくらい持ってるもーん!!」
巨大魔法とかバンバン使えるんだからな!
接近戦も得意なんだぞ!
でも、おかしいな。
タコ長はボクの実力。
誰よりも良く知ってると思うんだけどなぁ……。
「こんのっ馬鹿たれ!! お前のせいでこんなことになってるんだろうが!!!!」
「ボク知らないもん! 起きたらこうなってたんだ!!」
だいたい。
目を開けて空が見えるとか、おかしいでしょ?!
誰だよ!
こんなことしてボクに罪着せた奴!!
見つけたらただじゃおかないんだから!
「お前が寝ぼけたまま巨大魔法ぶっ放すからだろうが!!!!」
「はぁ?! 何言ってんの? 寝言ははねていいなしゃい!」
「訳分からんわ!! 間違えるか噛むかどっちかにしろ!」
タコ長は細かいな……。
これぐらい脳内変換してよね!
「わかった。寝言は寝ていえ!!」
「おまえがな!!」
――――スカコ――――ン!
「痛! もう、その汚い靴で頭叩かないでよ!」
まったく。
また踵で叩かれた……。
ボクの頭が踵の形に凹んじゃったらどうしてくれるのさ!
てか、タコ雑魚長。
いつの間に靴脱いだの?
あれ?
なんでタコが疲れた顔してんの?
タコに表情なんて作れたの?
あ。
こいつ今。
人型の魔族で、髪が赤いだけだったわ~。
ほかに人間と違う所って言ったら、縦長の瞳孔と、髪と同じ赤い目。
おまけに、このタコ長の姿は、偽りね!
本当の姿は赤い大きなタコだから!
嘘じゃないぞ。
ホントだよ!
だって、おいしそうだなって思って見てたら、タコ長ったら、顔引きつらせてその姿をつ・ね・に!
とるようになったんだよ?
……タコって、生で食べてもおいしいよね。
焼いてもいいよね!
あ。
煮ても最高!
じゅるり……。
「おい、馬鹿ニオ。俺を見て涎を垂らすな」
「え? あ、これは失礼――。そうだ! 隊長、足一本ちょうだい! 丸かじりするから!」
「ふざけんな! なんでお前に足をやらねぇといけねぇんだよ!!」
「良いじゃん。どうせすぐに再生するんだし!」
魔族だし、なんせタコだもんね!
むふふ。
タコのお刺身、タコのマリネ、タコのカルパッチョ……。
素揚げ。
あ。
軽く炒めて食べるのもいいよね~。
「……もう、俺。こいつの相手無理だ…………。バイアズ。すまんが後、頼む……」
「あ、はい。了解ッス」
あ!
ボクの食料がどっか行こうとしてる!
「待って、タコ長! どこか行く前に足一本置いてって!!」
「っ~~! 死ねぇぇぇぇぇえええ!!」
――ギュオォン!!
飛んできたのは、大きな氷の塊。
それはボクの頭上に――って!
うわ!
危なっ!!
……なーんちゃって!
ベットからひょいっと抜け出せば済むもんね。
………………あ。
氷砕いた方がましだったかも……。
「ちょっとタコ長! ボクのベット粉々になっちゃったじゃん、どうしてくれるのさ!!」
そう。
今ボクの目の前にあるのは、大きな氷につぶされて、見るも無残な姿になった。
血まみれの木製ベット。
……なんで血まみれ?
あ。
そう言えば、後頭部がじくじく痛い様な気がする。
なんとなく確認のために、手で後頭部を軽く触ってみた。
……鋭利な何かで刺されたみたいになってる。
どのくらいの出血量かな?
そう思って、傷口を触ってた手を見た。
うん、真っ赤だね!
それと出ちゃいけないなにかも出てるっぽい。
人間だったら即死だよ、これ。
まぁ、ボクは魔族だから死なないけどさ!
そんなことより。
タコ長め!
ボクに今夜どこで寝ろってのさ!
文句言ってやる!!
「って、あれ? 雑魚タコ長どこ行った?」
辺りを見回すけど、どこにもいない。
傍に居たバイアズに聞いたら。
めんどくさそうにため息つかれた。
「何なんだよ。まったく」
「……お前の場合。自業自得な」
「はぁ? 何だよそれ? 訳わかんないんだけど!」
まったく。
バイアズまでそんな訳わかんないこと言うし!
二人とも何がしたいのさ!!
「……サンダニオ。手」
突然バイアズがそう言って、ボクの手を指さした。
だから、ボクは血まみれの片手と、そうじゃない手を良く見える高さに上げる。
「? 手がどうか――……おりょ?」
血まみれの右手・掌。
そこに浮かび上がってる赤い文字の様な、複雑で変な丸い陣。
左手にも同じような丸い陣。
色は青。
ボクの知る限りでは、これは巨大魔法を発生させたらしばらく出てるモノ。
「あは! やっちゃった!!」
「……この惨事を、それで片づけようとするお前が信じられねぇよ…………」
そう言ってバイアズはため息をついたのだった。
まったく。
失礼しちゃう!




