②
「ハッ! っ……ヤな夢…………」
まったく。
なんで、千六百八年も前の事。
夢で見ないといけないのかな…………。
ホント、不愉快なんだけど。
…………あれ?
見慣れた天井と壁が何もないよ?
おかしいな……。
ボク。
昨日ベット、外に持ってって寝たんだっけ?
しかも回りが荒野て……。
変なの!
あ。
もしかして、昨日お酒飲んだのかな?
ボク、お酒メッチャ弱いんだよね……。
だから、お酒使ってあって、そのお酒が蒸発してないお菓子なんて、イリコリ――じゃなかった。
イチコロなんだよね……。
「って、あれ? ボク、昨日お酒の入ったモノって、食べたっけ?」
記憶にないんだけど、まあいいか。
嫌な夢見たし……。
「あの時失敗した人狼たちの殲滅。してこようかな……」
ボクは寝てたベットからむくっと身を起こす。
――――ガゴン!
「痛ぅ~~」
か、顔!
顔面になんか飛んできた?!
って、あれ?
この見慣れた、底と踵が鋼鉄製の靴は……。
あの雑魚長だな!!
痛いじゃないか、こんちくしょう!!
「俺がお前を抹殺してやろうか。サンダニオ」
靴が飛んできた方から、あの雑魚タコの声。
あ。
『長』つけるの忘れた!
なんて思いながら、そっちを見たら……。
なんかタコ長。
額に青筋浮かべてる。
まぁ、それはどうでも良いけど。
ボク、顔がめちゃくちゃ痛いんですけど!
もう。
こうなったら仕返しだ!!
「どりゃあ!!!!」
――――グゥォン!
え?
何の掛け声で、何の音かって?
もちろん、雑魚タコ長めがけて靴を投げ渡したんだよ?
音はその時出た音だよ。
え?
思いっきり狙ったんじゃないかって?
いやだな。
ばっちり命中さ!
もちろん顔面にね。
いい気味だ、ざまぁみろ!!!!
ふっはっはっはっは!
「あっれ~? 隊長ー、顔に靴。刺さってますよぉ? どうしたんですか~ぁ?」
いひひひひひひひ!
あ。
タコ長の鼻から血だ。
うわぁ~。
なんかやらしいこと考えてたんだ~。
気持ち悪――――。
「るぅがぁ! っ~~~~~、いったぁ……」
何?!
なんで後頭部に衝撃?!
「その辺にしとけ。サンダニオ……」
いかにもだるそうで、めんどくさげな声が後ろから聞こえた。
振り返ります。
後ろには、短い藍色の髪に、金の瞳。
手には血の付いた長い包丁に、返り血に染まる白い服の男。
はい。
ボクの友達・バイアズです!
「なんでバイアズがボクの部屋に居るの?」
「元、な。今はお前のせいで荒野だ」
「てか、なんでその手は血だらけ?」
「あぁ。さっき、思いきり上官に対して暴言吐いてた馬鹿の、息の根を止めやろうと思ったんだが、無理だった」
「へー。そんな馬鹿居るんだぁ~」
てか、そんなやついないでしょ~。
「お前だよ。馬鹿ニオ……」
「ん……? 『ばかにお』? 何それ」
「『馬鹿でどうしようもないサンダニオ』の略称だ」
「へ~」
サンダニオって、ボク以外にもいたんだ!
初めて知った。
「お前だっっつの!!」
――――スコーーーン!
……頭頂部が、痛い…………。
てか、タコの再生力パネェ……。




