とりあえず生きてみる。後は気にしない。
これは、人間に戻れるその日を目指して生き続ける竜のお話。
次に暖まろう。
辛気臭くなっていても何も変わらない。
………それに、俺には親がいないらしい。
物心ついてからもう3か月経つというのに俺以外この洞窟には何も存在しない。
ネグレクトは犯罪ですよー。なんて言っても誰も来ない。
むしろ虫さえもいない。寂しい。
…………今頃気が付いたが、誰かいたら頭おかしい人と思われるな。
ある意味ラッキーか。アンラッキーでしかないけど。
………………昔読んだことがあるファンタジー物の小説には、ドラゴンの鱗は高値で売れるとか。
その小説はかなりほのぼのとしていたので、気兼ねなく読めた。
けれど、俺の目の前の現状を見る限りそうは思えない。
なぜなら、脱皮するたびに大量に出るからだ。
…………高級品特有の有難味を感じない……
なので少し前に洞窟に穴を掘った。
そこに鱗を放り込む。………なんかあったかい。
どうやらこの赤い鱗は発熱しているようだ。
一枚一枚の生み出す熱は微弱だが、こうやって熱をこもらせると、
気持ちいい位にあったかい。
「ぐるるー」
……わかってたよ、声帯どころか種族自体が違うんだから声なんて出せないですよね!
工藤柚葵、三か月。現火竜。只今絶賛、異世界で暖を取ってます。