月とウサギと三色団子と
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推敲版を掲載。
月見というのは、本当なら秋にしたほうが風情があっていいと思うのですが、なんだか突然お団子が食べたくなってしまったので、急遽スーパーで買ってきました。
季節はまだ夏に入ったばかりなのですけれど、まあ、食欲にはそんなの関係のないことですし。幸いにも今日は満月。夜空も晴れて、綺麗なお月様がどっかりと居座っています。もっと田舎ならばたくさんの星と一緒に見えていたはずなのですけれど、都会の空では月が輝くので精一杯の様子。まるで黒い画用紙にぽたりと黄身を落っことしてしまったかのような有様。
それでも、なかなかどうして、お団子の肴としては申し分なかったりします。
上を眺めながらもぐもぐするのも悪くはないですが、実は私の家の庭にはちょっとした池がありまして。そこにちょうど月が映っているのを観賞するのもまた、乙なものです。
ゆらゆらと揺れる水面で、ふにゃふにゃと表情を変えるお月様。そういえば、月の表面には様々な方々が住んでいらっしゃるようで。日本ではよくウサギが餅をついていると言いますね。他には、少女がバケツを運んでいたりとか、おばあさんが本を読んでいたりとか。はたまた、大きなカニさんもいらっしゃるんですって。まあ、正直な話、私にはロールシャッハテストにしか見えないんですけど。それを友人に言ったらドン引きされました。なぜでしょう?
とまあ、そんなことを思いつつ、ぼんやりと団子を食んでいたときのことでした。
水面で踊るお月様が、すっと消えてしまったのです。
それ自体は怪奇現象でもなんでもなく。ただ、映っていた位置に誰かが土足で踏み込んできたものですから、月の姿が隠れてしまっただけの話です。
が、重要なのは、アメンボみたく水面に靴が浮かんでいるということで。その靴には、足が突っ込まれていて。
つまりはどういうことかというと、水の上に立っている人がいるのです。
「……」
これはひょっとして、夏の夜の風物詩、心霊現象ではないかと一瞬ひやっとしたのですが、恐る恐る視線を上げると、すぐに呆気にとられることになりました。
「……ウサギ?」
そう、ウサギの耳。
通称ウサ耳というやつです。
何の冗談か、頭のてっぺんにウサ耳をくっつけたスーツ姿の青年が、じっとこっちを見ていたのです。
……右手に、三色団子を持ちながら。
「……」
もぐもぐと団子をほおばっているそのウサ耳青年は、じっと黙って私を見つめています。
「……」
私もまた、じっと彼を見返すことしかできません。
本来なら、不法侵入だとか変質者だとか、とにかく色々な理由で通報すべきなのでしょう。それか、すぐにでも逃げ出すべきです。
ところが、水の上に立っているというちょっとしたファンタジー要素が、私の逃走するタイミングを奪っちゃいました。おまけにずっと団子を食べ続けるその顔は、まったくの人畜無害というべきでしょうか。とにかく落ち着き払った、というか、あまりにもぼんやりとしているものですから、逃げなくてもいいんじゃないかなーと直感が呟いていました。
そういうわけなので、ここで発生するのは無言のにらみ合い。
「……」ウサ耳さん、もぐもぐもぐ。
「……」私、じーっ。
「……」ウサ耳さん、もぐもぐもぐもぐ。
「……」私、じぃーっ。
ああ、うん。
シュールだなぁ。
とにかく、このままじっとしていても埒が明きませんから、私はちょっと勇気を出すことにしたのです。
「……あのー」
と、おっかなびっくり声をかけたところ。
「ん?」
と、ウサ耳さんは表情を変えることなく応じてくれました。
「えーっと、その、色々と言いたいことはあるんですけど」
「うん。何かな」
「あなたは、どちら様でしょうか?」
まず基本的なところ、身元確認です。
私の質問に、ウサ耳さんはそのウサ耳をぴょこぴょこと動かしてから、
「僕は、ウサギさ。ほら、耳があるだろう?」
「いや、まあ、それは分かりますけど」
作り物じゃあなさそうです。
現実離れしすぎていて納得したくない状況なんですけど、頬をつねったところで夢から覚めるわけでもなく。とりあえず、目の前の摩訶不思議な存在は実在する、と前提しておきます。
「なんでスーツを着てるんですか、とか、ウサ耳を付けた人間じゃあないんですか、とか、どうやって水の上に浮いてるんですか、とか聞きたいことは山積みなんですが……」
「そんな細かいことを気にしていちゃあ、将来シワが増えちゃうよ?」
むっ。
「余計なお世話です」
しれっと失礼なことを言ってのけるウサ耳さん。
さてどうすべきかと手をこまねいているうちに、ひとしきり団子を堪能したのでしょう。ウサ耳さんは一息ついてから、池の上を歩き始めました。こっちに近づいてきます。
「ちょっと疲れちゃったな。隣、座っていいかな?」
「ええ、まあ……」
あまりに自然な調子だったもので、私は頷いてしまいました。
ウサ耳さんは勝手知ったる他人の家、とばかりに私の隣に腰を下ろします。ふわっと香ってきたのは、甘い匂い……草原に咲いている花を連想させるような。
「いまはね、実はちょっとしたレースの途中なんだ。けれど、なんだか飽きてきちゃって。休憩中ってところだよ」
ぼんやりとしたまなざしで、ウサ耳さんは夜空に光る黄色い円盤を見つめています。
「はあ、レース、ですか?」
「うん。聞いたことないかな、ウサギとか、ウシとか、色々な動物が競走するんだけど」
「……それって」
まさか、と思いました。誰でも一度は聞いたことがあるんじゃあないかという、あの有名な中国のお話です。
「十二支、ですか? お釈迦様のもとに新年の挨拶をしに行くっていう、あの?」
「んー、ま、起源はそんなところかな」
「えーっと、ということはつまり、あなたはいま、お釈迦様のところへ急いでいる途中、なんですか?」
「んー、ま、ちょっと違うけれど、似たようなものかな」
要領を得ないウサ耳さんの答えでした。
私は頭の上に「?」をお団子の数ほど浮かべていたのでしょう。ウサ耳さんはちらりと視線をこちらに向けると、とつとつと語りだしたのでした。
「神様って、実はそこらじゅうにたくさんいるんだけれど、その中にもとくに物好きの神様がいてね。ときどき、こうやって僕たちにレースをさせるんだ。毎回、ちょこちょこと内容が違うんだけどね」
日本には古くから八百万の神という言葉がありますし、そんな愉快な神様がいても、おかしくはないのでしょうけれど。
「他にも、えっと、ネズミさんとか、ウシさんとかも参加しているってことですか?」
「まぁね。きっと彼らはもうゴールしているだろうけれど」
「あなたは急がなくていいんですか、そんな大事なレースなのに」
「んー、トラがゴールしたら、僕も動き出そうかな。それまではちょっと休憩」
ふわぁ、とあくび。それから伸び。
なんて怠惰なウサギさんなんでしょうか。
まあ、とにかくこのウサ耳さんの素性はちょっとですが明らかになりました。神様主催のレースに参加なさっているということは、そこそこ崇高なお人(?)なんでしょう。しかし失礼ながら、そんな威厳や風格はこれっぽっちもありません。
「ウサギさんって、かけっこが好きなイメージとかありますけど。ほら、ウサギさんとカメさんが競走する、って昔話もありますし」
「えっ、そんな古い話、どうして知っているの?」
耳をぴんと突っ立てて、ウサ耳さんは驚きに驚きを重ねたような顔を向けてきました。その新鮮な反応は、私のほうも少しびっくりしてしまったほどです。
「どうして、って……誰でも一度は聞いたことがある、有名な昔話ですよ」
「むう、いったい誰なのかな、プライベートな話を語り継いだのは」
「まさか、それもあなたの話なんですか?」
「うーん、そうなんだけど。誰にも教えたつもりはないのになぁ」
いかにも不満そうに口を尖らせるウサ耳さん。そんな様子に、私はつい噴き出してしまいました。
ウサ耳さんは当然、いぶかって首を傾げます。
「どうしたの? 何か、おかしなこと言ったかな?」
「いえー、ちょっと反応が可愛かったものですから、つい」
まるでスキャンダルを報道された芸能人のような言い草でした。ひとしきり声を殺して笑っていると、ウサ耳さんはちょいちょい、と私の肩をつついてきます。
「ねえ、それって、どんな昔話なの?」
「えーっとですね、ウサギさんとカメさんが、山のふもとまで競走するっていう話なんです。それで、やっぱりウサギさんがとても速く進んじゃうんですけど、あまりに余裕がありすぎたものですから、ウサギさんは途中で油断して寝てしまうんですね。その間に、カメさんがウサギさんを追い越して、ゴール地点でドヤ顔してる、っていう感じのお話です」
多少の脚色には目を瞑るとして、大体はこんなあらすじでしょう。
……あれ? そういえばこのお話って、日本の御伽噺じゃなくてイソップ童話でしたっけ? ということは、このウサ耳さんもイソップさん?
「はぁ、なんだか随分と好き勝手に言われてるんだねぇ」
困ったような、あるいは、どこか楽しんでもいるような。そんな苦笑を浮かべて、ウサ耳さんはしみじみと頷きます。
「事実は、違っちゃってたりするんですか?」
「うん、きみのお話は、これっぽっちも合ってないよ。僕とカメとが競走したというのは、まあ事実だけれど。先に誘ってきたのはカメのほうだよ」
「へぇ、そうなんですか。でも、どうして競走を?」
「あれはね、とても自分を磨くことが好きなやつだったんだ」
記憶の彼方にある光景を眺めるように、ウサ耳さんは夜空に視線を移したのでした。
「カメは、とにかく自分を鍛えて鍛えて強くなりたい、そんなことばかりを考えていた筋肉だるまでね。本当は甲羅なんて必要ないものなのに、あれを背負っているといいトレーニングになるとか言って、無理に背中にくっつけたんだよねー」
衝撃のカミングアウトその一。カメさんにとって甲羅はトレーニングギプスのようです。
「まあ、僕が彼と競走したのは、まだ甲羅が背中にくっついていなかった時代の話なんだけどね。岩の塊みたいな甲羅を背中に乗っけて、おれの特訓に付き合えー、なんて言ってきたんだよ。もちろん、僕は断ったんだけどね。暑苦しいの嫌いだし、あのカメ顔こわいし」
衝撃のカミングアウトその2。カメさんに甲羅のない時代があったんですって。
カメさんはいったい何者なのでしょう。ウサ耳さんがサラリーマン風の好青年ですから、現代風に直すと……。なんだかカメさんの外見はプロレスラーみたいなものを想像してしまいます。プロレスラー、タートル・亀田。うーん、ボクシングの亀田某さんと違ってなんだか弱そう。
「けれど、競走に付き合えばお団子をくれるって言うものだから、仕方なく協力してあげたんだ。山のふもとまで、っていうけれど……どれぐらいだったかな、結局、競走は三日ぐらいかかっちゃったかなぁ」
「三日!? そんなに遠かったんですか?」
「ううん、そんなに距離はなかったんだけどね。カメが背負っていた甲羅っていうのが、本当に大きくて重くてさ。僕も持たせてもらったんだけど、ちっとも浮き上がらなかったよ。で、そんな重いものを持っていたものだから、カメのやつも本当にカメみたいな速さでね」
カメみたいな速さのカメさん。なんだかだんだんと混乱してきました。
「とーぜんのように、僕のほうが速いからさ。それで勝っちゃうのも、なんだか味気ない気がして。カメの隣で応援したり、甲羅に落書きしたりして遊んでたんだけどね。途中で飽きちゃってさ、お昼寝しちゃってたんだ。で、気がついたらあいつが先にゴールしていたというわけ」
「なんだか結果としては、あまり変わらない気が……」
「いやいや、きみの話だと、僕がまるで油断して負けた間抜けなやつみたいじゃあないか。僕は付き合わされたわけだし、つまりは犠牲者なんだよ」
「は、はあ……でも、このお話の起源はトルコのあたりですよ?……たぶん。十二支だったりイソップだったり、世界中を旅しているんですか?」
そもそも何歳なんですか、というような疑問は、お釈迦様の段階で忘れることにしました。
さて、そんな私の問いに、ウサ耳さんは困ったように眉根を寄せて、またもや手品のようにどこからともなく三色団子を取り出すと頬張りはじめました。
「んー、きっときみたち人間にきちんと説明するには、とんでもない時間がかかるんだろうけど……まあ面倒だから、ちょっと適当にまとめて説明するね」
もぐもぐむぐむぐとお団子を堪能したウサ耳さんの手には、いつの間にか湯飲みが。ほかほかと湯気をあげるお茶をすすって、一息ついてから言葉を継ぎます。
「簡単に言っちゃうと、世界中のウサギは僕で、僕は世界中のウサギなんだ。ノウサギだろうとロップイヤーだろうとアンゴラウサギだろうと、それは全部僕で、僕はそれらなんだよ。だから、世界中に色々な説話が残っていても仕方がないかなぁ。事実と著しく違うパターンもあるみたいだけれど」
「うーん、いまいち実感がわかないんですけど……それはつまり、あなたはウサギの神様だってことですか?」
ウサギを司る神だとか、そういう類の。ウサギ神?
「いやいや、神様だなんて畏れ多い。そんなに大層なものじゃあないよ。別に何かすごいことができるってわけでもないしね。ま、割と自由に暮らさせてもらってはいるのだけれど。でもね――」
ウサ耳さんは、そこで私にその澄み切った瞳を向けました。
それは、水をゆっくりゆっくりと凍らせてできた氷のように透明だという印象で、ああ、やっぱり人とは違うんだなぁ、と私は漠然と感じていました。悪い心、なんていう概念は、きっとこのウサ耳さんの中にはないのでしょう。それは裏を返せば、良いということも知らないんじゃあないかということで――そう、まるで、人形のような瞳だということに、私はようやく気づいたのです。
「僕の姿を見ることができる人間っていうのは、本当に珍しいんだ。きみみたいな人は、特別な存在ということ」
「私が、特別な存在……?」
恥ずかしげな言葉を何の臆面もなく口に出来るウサ耳さんは、やっぱりすごいと思います。
「でも、私は別に霊感があるってわけじゃあないですし……いままで何か不思議な体験とかしたこともありませんよ?」
「それはそれ、これはこれさ。別に僕は幽霊じゃあないしね。よかったじゃあないか、これがきみの人生で初めての不思議な体験だ」
そう言われると、いまさらながら私はとんでもない存在とお話をしているのだという実感が沸いてきました。神様、ではないらしいのですが、はるかな昔から世界中にいるという、とにかくめったにお目にかかれない、それこそ特別な存在です。
「僕も、きみみたいに視える人は久しぶりだったものだから、つい話してみたくなってね」
「はあ、まあ、それは、どうも……」
素直に感謝できないこの性格の何と恨めしいことか。
「それと、この家の前が、実は今回のレースコースなんだ。きみが気づいていないだけで、いつの間にかネズミとウシは通り過ぎちゃってるんだよねぇ」
「そうなんですか? あっ、でも、なんであなたはネズミさんとウシさんがここを通り過ぎたって分かるんです?」
そういえば最初に、もうネズミさんとウシさんはゴールしちゃった、みたいなことも言っていたような気が。
「ああ、それはね、もう順番は決まっちゃっているからさ。ほら、きみも知っているだろう、十二支の順番。あれの通りにゴールするのが通例なのさ。ま、神様はみんな本気でやっていると思っているから、バレないように、ちょこちょこと裏で口合わせしているんだけどね」
八百長です。何ということでしょう。神様をだます動物たちの八百長を耳にしてしまいました。
「それで、さっきトラさんが通り過ぎてから、って言っていたんですね」
「うん。本当なら、もうゴールしていてもいい時間なんだけどね。ちょっと僕が急ぎすぎちゃったようでさ。何といったって、僕の後ろにはリュウが控えているのだからね。参ったものだよ、追いつかれたら何をされるか」
「リュウ……タツさんですか? あの伝説の生き物の?」
「んー、彼はまあ、特殊だからね、何て言えばいいのかな……ヘビ、に一番近いのかな? でも川になるときもあるし、雲になるときもあるし……忙しいやつだよ。基本的にせっかちなのさ」
「なんだかすごそうな人(?)なんですね。ちょっと見てみたいかも」
「それはやめといたほうがいいかな。色々とホラーだから、トラウマになっちゃうかも」
「はあ、そうなんですか」
なんだか、あまりにもファンタジーでファンシーかつメルヘンなお話ばかりなものですから、さっきから生返事しかできていない気がします。
とにかく、このウサ耳さんたち十二支の間で繰り広げられているのは、平凡極まりない一般人である私には到底理解することのできない、ふかいふかーい駆け引きの上に成り立っているレースのようです。
そんなウサ耳さんの前にゴールするべき走者のトラさんは、しかし若干の遅れがある模様。いったいなぜでしょう?
ウサ耳さんは満月を眺めながらお茶を楽しんでいるようですし。見た目は若いのですけれど、その様子はまるでおじいちゃん。
神様主催のレースだというのに、こんなにだらけていてもいいのでしょうか――
と、そのときでした。
「見・つ・け・たぁーっ!」
そんな元気な声といっしょに、空から小さな影が降ってきたのです。いえ、実際には庭を囲んでいる垣根を飛び越えただけなのですが、それでも十分すごいこと。
とすっ、と見事に着地したその姿は、猫を思わせます。
事実、その小さな影には尻尾がついていました。ただし、黒と黄色との縞模様。俗に言う警戒色というやつです。
「な、ななな……!」
いきなり人の家に入り込んできたその小さな影に、私は目を丸くするしかありません。
尻尾の生えたちんちくりんな少年――くりくりとした丸っこくて可愛らしい瞳に、快活そうなつんつん頭。そして粋なダンスクラブにでも通っているかのような、ポップでラフな服装。天真爛漫を絵に描いたような少年は、びしっ、と私に指を突きつけたのです。
「おいっ、そこの女! おれといっしょに来いっ!」
……ええ。一度、我が耳を疑いましたとも。
せいぜい小学生にしか見えないあどけない顔立ちには似合わない、その横暴な口調。まったく最近の子供は、だなんておばさん臭いことは言いませんし、私もまだモラトリアム人間ですし、そもそも尻尾が生えていたり垣根を飛び越えてきたりする時点でフツーの人間ではありませんから、そういうツッコミは野暮なのでしょうけれど。
とにかく、突然のそんな不躾な言葉に答えたのは、私ではなく隣のウサ耳さんでした。
「なんだ、トラか……脅かさないでくれるかな」
「トラさん? この子が……?」
なるほど、言われてみればトラっぽい、ような気がしないでもないです。尻尾の警戒色は、どちらかといえばハチっぽくて本当に警戒しちゃうのですけれど。
「なんだとはなんだ、ウサギ! おまえ、どこでサボっているかと思えば、なんでこんなところでくつろいでるんだよ!」
「相変わらず騒がしいねえ、きみは。だいたい、きみが遅いから、僕はこうやって時間をつぶす羽目になったんじゃあないか」
「うっ、うるさいな! いい人間が見つからなかったから、仕方なく探し回っていただけだっ!」
元気一〇〇倍、タイガーマンというような名乗りが似合いそうなほど、トラさん、いえ、トラくんは喚き散らしています。しかしそれもウサ耳さんにとっては暖簾に腕押しといった感じで、そよ風にでも当たっているかのような涼しい調子は崩れません。
「ふぅん、でも、残念だけれどこの子は僕が先に見つけたんだ、だから、きみは他をあたってくれないかな」
「何をっ!? どうせおまえはおれよりも後にゴールすればいいんだろ、だったらおれによこせ、おまえは他の人間を探せばいいだろっ!」
「やだよ、リュウに追いつかれたらどうするんだい、他の人間を探している暇なんか僕にはないよ」
「あ、あのー……」
「これまでずっと探してきたんだぞ! ネズミやウシのやつは、もう三日も前にゴールしたっていうから、こんなに一生懸命になって探したんだ! だから、その女はおれが連れて行くっ!」
「んー、がんばれば他の人間が近くにいるよ、きっと。たぶん。おそらくは。だからほら、がんばって探してきなよ」
「すいませーん。もしもーし」
「やだ! いやだっ! もう疲れた、おれはさっさとゴールして休みたいんだーっ!」
「だからそのために、さ。早く探してきなって」
「だからそのために、その女をおれが連れて行くって言ってるんだよ!」
「ちょっと、聞いてくれませんか二人ともっ!」
いがみ合う二人の間に割って入って、私は両手をそれぞれに突き出しました。ケンカストップの合図。
トラくんはきょとんと丸い目をさらに丸くして、ウサ耳さんはいつもと変わらない表情でちょいと首を傾げました。
「どうしたんだい、そんなに大声出して」
「いや、いやいやいや、なんだか私の知らないところで私について話されている気がしたんですけれど。さっきから何を言い争っているんですか、二人とも? トラくんはどうして、私を連れて行こうとしているんです?」
「とっ、トラくんだと!? やい人間、なれなれしくおれを呼ぶんじゃあふぐぅ」
マシンガンのようなトラくんの口にお団子を突っ込んでおいて、ウサ耳さんに視線をやりました。すると、彼は頬をかいてから申し訳なさそうにこう言ったのです。
「あれ、僕たちいま借り物競走をやっているんだって……言ってなかったっけ?」
「聞いてません、そんなこと!」
「んー、それはごめん、うっかり言いそびれていたみたい。えっとね、今回の僕たちの競走は、俗に言う借り物競走なんだ。そのお題は『お団子をさぞかしおいしそうに食べているもの』――まさにきみのことだよ」
「何ですか、そのニッチなお題は……」
「月見の時期ならまだしもっ、こんな真夏にお団子うまそうに食べているやつなんか、そうそういるもんじゃあないんだよっ!」
突っ込まれたお団子を早くも完食したトラくんが口を尖らせます。
「だから、おれがおまえを連れて行くって言っているんだ、光栄に思えよ、人間っ!」
「だから、この子を連れてくのは僕だって」
「おーまーえーはーっ、おれより後にゴールすりゃあいいんだから、おれに大人しく譲れよな! さもないと食っちまうぞ、草食獣め!」
しゃーっ、と牙を剥くトラくん。なるほど、トラがウサギを食べるというのはおかしなことではないですけれど、いまいち説得力というか迫力がありません。どちらかといえばネコの威嚇です。
「んー、参ったなぁ。人間は半分にはできないしなぁ」
「さらりと怖いことを言わないでください」
しかしながら、のっぴきならない状態であるのもまた確か。トラくんはどうしても私を連れて行きたいようですし、ウサ耳さんもまた譲る気はない様子。あれっ、これってもしかして、モテ期ってやつでしょうか?
……まあ、冗談はさておいて。
こうなってしまえば残る選択肢は限られてくるでしょう。私は残ったひとつのお団子を手に取り、それをトラくんに差し出します。
「連れて行ける人の条件は『おいしそうにお団子を食べている人』なんですよね? だったら、このお団子を誰かに食べさせてあげればいいんじゃあないですか? 上手くいけば、本当においしそうに食べてくれるかもしれませんよ」
お団子を嫌いな人というのもあまり聞きませんし。
「む、むぅー……」
トラくんは腕を組んで黙り込みます。それから数秒間考えた後に、
「でも、おれの姿は人には見えないんだぜ? 宙に浮く団子を食うやつなんかいるもんか」
「そ、そういえばそうでしたね……」
見える私が普通ではない、ということをすっかり忘れていました。ところが、ここでウサ耳さんが助け舟を渡してくれます。
「だったら、その辺のノラネコにでも食べさせてあげたらどうだい? 人じゃあなくっても、おいしそうに食べていればいいんだろう?」
「な、なんだって!? 人間じゃあなくてもいいのか!?」
「人間だ、とは言われていないからね。別にいいんじゃないかなあと僕は思うのだけれど。きちんと決めておかなかった神様が悪いわけだし」
神様のせいにするウサ耳さん。恐るべし。
「そ、そうか……人間じゃあなくてもいいんだな……」
トラくん、ぶつぶつぶつ。
どうやら、同じネコ科であるノラネコさんにはトラくんの姿が見える様子。いえ、本当は人間以外の動物には、ウサ耳さんたち不思議軍団の姿が日常的に見えているのかもしれません。だとしたら、ちょっとうらやましいな、なんて思ったり。
私がお団子をトラくんの目の前に持ってゆくと、彼はうれしいんだかくやしいんだか、なんともいえない微妙な表情をとってから、しぶしぶと、本当に仕方がない、といったふうにお団子を受け取ったのでした。
「ひ、人じゃあなくてもいいってんなら、初めからそう言えよなっ! お、おまえはな、だいたい、いつも言葉が足りないんだから――」
「きみが言えたことかな。それよりも、ほら、ちゃんとお礼をしないと」
「ぐぬぬ……」
ウサ耳さんにやんわりと諭されるトラくん。なんだか兄弟みたいな二人です。本物の(野生の?)トラとウサギならば、決して見られない微笑ましい光景。
トラくんは、可愛らしくもほほを赤らめながら、
「あ、ありがとな……」
などと呟いたのでした。
そして言うが早いか、うちの庭に入ってきたときと同じように垣根を越える、K点越えジャンプを披露して去っていったのでした。
無邪気な姿は、まるで小さな嵐。トラというよりも、やっぱりネコのそれです。
トラくんを見送ったウサ耳さんは、やれやれ、と肩をすくめながら再び縁側に腰を下ろします。
「見つかるといいですねー、おいしそうにお団子を食べるネコさん」
「そうだね。また戻ってこられても、困っちゃうからね」
「それにしても、借り物競走だなんて、神様も面白い趣味をしているんですね」
「この前は障害物競走だったし、さらに前はパン食い競走だったなぁ。面倒さで言えば、今回の借り物競走が一番面倒なのだけれどね」
「みなさん大変なんですねぇ……」
「ま、嫌いじゃあないけどね」
仄かな笑みを口の端に浮かべてから、ウサ耳さんはまたもや三色団子を取り出しました。いったいどこに隠し持っているのでしょうか。それとも空気をお団子に変えるような魔法なのでしょうか。まあ、どちらにせよ、もう驚きはしませんけどね。
「あっ、でも、あなたは私を連れてゆくんですよね、その、神様のところというか、ゴールに」
「うん、協力してくれると、うれしいな」
「ええと、その、危なくはないんですか、色々と? だって、神様ですよね? それと、ネズミさんやらウシさんやら、他にも色々いらっしゃるとか……」
「大丈夫だよ、きみはいわば、今回の主役みたいなものだから。きっと歓迎されると思うよ」
「しゅ、主役だなんてそんな大げさな」
「まあ、恐がる必要はないから安心してね」
「はあ、分かりました」
ふぐふぐとお団子を食んでいたウサ耳さんが、突然、ぴんとその両耳を逆立てました。それからぴこぴこと上下左右に動かしてから、よし、という掛け声とともに立ち上がります。
「トラがゴールしたみたいだね。やっと僕の番だ」
「えっ、ちょっ、速っ!」
まだ数分程度しか経っていないというのに、もうゴールしたのだといいます。私たちのそれとは異なる時間に生きているのでしょうか。ともかく、トラくんがおいしそうに団子を食べるネコさんを見つけられてよかったと喜んでおきましょう。
それにしても、神様の御前にこれから行くというのです。まだ私も心の準備というものがなっていません。
しかし。
「……む」
遠方の空を見つめるウサ耳さんの瞳が、急に険しく細められたのはそのときでした。それにつられて私も空を見上げると、地平線のあたりから、なんだかどんよりとした雲が流れてきます。
「参ったなぁ、リュウに追いつかれちゃった」
「えぇっ?」
それは瞬く間に夜空に広がり、黄身のようだった満月をも覆い隠してしまいました。夜だというのに、分厚い雲がかかっているのだとはっきりと分かるぐらい、その雲は重々しい雰囲気を渦巻かせていました。
「あ、あれが……タツさん……」
「リュウはね、動物というよりも、自然そのものに近いんだ。水でもあるし、川でもある。風でもあるし、雲でもある。まあ、僕やトラみたいに、人間に近い姿になることもできるのだけれど、そのときの顔がまあ恐いものだから、やっぱり見るのはお勧めしないな」
ご丁寧な解説をしてくださっている間にも、ごろごろごろごろと雷が不機嫌そうに響いてきます。借り物競走だといいますが、いったいタツさんは、誰をどう借りているのでしょうか。非常に気になるのですが、確かめるにはあとちょっと勇気が足りません。
「さあ、そろそろ行かないと。追いつかれると大変だよ、リュウにその気はないのだろうけれど――あっ」
強い風が吹いて、ウサ耳さんが持っていた湯飲みが飛ばされてしまいました。よほどお気に入りだったのでしょう、今にも泣き出しそうです。
すると、
『うわぁぁごめぇぇぇぇぇん……!』
と、なんとも間延びした声が空から降ってきます。
「リュウ……あとで、弁償してもらうからね?」
抑揚のないウサ耳さんの声には、少しぞっとしました。しかしそんなことより、タツさんもタツさんでやっぱり言葉を話せるようです。
『ごめぇぇん、わざとじゃあないんだよぉぉぉ……!』
そんな申し訳なさそうな声が、強い風といっしょに空から吹いてきます。なるほど、本人にその気がない、とはこういうことですか。まさに自然の猛威、といった感じです。
とはいえ、想像していたよりもかなり弱気な方のようですが。
「うぅ、二代目だったのに……消えてしまったものは、仕方ないか」
どこかへ飛んでいってしまった湯飲みを諦めきれない様子のウサ耳さんは、気持ちを切り替えるように私にその手を差し出しました。
「ついてきてくれるかな、ゴールまで」
ここまで色々と付き合ってきた以上、断る理由も特になく。ちょっと不安も残ってますが、私がいないとウサ耳さんも困ってしまうでしょうし、ウサ耳さんがゴールできないとタツさんもゴールできません。それもまたそれで、放ってはおけない事態。
とまあ、とりあえずウサ耳さんの手をとる言い訳をあれこれと考えていたのですが、結局のところ、一番の動機になったのはやはり好奇心でした。まるで御伽噺のようなお話に参加できるこの機会、みすみす逃すわけにもいきませんから。
「――もちろん、ついていきますよ!」
風に負けないように大声を張り上げて。
差し出された手に、私のそれを重ねます。肌に伝わってきたのは、人間とまったく変わらない温かさでした。
「それじゃあ、行くよ――!」
私の手を引いて、ウサ耳さんは走り出します。どこへ向けてかといえば、荒波のように踊っている庭のため池へと。いったい何をしようというのか検討がつきませんが、それでもいまはウサ耳さんを信じるのみです。
池に足を突っ込む、その直前でした。
「跳んで!」
ウサ耳さんの声に導かれるように、私は自然と地面を蹴っていました。すると、信じられないほど体が空高く跳び上がります。棒の必要ない棒高跳び。そんなレベルじゃあありません。みるみるうちに、地面ははるか下に離れてゆきました。
これはもう、跳んでいるのではなく飛んでいるのと同じです。ウサ耳さんのエスコートに合わせて、私は何度も空を蹴りました。まるでマシュマロがそこに浮いているかのような感触が、足の裏に伝わってきます。
どこまでも高く、どこまでも遠く、夢の中でさえ感じたことのない高揚感と楽しさが、私の中で大きくなってゆくのが分かりました。
「んー、やっと抜け出せたね」
ウサ耳さんがそうささやいたときには、タツさんの雲は私の足元にありました。見上げると、そこには満点の星空。私の家からは見ることのできない、本当の星空が広がっていたのです。
「見えるかい? あそこ、ほら。あれがオリオン座だよ」
ウサ耳さんが指差した先には、確かに図鑑で見たとおりに星が並んでいました。オリオン座、夏のこの時期にはあまり見ることのできない星座だそうです。
しかしそれも、宇宙に近い今となれば別の話。手を伸ばせば、そのいかめしい形のオリオンさんに手が届きそうなほどです。
「じゃあ、あれがウサギ座ですね」
オリオン座の下、うずくまるような形の小さな星座を私は指差しました。なんだかオリオンさんを怖がっているような姿。
ウサ耳さんは、バツが悪そうに頬をかきました。
「どうせ、オリオンを怖がっている、みたいな話として伝わっているんだろうね」
図星です。ちょっとどきっとしました。
「やっぱり、それも違うんです?」
「……まあ、だいたいは合ってる、かな」
「えーっ、そうなんですか? 聞きたいです、どんなお話なのか!」
「あー、うん。また今度ね」
「そんなぁ」
はいはい、これでおしまいね、などとウサ耳さんは話をはぐらかしました。そんなに恥ずかしいなら、オリオン座を紹介しなければよかったのに。だなんて、ちょっと意地悪なことを思ったりしました。
そうこうしているうちにも、私とウサ耳さんはより遥かな高みに駆け上ってゆきました。宇宙を駆けるだなんて、夢にも思わなかった素晴らしい体験。
それを締めくくるように、ウサ耳さんは、準備はいいかい、とたずねてきました。私は迷いなく、大きくうなずきました。
そして。
「さあ――思い切り、跳んで!」
「たあっ!」
全身をつかって、人生最大のジャンプ。星がどんどんと近づいてきて、無限に広がる輝きの空が私の目の前に現れていました。
「きれい……!」
ぐるぐると美しい渦を描いているのは、なんという名前の銀河なのでしょうか。私はそこへ向かって、ウサ耳さんに手を引かれてゆきます。
その銀河のまぶしい光が、爆発するかのように視界いっぱいに広がって――
「ありがとう、きみのおかげで、今年もまた楽しめたよ」
ウサ耳さんの、そんな感謝の言葉が聞こえてきたのでした。
そして、真っ白な光景に佇んでいたのは、ウサ耳さんとトラくん、小さな少女、それはきっとネズミさんで、体育の先生みたいな男の人、それはきっとウシさん、そして、仙人のように立派な口ひげをたくわえたおじいさん。みんなが私を、微笑みながら見送ってくれたのでした。
■
「――はふっ」
気がつくとそこは家の縁側。
危うくよだれが口からコンニチハーするところでした。
空を見上げると、そこにはいつもと変わらない都会の空と、黄身を落っことしたような満月がひとつ。さっきまでの出来事がまるで夢のように、静かな日常が戻ってきていたのでした。
「……やっぱり、夢、だったのかな」
現実に考えれば、なんとも脈絡のない話でしょうか。まるで取り留めのない、夢や妄想にしてもはちゃめちゃなお話でした。終わり方もなんともあっさりとしてちょっと寂しかった、ような。
それでも、まあ、不思議なウサ耳さんと出会うことができたのなら、たとえ夢だったとしてもよしとしましょう。色々と面白い話も聞けたことですし。
横を見れば、買ってきたお団子の成れの果て、つまるところ串だけが残っていました。大方、お腹いっぱいになったところで眠くなってまどろんでしまったのでしょう。お団子が見せてくれた夢、なるほどそう考えると、それもまた面白い話です。
さて。いくら夏とはいえ、縁側で寝てしまっては風邪をひきかねませんので、お部屋に戻るとしましょう。
そう思ったのですが、ふと庭に転がっていたあるものを目にして、私は足を止めました。
近づかなくても分かるそれは、あのウサ耳さんが使っていた湯飲みでした。タツさんの風に飛ばされて、どこかにいってしまったと思われたのですが。
なぜこんなところにあるのかはよしとして、私は拾ったそれをどうしようかと思案しました。
考えること、およそ一〇秒。
とりあえず、次にウサ耳さんに会ったときに返せるよう、大切にしまっておくことにします。お気に入りだったみたいですし。
今度は、秋に風情のあるお月見をしながら。
夢でもいいので、あの不思議なウサギさんに出会えたらいいな、などと、ちょっと乙女すぎるお願いを満月にしておきました。
とりとめもない後日談
その不思議なお話を体験した後のこと。
母方の実家に帰省する機会がありまして、そのときにいい土産話として、私は祖母にそのウサ耳さんのことを話したのでした。もちろん、ひとつの夢物語として。
すると思っても見なかったことに、
「なんだい、ちえちゃんもそんな夢見たんけぇ?」
まるで童心に返ったかのような生き生きとした瞳で、おばあちゃんは子供の頃に見た夢のことを語ってくれました。
どうにも昔、競争をしているという青年と出会ったといいます。その青年にはウサギの耳が生えていて、西洋かぶれの格好をしていただとか。
それでもって、たいそうな団子好きじゃったのぉ、とおばあちゃんは嬉々と語りました。なんでも手品のようにどこからともなくお団子を取り出しては、さぞおいしそうに食べていただとか。
ここまで聞けば、いくら鈍感な私でももう分かります。あのウサ耳さんが、おばあちゃんと出会っていたのだと。どうやら「視える」体質というのは、おばあちゃんから譲り受けたもののようです。
そしてお話の締めくくりに、その青年は湯飲みを忘れていった、とおばあちゃんは話しました。ウサ耳さんのおっちょこちょいでマイペースなところも、やっぱり昔から変わらない様子。ちょっと微笑ましく感じました。
それじゃあ、その忘れていった湯飲みはどうしたの? と私が訪ねると、おばあちゃんは唇をへの字に曲げて、
「はて……どこにやってしまったかのぅ」
と、どこか寂しそうに呟いたのでした。
しかし、私ははっきりと見たのです。
そのとき母が運んできた、熱々のお茶が入った急須と湯のみ。おばあちゃんが昔から愛用しているというその陶器は、私が庭で拾った、ウサ耳さんの大切なそれとそっくりだったのです。
この小説は大学サークルのために制作されました。
突貫工事のため、ひどく見辛い点があると思います。誤字脱字等、指摘していただければ幸いです。